第二十三話 英雄
第二章ラストの話になります。
ニュース
「ルーキーチーム高速のウサギことフラッシュラビットがまたもボス討伐」
「チームメンバーが死亡しながらもなんとかボス討伐を成し遂げています。」
キャスターの喜びの声が聞こえる。
ギルド内では、
「すげぇーな!!!」
「ルーキーやるじゃん!!」
「負けてられねぇーな!」
と盛り上がっていた。
今日もギルドには、人が集まり、あちらこちらでギルド職員が忙しそうにしている。
窓口でゆあは、退屈そうにテレビを見ている。
「すごいねー!あのチーム!」
「うち越されるんじゃない?」
冗談まじりに言っている。
「れいが、負けるわけないじゃん」
みのるが呆れながら答えていた。
「私」
「僕」
「「たちいつになったら連れてってもらえるのぉぉぉあ!!?」」
その日この2人の叫び声がギルド中に響き渡っていた。
◇◇
そして俺たちは、帰路につく。
「ふぅ…。流石に疲れた!」
透は言う。
「あぁ…。流石の俺も限界」
「そうですね.こればかりは…。」
俺たちは、第四層に戻っている。
壁にもたれた少年。
「助けてください……」
先ほど助けた少年がふらふらしながら帰っているのを見かける。
「おいおい、大丈夫かよ!!」
その少年に向かっていく。
透は迷わず肩を貸す。
疲れているはずなのに流石の透だ。
ん?なんだこの違和感…。
……あれ。
さっきまで震えていた肩が、止まっている。
足取りも、さっきよりずっとしっかりしている。
「肩かすぜ!!!」
透は、少年に肩を貸す。
「いやぁ、すいません…。」
「流石に色々あって疲れちゃって…」
「だよなぁ…。まぁ、一緒に帰ろうぜ!」
俺としえるは、微笑ましくそれを見ている。
「おーい!透!無理するなよー!」
俺は、透に声をかける。
「あー!大丈夫だぜ!!!」
から元気だろう。透は、気を使わせないように元気に振る舞っている。
「帰ったら何食う?」
「焼肉!!」
「またかよ。」
「英雄は肉食わねぇとな!」
なんだ?この違和感…。
少年の肩は震えていない。
呼吸も落ち着いている。
……なのに。
その右手だけが、不自然にポケットへ入った。
少年は透にもたれ掛かるように一歩近づいた。
次の瞬間。
グサッ。
鈍い音が響いた。
透の身体が小さく揺れる。
白いシャツが、一瞬で赤く染まった。
時間が止まる。
「……え?」
透の腹から赤いものが零れる。
少年の口元だけが、ゆっくり吊り上がった。
少年の顔から怯えが消える。
「……ポイズンバイト」
透の身体が一瞬で青くなる。
「は?」
透が言う。
「弱いやつって、本当に騙されるよね。」
ニタァ。
その少年は、笑う。
「おい!!!お前ぇえええ!!」
俺は叫ぶ。
「ラビットステップ」
そう唱えると、俺たちの前から姿を消していった。
「しえる!!ポーション!!!!!いそげぇ!!!!!!」
俺は叫ぶ。
「飲め!!」
グイッ。
ポーションを流し込む。
傷は塞がらない。
紫色の毒が傷口から全身へ広がっていく。
回復より毒の侵食の方が速い。
「もう一本!!」
手が震える。
開かない。
なんでだ。
なんで開かねぇ!!
爪が滑る。
落とす。
拾う。
「開けぇぇぇぇ!!」
バキッ。
歯で噛み千切る。
飲ませる。
効かない。
「おい!透!!!しっかりしろ!!」
「.....うるせぇーな」
透は、息も絶え絶えになりながら笑う。
透の顔は、みるみる青白くなっていく。
「……浩介。」
「俺英雄、失格だな…。」
「……最後まで一緒にいけねぇーや」
「ありがとうな。」
「透!!」
どうする。
どうすれば。
どうやって!!!!
「.....。」
「……悪い。」
透は、そっと目を閉じた。
「.......」
その瞬間。
俺のステータスが勝手に開く。
『隠しスキル条件達成』
『オールエスケープ解放』
致命的な結果を否定します。
『対象を確認』
一度だけ自分以外の人に使用可能です。
使用しますか?
はい いいえ
俺は何も考えずはいを押す。
「こんなの使う!!」
「使うに決まってんだろ!!!!」
『解放条件として成立した対象には使用できません』
もう一回!!
『再試行』
『失敗』
「おい!!!!!!」
「なんでだよ!」
「……なんでだよ。」
助かる。
助かるんだ。
もう一回......
『対象は蘇生できません』
俺は、全身から力が抜け、壁にもたれかかる。
「浩介……。」
しえるはポーションを握ったまま、
立ち尽くしていた。
「おい、透」
「おきろよ…。」
涙が止まらない。
手に力が入らない。
「なぁ、英雄になるんだろ?」
手が震える。
しえるは、唖然として
目を開き、微動だにしない。
涙が流れている。
俺は透を抱き起こす。
カラン……
リュックから、一枚の紙が床へ落ちた。
「……?」
拾い上げる。
焼肉屋のレシート。
透が奢ってくれた、あの日のものだ。
裏には、丸っこい字で。
『英雄パーティ結成!』
「……っ」
指先が震える。
紙が、涙で滲んでいく。
「なぁ....透。俺たちの伝説は、これからなんじゃねぇーのかよ......」
返事は、ない。
いつもなら。
「英雄だからな!」
そう言って笑う声が返ってくる。
バカみたいに大きな声で。
俺を引っ張って。
前だけを向いて。
でも。
もう、その声は聞こえない。
ダンジョンには、
静寂だけが残っていた。
その日。
英雄になると笑っていた少年は、命を落とした。
ピコン。
『パーティメンバーの死亡を確認しました。』
これにて第二章終幕です




