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第二十四話 Fランク冒険者

おまたせしました。ここからは第三章になります。

個人的に第三章は、鬱回。耐えぬき回。これを乗り越えて…。

是非四章ご覧ください。

――あの日から数か月。


世界は少しずつ、ダンジョンという現実に慣れ始めていた。


レッドゲート10階層。

巨大な扉の先。

天井は崩れ、砕けた岩があちこちに散乱している。


壁には深い爪痕。

床には乾ききらない血が広がり、折れた剣や砕けた盾が転がっていた。


その中心で――


ドォン!!


魔物の拳が振り下ろされる。

衝撃だけで床がひび割れ、砂煙が舞い上がる。


「隊長がやられた!」


「無理だ!!攻撃が通らねぇ!!」


「回復が追いつかない!」


「逃げ道がない!!」


「逃げろ!!」


冒険者パーティが追い詰められている。

目の前には巨大な魔物。


必死に立ち向かってきた冒険者たちは、すでに満身創痍だった。


肩で息をし、震える足を無理やり前へ出している。


誰も勝てるとは思っていない。

それでも仲間を置いて逃げられなかった。


全身を覆う硬い外殻。


「Aランク級……?」


「こんなの攻略情報なしで勝てるわけないだろ……」


冒険者たちは、青ざめる。

どうすることもできない。


「終わった……。」


誰もがそう思った。


家族の顔が脳裏をよぎる。


仲間だけでも逃がしたい。


もうだめだ…。


そう思った、その瞬間。


「いや。」


一人の声。


「誰だ……?」

冒険者たちは、突然の声に咄嗟に反応する。


「子ども……?」


「なんで一人で来たんだ……!」


冒険者たちは息を呑んだ。

「なんで……子どもが?」


「倒せる。」


「え……?」

誰も言葉を返せない。

倒せる?

この化け物を、一人で?


冒険者たちは、はっきりと見た。


そこにいたのは、なんの変哲もないたった一人の少年。


「弱点はそこ。」


「左足、第三関節。」


少年は魔物の左足を見る。


「硬化する前の0.5秒だけ、防御が落ちる。」


冒険者たちは意味が分からない。


次の瞬間。


魔物が腕を振り下ろす。


ドォン!!

床が砕ける。


「遅い。」


少年は紙一重でかわす。


「避けた……?」


「見えなかった……」


「あの速度を見切ったのか?」


「違う……」


「最初から当たる場所を知ってる……?」


いや驚いてる場合じゃない。冒険者たちは、思う。


「みんな!今だ!」


冒険者たちが一斉に飛び出す。

剣が外殻へ叩きつけられる。


ガギィン!!


火花だけが散る。


「くそっ……また弾かれた!」

攻撃が通らない。


攻撃後、右肩が下がる

次の硬化まで3秒....


「今。」


ザシュッ。


一撃ではない。


だが、確実に弱点だけを削る。


「効いてる……!」


「外殻が割れ始めた!?」


「あいつ、本当にダメージを通してる……!」


冒険者は言う。


「だが、まだだ!!!!」


その少年は笑う。


「Aランク級だぞ。」


「攻略に時間がかかるのは当然だろ。」


魔物が咆哮する。


ゴォォォォ!!


衝撃だけで冒険者たちが吹き飛ばされる。


「ぐあっ!!」


「耳を塞げ!!」


少年だけは動かない。


「なるほど。」


「咆哮の後は一秒硬直するのか。」


「あいつ動いてない……?」

冒険者が呟く。


魔物が拳を振り上げる。


ゴォッ!!


拳が空気を裂く。


「右。」


少年は半歩だけ動く。


ドォォン!!

岩壁が粉々に砕け散る。


飛び散った岩を踏み台にして、少年はさらに距離を詰めた。


ザシュッ。


左足の関節へ一撃。


しかし浅い。


「まだ足りないか。」


魔物の尻尾が横薙ぎに振り抜かれる。


ブォン!!

「危ない!」


冒険者たちの悲鳴。


少年は身を沈めるだけで避ける。


風圧だけで髪が揺れる。


そのまま地面へ手をつき、回転するように背後へ回る。


「三秒。」


ザシュッ。


「二秒。」


ザシュッ。

「一秒。」


「止まったか…。」


ザシュッ。


何度も。


何度も。


同じ場所だけを斬り続ける。


「……さすがに覚えたか。」


魔物は左足を庇うように体勢を変える。 


「へぇ。」


少年は少しだけ笑う。


「学習機能まであるのか。」


次の瞬間。


拳ではなく蹴り。


ドゴォォン!!


