第二十話 湿地
足元には、ぬかるんだ土が広がる。
ジメジメとした空気感。
壁にびっしりとある苔。
全体が緑色だ。
以前入ったダンジョンとは、まるでちがう。
「さぁ!英雄パーティ行くぞぉ!!」
透はいつも通り元気である。
三層までは、今の俺たちでも問題ない。
「足を取られないように気をつけてな」
「了解」
ポヨーン。
グリーンスライムが二体、泥の中から飛び出した。
「透! 核を狙え!」
「おう!」
「ただのスラッシュ!!」
ズバーーーン!!
一体は弾け飛ぶ。
「よし!」
──その瞬間。
ボコン!
泥の中からもう一体。
「左!」
透が拳を握った。
呼吸を整える。
「すぅーー。」
「ラブリースマッシュ!!!」
ドゴォ!!
「危ねぇ……。」
「ラブリースマッシュ…?」
「あ、いや気にしないでくれ」
透は、シラを切る。
「……かわいい技名だな。」
「言うな!」
「お前そう言う趣味だったか?」
「いや、師匠の口癖みたいなもので…」
「…。」
「癖の強い師匠だな。」
そんなふざけた名前をつける師匠は一体どんな人なんだ。
謎が深まるばかりだ。
そんな話をしていると
ギャギャ!!
ゴブリンが三匹。
「真ん中は囮だ!」
「え?」
「右だ!」
ガキィン!!
ゴブリンの斧を透が受け止める。
「マジかよ!」
「右利きだから必ず右から振る!」
「なるほど!」
透は一歩踏み込み、右へ回り込む。
「スラッシュ!!」
すかさず、ゴブリンが泥を投げる
ギャギャギャ!
「あぶねっ!」
透は咄嗟に避ける。
だが避けた先は、濡れた岩場だった。
ツルッ
「スラッシュ!!」
スカッ
その剣は、空を切る。
「外した!」
透は、足を取られて攻撃を外す。
ギャギャ!
「ファイヤボール!」
ドカンッ
「バリアブルアタック!」
スパンッ
すかさず二体の首を刎ねる。
ゴブリンは、絶命する。
「しえるナイス!!!」
見事な連携プレイだった。
これなら、問題なく進めそうだ。
俺は透の強さ、しえるのサポートの成長を実感した。
俺たちは、どんどん奥へと進んでいく。
汗なのか、湿気なのか分からない。
シャツが肌に張り付き、不快感がまとわりつく。
ボトン
「うぇ、きったねぇ」
透はぬかるみに足を落とす。
「石を足場にうまく使えるぞ」
「なんかさぁ、つるっとしてるんだよ」
「たしかに。」
思っている以上に足場は、悪い。
迷宮が変わればこんなにちがうものなのか。
「なんか腹減ってきたな。」
「ツルッとしたもの食べたいなぁ。」
「そうめんとか?」
「ラーメンもいいなぁ」
「わ、私うどんがいいかもです…」
「何の話してんだよ」
俺は呆れながらにいう。
そんなことを言いながら俺たちは、無事第三層につく。
◇◇
俺たちは、三層へ足を進める。
「思ったより楽勝だったな。」
「いや。」
俺は奥を見つめる。
「ここからが、本番だ。」
「ラブリー隊長いくぞ!」
「おい!!」
透は、すかさず突っ込んでくる
このスピード感なら大丈夫だろう。
ギャギャギャ
ゴブリン?いや大きい。
「透!ホブゴブリンだ!」
岩を拾い上げ投げてくる。
「すぅーー。」
「スマッシュ!!!!」
ボゴーーーンッ!!!!!!
とてつもない音が迷宮に鳴り響く。
透は、拳一つで岩を砕いた。
「は?」
俺としえる、ホブゴブリンは、目を丸くしている。
「どんな修行したんだよ……」
「お、お…おおお!!」
拳を見ながら
透自身がびっくりしている。
びっくりしたホブゴブリンは、ぬかるみに足がはまり、転ぶ。
ギャギャギャギャギャギャ!!
周囲に知らせるように叫ぶ。
タタタタ。
ズルズル。
ボチャン。
通路、壁の隅、土の中
4....5体、6.7....8体!?
「くそ、仲間を呼ばれた!」
「身体強化」
ブォーン
透が青色の光を纏う。
「いけるか?透」
「おう」
「前方2体」
ドゴォーーーンッ!
「壁際、右1.左2」
ボゴーーーンッ!!
「後方1.土の中2」
バゴォーンッ!!!
ホブゴブリンたちは宙を舞う。
壁へ。
地面へ。
天井へ。
叩きつけられ、そのまま動かなくなった。
そして、その騒ぎを聞きつけ、さらに敵が集まってくる。
ウルフが4匹。
「しえる!ストーンウォールで道を狭めてくれ!」
「透!狭い道で1びきずつたおすぞ!」
「了解!」
「ストーンウォール!!」
しえるが魔法を唱える。
ゴゴゴゴゴ…。
「鬼さんこちら!手のなる方へ」
透が挑発する。
ヴヴヴッ
狙い通り1匹ずつ入ってくる。
1匹…2.3匹…4匹!
「よし!」
「透!いまだっ!!!」
「バリアブルアタック!!」
ギギギ…。
剣は、槍の方になる。
「おっりゃぁ!!!!!」
透は、槍を思いっきり投げる
ザクッ。
一直線に貫かれたウルフたちの目の光は、もうなかった。
「はぁ……はぁ……。」
透は膝に手をつき、肩で息をする。
「さすがに……連戦はきついな。」
額から汗がぽたりと泥へ落ちた。
泥に落ちた汗は、すぐ湿った土へ吸い込まれていく。
「魔力、少し減ってきました……」
しえるも胸元を押さえ、小さく息を整えている。
「助かった。いい連携だった。」
想定以上に戦えている。
だが、疲労も確実に溜まっていた。
四階層までなら、まだ行ける。
……問題は、その先だ。
「……四階層、行ってみるか。」
俺はみんなに伝える。
「おっしゃ……。」
透は息を整えながら笑う。
「まだいける。」
「これならいけそうですね!」
そうして俺たちは、4階層へ向かうことにした。
4階層の入口前
そこは、異様な空気そして、聞いたことのない鳴き声が響いていた。




