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第十六話 勇者

『速報です』

『本日未明、低級ダンジョン攻略中だった冒険者パーティが死亡しました』

『蘇生システムなどは確認されておらず――』


それが今日の大きなニュースだった。



SNSでは、

「死んだ?」

「復活ないの?」

と冒険者死亡がトレンド入りし、

話題を呼んでいる。


「死が日常になるかもしれない」


ギルド内


しかし。

そのニュースが流れた翌日でも、冒険者ギルドはいつも通りだった。


今日も活気に溢れている。

新しい冒険者がパーティ探しを

窓口での手続きをしている。


「今日も忙しいなぁ…」

窓口でそう呟く。

ゆあである。


「ぼーっとしないでくださいね。」

みのるである。


「あー!またサボってると思ってる??」

勇者パーティの一員でありながら、なぜか今日も受付に立っている。


◇◇

東区 ブラックゲート ダンジョンの中 


「くそっ!!」

「私たちじゃどうしようもありません。」


「わかってる!」

透は拳を握りしめる。


クソ…。  


「この迷宮は、5階層までの情報しかない。」


「もしそれより下なら…。」


透はスマホで攻略を調べる。


「おかしい……」

透は攻略情報を何度も確認する。


「こんなのないはずだろ……」


だが、浩介が落ちた階層は、記録には存在しない。


二人はまだ知らなかった。

この迷宮が、すでに誰も攻略したことのない場所へ変わっていることを。



「とおる!!ギルドに連絡しましょう!」

しえるは、スマホを出しギルドに連絡をした。



◇◇




浩介は、青ざめた。


まず目に入ったのは、巨大な爪。

次に、蛇のように動く尻尾。

……いや、違う。

一本じゃない。

二本……?

三本?


そして涎をダラダラと垂らしながらこちらを睨みつける顔が3つ。


「ケ…ケルベロス!?」


ケルベロス。

攻撃力特化型。

初心者が挑む相手じゃない。

ソシャゲなら攻略動画を見てから挑む敵だ。

でもここには、リトライボタンなんて存在しない。


ワォぉォォォォ

ケルベロスは、獲物がようやく動かなくなったと言わんばかりに咆哮を上げる。


ケルベロスがこちらを睨む。  

逃げられない。


でも。


「……やるしかない」


浩介は震える手で剣をまた握った。


ゲームなら、敵の情報を見る。


弱点を探す。


装備を整える。


でもここには、それがない。


目の前にいるのは、本物の魔物だ。


「来い……!」


自分でも驚くほど、小さな声だった。 


ケルベロスが動く。


浩介も踏み込む。


狙うのは足。


動きを止めれば、逃げる隙ができるかもしれない。 


「うおおおっ!」


剣を振り下ろす。

しかし――


ガキィン。

「……」

弾かれた。


傷一つない。


力を込めたはずなのに。


まるで、木の棒で鉄を殴ったようだった。


ケルベロスがゆっくりこちらを見る。


その目は、


そんなものか


と言っているようだった。


逃げ道がない


武器を持っていても届かない


圧倒的なステータス差


初めて理解した。

これが――恐怖なのだと。


それは、大きく腕を振り上げ浩介目掛けて攻撃をしてくる。


ドゴォーーーン…。


「グッ…。」

攻撃を咄嗟に避ける。


すぐさま

ケルベロスの口元を見ると

黒い炎のようなものが揺らめいている。



ほんとにまずい…。

避けないと死ぬ。


ドゴォーーーン!!


避けれた…?のか?


避けたつもりはない。

ただ、身体が勝手に動いた。

いや……違う。

動かされた?


直撃したかに思われた攻撃を浩介はなぜか避けていた。


「???」


間髪入れずにさらに追い打ちがくる。


俺目掛けてケルベロスが飛んでくる。



流石に終わった。

何もできず、ぎゅっと目を閉じる。


次の攻撃が来る。

避けられない。

これで終わる。


ガキィィィンッ!!


衝撃音が響いた。


……あれ?

死んでいない。


ゆっくり目を開ける。


そこには――


巨大な盾を構えた男が立っていた。 

「……間に合ったか」

「…少年。よく頑張った。」


その後ろから、一人の青年が歩いてくる。


「剛、無茶するな」


盾を構えた男は振り返る。


「…玲。…こいつは俺が抑える」


その名前を聞いた瞬間、浩介は息を呑んだ。

天宮玲。


世界で唯一、勇者と呼ばれる存在。


「あ、え…。」


咄嗟のことでうまく言葉がでない。


「……おかしい」


「何がですか?」


「君の動きだ」


「俺の?」


「さっきの攻撃。普通の人間なら避けられない」


「でも君は、避けた」


「偶然です…。」


「そうかもしれない。だが――」


「偶然が何度も続くとは思えない」


「……まぁいい」


玲はケルベロスを見る。


「今はこいつだ」


浩介が見る。


金剛剛がケルベロスの攻撃を止める。


「すごい……」


と思った直後、


玲が一歩踏み込む。


そして――

一撃。


ただ、それだけだった。

次の瞬間。

ケルベロスの巨体が、ゆっくり崩れ落ちる。


「……え?」


何が起きたのか

浩介には理解できなかった。


今までゲームの中でしか見たことがない光景だった。


強敵を倒すために、何時間も準備して、何度も挑戦して。


それを、この人は。


たった一度の攻撃で。

「……これが、本当の強さなのか」



そして――

初めて浩介は知る。

本当の強者という存在を。

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