第二十八話 攻略
数日空きまして、お待たせいたしました。
グリーンゲート4階層
青々と茂った床。
木々が密集している。
そこで俺たちは、休んでいた。
「はぁ...浩介さんー!、つかれたっす!」
だいぶ走り切った。
いつのまにか五層の手前まで来ている。
「少し休むか」
「りょうかいっす」
ノートを開く。
ペラっ
森林五層は、
ゴブリンチーフか。
連帯の取れてるゴブリン三体と本体。
勝てるのかわからない。
でもやるしかない。
「ふぅー。」
「本当に30階層まで一人で行くっすか?」
少女は、不思議そうにこちらを見る。
「あぁ。」
「強くなるために。」
今のステータスだとEランク手前ってとこか。
情報をうまくつかえ。
拳をぎゅっと握りしめる。
◇◇
五階層のボス部屋思い扉を開ける。
ギギギ.....
薄暗い部屋。
入った瞬間に蝋燭がつく。
ボッ…。
緑色の肌。
黄色い瞳。
見た目はゴブリンと変わらない。
しかし、装備が他のゴブリンよりも整えられている。
錆びた甲冑、剣、盾。
一呼吸。
チーフを倒すことを考えろ。
ギャギャギャ
弓を放つゴブリン。
盾を持つ前衛のゴブリン。
隙を見てついてくるゴブリン。
チーフを背に、前衛が2体、後衛が一体。
チリーン
前衛が前へ。
チーフは、鈴を鳴らし全体に命令している。
盾と槍が前衛?
防いだあと槍の追い打ちがあるか?
「身体強化」
ブォーン 青い光を纏う。
床がえぐれる。
「まずは、正面」
一瞬でゴブリンとの間合いを詰め攻撃に転じる。
ガキィンッ!!
盾が剣を弾く。
「くっ……!」
その瞬間。
ビュンッ!!
横から槍が伸びる。
ギリギリで身体を捻る。
頬を浅く裂かれ、血が流れた。
「速い……!」
すかさず後方に下がり距離を空ける
「まじっすか……」
少女は驚いている。
違う。
速いんじゃない。
槍は盾が弾いた直後に来る。
防御しそれから槍。
ヒュッ!!
追い打ちの矢が俺を狙う。
すかさず後方に下がる。
矢は足元へ突き刺さる。
少し遅ければ貫かれていた。
「近づかせてもくれないのか……。」
ノートに書き足す
弓は5秒。
盾は2秒。
鈴から命令まで0.5秒。
指揮官は絶対最後尾。
なら指揮系統を崩す。
いける。
ドォン!!
一気に盾兵へ。
ガキィン!!
よし、弾かせた!
盾がぶつかる。
盾兵の左肩が沈む。
土が左足だけ深く抉れる。
そのまま横へ___
チリーン。
「!!」
盾兵と槍兵が陣形を変える。
同時に後ろから矢。
「なっ……!?」
ビュンッ!!!
矢が脇腹を掠める。
ビュンっ!!!
2本目の矢が休ませまいと飛んでくる。
「くっ!!!」
すかさず避ける。
そして、後方に下がり距離を空ける。
「見えてるんすか!?」
離れたところで少女は、呟く。
「一筋縄じゃ行かないか。」
正面が無理なら
今度は、横!!!
ガキーンッ
盾がぶつかる。
左肩が沈む。
土が左足だけ深く抉れる。
……
どこへ攻撃しようとしても盾が攻撃を弾く。
「……きつい。」
少女は、その様子を見て静観している。
浩介は気づく。
仲間がいない。
透の変化する武器もない。
しえるの魔法も飛んでこない。
攻めるのも。
守るのも。
判断するのも。
全部、自分。
「……パーティって、こんなに大きかったんだな。」
透が前に立つ。
しえるが後ろから支える。
それがどれだけ助けになっていたか。
今さら理解する。
でも。
「だからって、止まる理由にはならない。」
俺は改めてノートを見る。
「またみてるっす……」
ノートの端が血で滲む。
盾を構えるたび
左肩が少し下がる。
左足へ体重が乗る。
なら.....。
身体強化は、30秒。
その間に弓を倒して戻る。
いやまてよ。
盾を弾く。
そして下がらず左側前方突進。
これでいけるか?
ブォーン。
青い光を纏う。
ドォン!!!!
盾を狙う。
ガキーーーン!!!
剣を弾かれる。
まずい…
槍が追い打ちをかけてくる。
即座に体制を立て直し狙いを定める。
踏み出し、左へ回る。
やっぱり。
追いつけない。
「ここだ!!」
ドォン!!!
弓兵が角度をつけて射ろうとしているところに突っ込む。
ギャギャ!!?
咄嗟に構え直した矢は、肩を掠める。
「ぐッ…。」
ズシャン!!!!
俺は弓のゴブリンを倒し元の位置に戻る。
左は戻される。
上も駄目。
重心は左足。
――下だ。
「くそ、切れた……!」
スキルが切れる。
息を切らす。
すかさずノートに修正を入れる。
ペラ。
『盾 2秒』
……違う。
一歩目が速い。
書き直す。
『初動 1.8秒』
槍 右から
「あと一回...」
ブォーン。
ミシミシッ。
地面が抉れる。
ドォン!!!!
下から掬い上げる。
ガキーンッ!!!
よろめいた!!!
「今だ!」
ドォン!!
踏み込む。
チリーン!!
「!?」
槍兵が盾兵の背中を押す。
体勢が戻る。
剣が止まる。
ドゴッ!!