床がめくれ上がる。


「これは少し攻め方をかえるか。」


少年は吹き飛ぶ瓦礫を避けながら分析を続ける。


「攻撃優先順位を書き換えたな。」


ドォン!!


床が砕ける。


冒険者たちは動けない。


「避けろ!!」


しかし――


「こっちか。」


少年は冷静に横へ移動する。


「またよけた!?」


次の突進まで3秒


「そこ。」


ザシュッ。


浅い傷。


しかし魔物が怒り狂う。


少年はため息。


「やっぱりAランクは硬いな。」

「いや、タイミングか」


そろそろ構えるか。


「身体強化。」


ブォン.....


青白い魔力が少年の全身を包む。


足元の砂がふわりと舞い上がる。


「魔力強化……!?」


「いや、違う……」


「2秒」

「1。」

「今。」


その少年の足元が割れる。


その瞬間。


少年の姿が消えた。


次に見えた時には、

すでに魔物の背後だった。


ザシュッ!!!


「まだだめか…。」

少年は、呟く。


「もう一撃!!!!」

少年は、さらに追い討ちをかける。


ザシュッ!!!


..........。


ズドォォォォァン!!!


『討伐完了』


「.....」

冒険者は、呆気に取られる。


「いやぁ……まだ遅いな。」


「ダンジョン攻略に30分もかかった。」

なかなか苦戦したなぁ。まぁこんなもんか。


冒険者たちは意味が分からなかった。


目の前の魔物は、さっきまで自分たちを殺しかけていた存在。


なのに。


この少年は、まるで失敗したゲームの記録を見るような顔をしている。


「確認するか。」


少年は何事もなかったようにステータスを開く。


ピロン。

レベル50。

体力321

攻撃248。

防御267。

魔力222。

スキル――身体強化。

パッシブ――オールエスケープ。


「ようやく50かぁ……」


冒険者たちは絶句する。


「助かった……。」


一人の冒険者が膝をつく。


「ありがとう……。」


少年は振り返る。


「いや。」


「攻略しただけだ。」


「……あなた、何者なんですか?」


少年は振り返る。


「俺か?」


少し考えた。


ふと、親友の顔が浮かんだ。

「英雄になる!」

あいつなら、きっとそう言う。


「俺は___」

「Fランク冒険者、浩介。」

「英雄になる男だ。」



誰一人、その言葉を信じる者はいなかった。

だが、この日を境に

「Fランク冒険者・浩介」は世界中の冒険者が知る存在となる。



◇◇


ギルド


ギルドへ戻ると、ロビーはいつも以上に騒がしかった。


冒険者たちがテレビの前に集まり、口々に何かを話している。


「本当にFランクだったのか?」


「嘘だろ……」


「レッドゲート十階層を単独討伐だぞ?」


テレビではニュースが流れていた。


『速報です。本日、レッドゲート十階層にてAランク級モンスターが討伐されました。討伐者は、Fランク冒険者との情報が入っています』


「FランクがAランク級……?」


「そんなことあり得るのか?」


『専門家は、Aランク級を単独討伐したという情報について、誤報の可能性もあるとしています』


「いや、でも生還したパーティ全員が証言してるらしいぞ。」


「本当にFランクなのか……?」


「……もし本当なら。」


「冒険者の常識が変わるぞ。」


浩介はその横を何事もなかったように歩いていく。


「ただいまー。」


その瞬間――


「まぁぁたぁぁあなたはぁぁ!!!!」

受付からゆあの怒鳴り声が響いた。


ギルド中の視線が浩介へ集まる。


「けど、クリアしたぜ?」


「そういう問題じゃありません!!」


「一人で行くなって何回言えば分かるんですか!!」


「始末書です!!」


「え?」


「三枚です!!」


「増えてる!?」

「いや、でも倒したし。」


「倒したから怒ってるんです!!」


隣ではみのるが肩を震わせて笑っていた。

「ははっ。さすが浩介だな。」


「へいへい。」

浩介は頭をかきながら笑う。


「気をつけます!」


「絶対反省してませんよね!?」


ギルド中から小さな笑いが漏れた。


カタルシス大事ですなぁ

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