第十八話 キューティ♡
透のお話になります。
数日前に遡る。
浩介がギルドに運ばれた後
透は、ギルド外のベンチに腰をかけていた。
「俺は、何もできなかった…。」
拳を握りしめて、そう呟く。
こんなんじゃ…。
「あんた、悔しいの?」
ふと誰かに声をかけられる。
透はゆっくり顔を上げた。
目の前には、
高い位置で結ばれたツインテールの人がいる。
「……。」
「……。」
「誰?」
派手なスパッツ。
ノースリーブのタンクトップ。
岩のような筋肉。
そして青髭
「あら。」
「失礼な坊やねぇ。」
その人は、腰に手を当て、胸を張る。
「ギルドランキング第3位ヒーローズパーティーのマダムゴンゾウよ♡」
「え……。」
ランキング三位。
その名前は何度も聞いたことがある。
身体強化だけを使って最前線で戦う、伝説の冒険者
「あんた、お名前は?」
「透です…。」
「あんたの友達。」
「大事なんでしょ?」
「…。」
透は何も答えられない。
「なら。」
マダムゴンゾウはニヤリと笑う。
「その子がまた戦えるようになるまで修行に付き合ってあげるわ。」
「え……?」
「困ってる坊やを放っておけるほど、アタシも薄情じゃないのよ♡」
「もちろん――」
ゴンゾウは拳を鳴らす。
「地獄だけどね♡」
そして悪夢が始まった。
◇◇
ギルド内の練習場
テレビではニュースが流れる。
『チュートリアル終了後、各地のダンジョンで大規模な変化が確認されています。』
『モンスターの危険度は従来より大幅に上昇。』
『これまでの攻略情報は通用しない可能性があります。』
『専門家は、ダンジョン攻略を一時見合わせるよう呼びかけています。』
透はテレビを見つめる。
「あの時……。」
「俺たち、この変化の中にいたんだ……。」
拳を握る。
「あいつが……浩介が……。」
「ケルベロス。」
マダムゴンゾウは静かに口を開く。
「少なく見積もってもAクラス級の魔物よ。」
「A……。」
透は息をのむ。
「アンタたちじゃ、まず勝てない。」
「逃げることだって難しい。」
「普通なら、その場で全滅して終わり。」
透は何も言えない。
「でも。」
ゴンゾウは少しだけ笑う。
「透ちゃんの友達。」
「大した坊やじゃない。」
「最後まで諦めなかったんでしょ?」
「だから今も生きてる。」
「それだけで十分、胸を張っていいわ。」
「だからアンタも諦めるんじゃないわよ。」
「さてはじめるわよ。」
「かまえなさい。」
透は、構える。
「キューティパンチ!!」
ボゴォッ!!
「ぐはぁっ!!」
透は5メートル吹っ飛ぶ。
「立ちなさい!」
「実戦じゃ休憩なんてないわよ!」
「隙あり!」
「ラブリーストレート!!」
バキッ!
「いったぁぁ!!」
「避けなさいって言ってるでしょ!」
「アンタ、その構えじゃ甘いのよ!」
「アンタそんな腰で戦うつもり!?」
「違う違う違う! 腰よ! 腰!」
バシンッ!
「いったぁ!?」
「魔物はねぇ、アンタが考えてるより百倍速いの! ボーッとしてたら食べられちゃうわよ!」
「もう一回!」
「はぁ……はぁ……」
「声が小さい!」
「もう一回!」
「はいっ!!」
透は何度も転がされる。
「とおるちゃん、才能はあるのよ。」
「……え?」
「だから余計に腹が立つの。」
「才能だけで勝てるなら、死人なんて出ないわ。」
「いくわよ!!」
「ビューティーキック!!」
ドゴン!
「アンタ!」
「ダメダメ!」
「お尻締めなさい!」
「キューティパンチ♡」
ドゴッ!
「アンタ、まだ目で追ってるでしょ?」
「……。」
「魔物を見るんじゃないの。」
「殺気を見るのよ。」
「ラブリーパンチ♡」
ドゴォッ!!
透は吹き飛ばされる。
「いってぇ!」
「そんな拳で!」
「それじゃ仲間は守れないわよ!!」
透は立ち上がる。
「でも俺には身体強化しか……」
マダムゴンゾウは鼻で笑う。
「バカね。」
「スキルは力じゃない。」
「想いよ!!」
「その想いを形にするための道具。それがスキルなの。」
「身体強化だから弱い?」
「違う。」
「身体強化だから何もできない?」
「違う。」
「アンタが"どう使うかよ」
「アンタの身体強化は、殴るためだけじゃない。」
「……。」
透は何も言えない。
「踏み込むため。」
「守るため。」
「助けるため。」
「逃がすため。」
「全部、身体強化の使い方次第なの。」
「スキルなんて道具よ。」
「強い人が使えば強い。」
「弱い人が使えば弱い。」
「結局、最後に勝つのは"諦めないヤツ"なの。」
「…。」
「透ちゃん。」
「……。」
「強くなりたい?」
「はい。」
「じゃあ泣いてる暇なんてないわ。」
「守れなかった悔しさは、強くなる理由にしなさい。」
「その痛みまで忘れたら、本当に弱くなるわよ。」
必ず強くなるそうきめ
透は、グッと拳を握った。
そして、ボコボコにされた。
◇◇
「チュートリアル代わりにレッドゲートへ行くわよ。」
「え!?あそこ初心者向けじゃ……」
迷宮内。
チュートリアル後の迷宮変化で
レッドゲートは、ランクB級相当になっていた。
ガガガ…。
魔物が現れる。
赤い巨大な体。
口から溢れ出る牙。
そして異様なのは
その発達した筋肉。
オーガだ。
「こんなの、前はいなかった……!」
透が身構える。
「バリアブル__」
マダムゴンゾウが前に出る。
「下がってなさい。」
「アンタみたいなのにはぁ……」
「ラブリー・デコピン♡」
パァン!!
巨大な魔物が吹き飛んで壁にめり込む。
「透ちゃん。」
「見てた?」
「え?」
「今のも身体強化だけよ♡」
「た、倒した?」
「もちろん。」
このひと強すぎる…。
「次行くわよ♡」
「え?」
「まだ一日目よ?」
「……。」
その日、一日中ダンジョンから
悲鳴が聞こえていたという。
◇◇
その日の夜。
透は、ゴンゾウという悪夢を見ることになった。
夢の中。
「透ちゃん!!」
「男子高校生はぁ!!」
「黙って焼肉食べ放題よぉぉぉ!!!」
「キューティパンチ♡」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
透は飛び起きた。
「……夢か。」
全身が汗だくだった。
◇◇
18話までのステータス。
浩介
レベル9
体力 18
攻撃 18
防御 18
魔力 18
スキル
透
レベル11
体力 57
攻撃 65
防御 53
魔力 47
スキル バリアブルアタック 身体強化
パッシブ 自惚れた英雄
しえる
レベル18
体力 98
攻撃 93
防御 57
魔力 133
役職 魔法使い
スキル 火球、ストーンウォール、
インビジブル
パッシブ ちっぽけな勇気
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