第十九話 攻略
19話行きましょう!
朝ニュースでは、
「ニュールーキー誕生」
「第9階層突破」
『全国各地で侵蝕域が確認されています。』
『侵蝕域内ではモンスターの出現が確認され――』
「落ち込んでても意味ねぇーか」
口ではそう言ってみたものの、気持ちは追いついていなかった。
スマホを開く。
いつものゲームを眺める。
「……。」
俺は、ダンジョンもゲームも今後やっていけるのか。
ログインしていないのは、世界が変わってから初めてだった。
アイコンを長押しする。
『アプリを削除しますか?』
指が止まる。
「……。」
そっと指を離した。
「まだ、いいか。」
課金した金額じゃない。
積み重ねてきた時間を、自分から消す勇気はまだなかった。
スマホの画面を閉じる。
家でステータスを何度も開く
ピロン…ピロンピロン。
レベル9
体力 18
攻撃 18
防御 18
魔力 18
スキル
ゴブリンを倒した。
グレートウルフも倒した。
命懸けだった。
それでも――
レベル9。
「何をすれば強くなれるんだよ……」
考えていても、レベルは上がらない。
俺は、重い腰を上げて、ギルドに向かうことにした。
◇◇
「浩介ぇ!!おはよ!」
「おはよーございます。」
浩介が手を振っている。
みんないつも通り元気そうだ。
俺は…。いや、考えるのはよそう。
「なんか透でかくなったか?」
「ラブリーになっただろ」
「え?」
「はい?」
何を言ってるんだ?
俺としえるはキョトンとしている。
「英雄になるために修行してきた」
「どんな修行だよ」
「一日中ボコボコにされた。」
「絶対行きたくない。」
「えっとちなみに誰かと?」
「マダムゴンゾウ」
「……。」
「…。」
頭にはてなマークが浮かぶ。
「しえる大変だ。透が壊れたぞ。」
「そ、それは大変です!!」
「おい!!こわれてないぞ」
透は焦って両手を頭に乗せている。
そして、諸々説明してくれた。
「…。」
しえるは、青ざめていた。
「あはは」
話を聞いたあとでもしんじられない。
おれは、腹を抱えて笑った。
「やばいよな。ゴンゾウ」
「やばいな」
「俺たちも強くならないと。」
俺は、拳を握りしめて自分に言い聞かせるように言った。
「てかさ、パーティ登録してなくね?」
思い出しように透はいった。
「そうですね.まだです。」
「なら早速登録だな」
「名前は、英雄パーティ!」
「却下。」
「じゃあ」
「超英雄パーティ。」
「却下。」
「真・英雄パーティ。」
「却下。」
「新・真・超英雄パーティ。」
「お前ゲームのアップデートか。」
「あの…他に…候補は…」
しえるは、クスッと笑う
「おい!お前ら!難癖つけるなぁ!!」
「へいへい」
俺は呆れたように言う。
窓口には、人が殺到している。
勇者パーティがダンジョンをクリアしてからというものさらに冒険者たちの火がついたらしい。
「勇者スゲェーな」
「まぁ、俺も英雄だし。」
「まだいうか。」
透はいつも通り笑っている。
あんなことがあったのに。
……強いな。
しばらくあたりを見まわし
「パーティ登録だな。」
俺はいった。
窓口に着く。
「では、パーティ名をお願いします。」
「英雄パーティで!」
透はニヤニヤしている。
「却下じゃなかったのかよ。」
「俺以外が却下しただけだ。」
「最低だなお前。」
俺は呆れたように言う。
「英雄……パーティですね?」
「かしこまりました。」
「パーティ登録をすると
経験値共有、チーム内チャット、ギルドランキングに参加できます。」
「これから俺たちは世界を変える」
そういう気持ちを持っていこう。
「わ、わかりました。」
「とりあえずいいか?」
俺切り出した。
「なんだよ?」
「なんでしょう。」
「情報を集めたい。」
何よりも情報が必要だ。
「いいね。」
透が笑う。
◇
冒険者たちに話を聞く。
「初心者ならグリーンゲートだな。」
「四階層を越えると急にきつくなる。」
「深層は別世界だ。」
みんな言うことは違う。
だからこそ、情報を集める価値がある。
「グリーンゲートはF〜D級向け。」
「ホワイトはC〜B級。」
「レッドは今じゃA級。」
「ブラックは……入ったら帰ってこれない。」
迷宮はここまで変わっているのか。
「同じグリーンでも出てくる魔物は違う。」
「湿地型。」
「洞窟型。」
「廃墟型。」
「だから攻略法も変わる。」
なるほど。常に同じじゃない。
変化する迷宮。それぞれ攻略方法がちがうな。
そして、俺たちは講習を受ける。
壁一面に貼られた地図。
未踏破区域。
行方不明者一覧。
「ここが今一番危険だ。」
そして、攻略サイトを読み漁り、配信動画を何本も見た。
レベル。
スキル。
魔法。
装備。
パーティ構成。
強い冒険者ほど、力任せじゃない。
戦う前から勝負は始まっていた。
俺は動画を何度も見返す。
ゴブリン。
スライム。
ウルフ。
コボルト。
ゾンビ。
モンスターごとに動きは違う。
経験値も違う。
危険度も違う。
「……待てよ。」
動画を止める。
「……違う。」
「ゴブリン一体20秒。」
「経験値10。」
「ウルフ一体90秒。」
「経験値25。」
「……。」
消費する魔力。
回復アイテムの本数。
全部を紙に書き出す。
二度と、あんな無茶はしない。
生きて帰るための攻略だ。
「経験値だけじゃない。」
「倒すまでの時間も効率に入る。」
「消耗も。」
「帰還の安全性も。」
「ソシャゲじゃ当たり前だった。」
「最初に強敵へ挑むやつは、だいたい負ける。」
「だったら、一番効率がいい狩場は……。」
「グリーンゲート三階層。」
「あそこなら経験値効率も安全性も一番いい。」
そして改めてみんなのステータスを確認した。
透は、レベル11.しえるは、18レベル。
やっぱり魔力はしえるが飛び抜けている。
透は前より攻撃も体力も伸びている。
身体強化。
……いや。
「身体強化+?」
そんなスキル、昨日まであったか?
「どうした?」
「いや……気のせいか。」
気になる。気になるが、今は攻略が先だ。
属性有利、行動パターン、効率的レベル上げ。いけるぞ。
俺はそう感じた。
そして、ギルドを出る。
「じゃあ行くか。」
透は何の迷いもなく歩き出す。
しえるも後に続く。
俺も一歩踏み出そうとした。
その瞬間。
――ドクン。
心臓が大きく跳ねた。
黒い扉。
血の匂い。
あの唸り声。
ケルベロスの赤い瞳が脳裏によみがえる。
足が動かない。
呼吸が浅くなる。
また死ぬ。
そんな言葉が頭をよぎった。
「浩介?」
透の声で我に返る。
「……いや、大丈夫。」
嘘だ。
全然、大丈夫じゃない。
怖い。
効率なんて考えたところで。
怖いものは、怖い。
頭では分かっている。
でも体は、まだあの日を覚えていた。
それでも。
俺は一歩、前へ踏み出した。
「まずはグリーンゲート。」
「目標。」
「二階層制覇。」
「いや。」
「今日は三階層まで行く。」
透が笑う。
「それでこそ浩介だ。」
俺はゆっくり息を吐く。
怖い。
それでも。
ダンジョンへ足を踏み入れた。
ジメジメとした空気が肌に触れた。
24話ぐらいが一つの節目になりそうです