盾で吹き飛ばされる。
「がっ……!」
盾のゴブリンは、後方に下がろうとする。
「逃がさない!!!」
ドォン!!!
盾兵を追う。
ドン!!
槍で肩を貫かれる。
「ぐっ!」
それでも止まらない。
盾兵が体勢を戻す。
「またか!」
思い出せ。
左足
下から。
ガキン!!
地面を蹴り上げさらに追い打ちをかける。
ズシャン!!!!
盾兵が沈む。
ブォン!!!
槍が伸びてくる。
身体を沈める
槍が頭上を通る
ここ!!!
ズシャン!!!!
頭を狙い切りつける。
「浅いかっ!!!」
槍がすかさず攻撃してくる。
俺はありえない体制で避ける。
「……え?」
「なんすかそれ……」
少女は何が起こったかわからない表情をしている。
「まだいける!!」
槍を右へ受け流す。
だが、槍兵は、体を捻り
回し蹴りを入れてくる。
ヒュンッ!
頭を掠める。
俺は剣を受け流した勢いのまま回転し
切りつける。
ズシャン!!!
ゴブリンの首を落とす
あと一体。
グラッ…。
俺はよろめく。
「...スキルの使いすぎか...」
膝を床につき、剣を地面にさす。
刹那。
ギャギャ!!!
チーフがナイフで切りつけてくる。
「まずい...」
動けない。
ガキーン!!!!
「これは、かしっすよ?」
少女が俺の前に立ち
片手で持ったナイフでパリィする。
そして、俺に青いポーションを投げつける
少女がまた同じ場所へ下がる。
隙を見てチーフは後方へ飛んでいた。
チリーン!!!
誰も動かない。
……
チーフは、鈴を捨てる。
カラン....
「ギィ……」
構えが変わる。
「本気か。」
ここから一対一。
ギャ。
チーフが自分の左腕を切る。
「!?」
血。
それを剣に塗る。
魔力が暴走しチーフは、赤く光る。
「狂戦士……!」
少女は、呟く。
「血を媒介に身体強化する種族っす!」
剣を両手で握る。
「身体強化!!!」
ドォン!!!!!
一瞬でチーフの間合いに入り切りつける。
チーフが笑う。
「ギャ」
「笑った?」
ガキン!!
チーフが剣を絡める。
右。
剣が重い。
一撃受けるだけで腕が痺れる。
そのままチーフから蹴りをくらう。
ドゴッ!!
吹っ飛ぶ。
ドォーーーン!!
壁に打ち付けられる。
「ぐっ……」
吐血。
「まずいっす……」
「はぁ...はぁ..」
ボロボロになりながらも剣を構える。
踏み込むたび床が軋む。
狂戦士になってから力まで上がっている。
息切れ。
左腕が上がらない。
剣が震える。
視界がぼやける。
血が床に落ちる。
立ち上がるだけで苦しい。
もう一度。
ガキン!!
また右へ流された。
「……?」
ドォン!!
膝蹴り。
吹き飛ぶ。
「ぐっ……」
立ち上がる。
もう一度。
ガキン!!
……また右。
偶然か?
いや。
三回とも同じだ。
なるほどな。
次も同じならいける。
ギャギャギャ
チーフが笑う。
イメージしろ。
想いを力に。
「英雄になる!」
「浩介君ならできます」
「決めるっす!」
聴こえる。
みんなの言葉。
身体強化。
ブォォォォン!!
今までより濃い青い光。
「行くぞ!!!」
青い光が包む。
ドォン!!!!
ねらえ。
勢いのままチーフを切りつける。
四度目。
ガキン!!
剣がぶつかる。
……右。
違う。
今までと同じ。
そう思った瞬間。
チーフの口角が上がった。
「……!?」
力を抜いた。
誘っていた。
振った剣が流れる。
しまった。
……いや。
まだ終わってない。
右へ流された勢いを利用する。
身体を回す。
グルンッ!
そのまま斬る。
ガキーン!!!
チーフは、咄嗟に受ける。
剣は右へ流れる。
左肩が空いた。
腕を蹴り上げる。
ドォン!!
蹴り上げられた腕は浮いている。
「そこだ!!!」
ズシャン!!
チーフが片腕を落とす。
が、即座にナイフを構え攻撃に転ずる。
片腕を失っても、チーフは倒れない。
俺は焦る。
「こいつ……まだ……」
普通なら怯む。
でもこいつは違う。
最後まで殺す気だ。
推し切れ!!!!
ガキーーンッ!!!!
ナイフごと切りつける。
「.....」
ボトン。
チーフの身体がゆっくり崩れ落ちる。
チリーン。
鈴だけが床を転がった。
「....はぁ...ふぅ...」
俺は大の字で倒れ込んだ。
「おっしゃー!!!!」
レベル16
体力 25
攻撃 30
防御 25
魔力 29
スキル 身体強化
パッシブスキル オールエスケープ
「……あれ?」
「攻撃と体力だけ、やけに伸びてる……」
レベルアップだけじゃ、こんなには上がらない。
透を失ってから一か月。
毎日剣を振り続けた。
何度も傷つき、何度も立ち上がった。
その積み重ねが、数字に現れたのだろうか。
「……思いと経験が、力になる?」
そんな馬鹿な。
だが、この世界なら——あり得る。
戦闘中ずっと驚いていた少女が黙る。
「.....」
その後
小さく
「……本当にFランクなんすか。」
そう呟いた。
面白そう。そう言った少女の
浩介を見る目が変わっていた。




