第十三話 変わった世界
新章スタートです。
世界にあの通知が流れてから、一日が経った。
朝。
テレビから緊急ニュースが流れている。
「街中でダンジョン複数出現」
『現在、自衛隊による討伐作戦が行われていますが、有効な攻撃手段が確認できておらず――』
テレビから不安そうな声。
「怖いわねぇ…。」
「まぁ、大丈夫じゃないか?」
ピンポーン
「どーもぉ、本日より英雄となりました。トオル、オオクボです。」
インターホンに話しかけている変な奴がいる。
その背後には、しえるがオロオロしながら困ったように会釈していた。
その正体は、もちろん透だった。
どうやら今日から、俺の目覚ましはニワトリではなく英雄らしい。
「お前は、ニワトリかよ。」
「いえ、英雄です。」
「そうでしたか。」
呆れながらインターホン越しに会話する。
「とりあえず上がってくれ。」
「はいよ。」
俺の部屋に集まった。
やはり、みんなに昨日の通知が入っていたようだ。
「なぁ、浩介チュートリアルってなんだ?」
「お前は、まずそこからかよ」
「初心者向けの案内ですね。ゲームで言えば、操作方法を覚えるための説明みたいなものです」
としえるは、付け加える。
「さすがですねぇ」
いつのまにか、透は、鼻と髭がついたメガネをしている。
チュートリアルが終わって大きく変わったことはないのだろうか?
「なぁ、なんか変わったことってあったか?」
「ダンジョン増えたらしいぜ」
「どうやら、モンスターに、有効な銃火器はまだなさそうです。」
「あ!!!」
「「パッシブ!」」
透としえるは、顔を見合わせた。
「なんだそれ?」
「ステータスオープン」ピロン
それぞれのパッシブというところに目を通す。
「自惚れた英雄」か
「なんか俺らしいよな」
透はにやにやしている。
あとは、
「ちっぽけな勇気」
「な、なんか頑張ります。」
しえるは、いう。
「パッシブか。」
「これまでの活躍がなんたらーってでてたな」
「そうなんです」
「おそらくチュートリアルまでの行動が影響してるのかと…。」
おそらく条件付きのバフといったところだろうか。
「ステータスオープン」ピロン
ステータスを見る。
……ない。
パッシブという項目自体が、俺には存在していなかった。
このシステムを作った運営に、問い合わせを送りたい気分だった。
「ないぞ」
2人は困った顔をしていた。
「まぁ、まぁ」
「なんか特別なシステムなんじゃね?」
まぁ、いいか。
そこまで冒険にハマっているわけでもない。
ソシャゲの方が圧倒的に大事である。
「さて、とりあえずギルドでもいくか」
「そうですね。」
「そうだな。」
◇◇
ギルドへ到着する。
「……なんか人、多くないか?」
昨日までとは明らかに違った。
ロビーは冒険者で埋め尽くされ、受付には長蛇の列ができている。
「チュートリアルって何だったんだよ!」
「俺、今日から専業冒険者になる!」
「西区のダンジョン、もう埋まってるぞ!」
あちこちで怒号にも似た声が飛び交っていた。
職員たちは汗だくになりながら走り回っている。
「次の方はこちらへ!」
「登録窓口はこちらです!」
「ダンジョン攻略申請は三番窓口になります!」
以前より窓口がさらに増設されていた。
壁には新しい案内板まで貼られている。
【初心者講習 本日開催】
【パーティ登録受付】
【ダンジョン攻略情報】
「対応早すぎだろ……。」
俺が思わず呟く。
「天宮ギルド、本気だな。」
透も珍しく感心していた。
装備売り場では、
「ポーション売り切れ! 次回入荷は明日です!」
「鉄の剣、残り二本!」
「ロープありますか!?」
「申し訳ありません! 完売しました!」
冒険者たちが商品を奪い合うように並んでいる。
一方、その隣では。
「腕を出してください!」
「ヒール班こっち!」
「ポーション追加!」
怪我をした探索者が治療を受けていた。
腕を骨折した男。
肩から血を流す女性。
命に別状はなさそうだが、戦いが遊びではないことを物語っていた。
「……。」
透も、しえるも黙る。
昨日までのギルドとは違う。
ここはもう、本当に命を懸ける場所になっていた。
今がチャンスなのかもしれない…。
そうして、いつも通り掲示板に目を通すと、パーティランキングができていた。
1.勇者パーティ
2.銀狼
3.ヒーローズ
4.となりの冒険者
流石勇者パーティ。
話に行くととんでもなく強いらしい。
みたのは、鑑定の時以来か。
周りを見渡す。
「まあ、俺はいつも通りか」
「あの…。」
しえるだ。
「魔導書の方法を…きかなくても大丈夫ですか?」
そうだった。
「透!いくぞ、」
「あぁー!!忘れてた!!」
「いきましょう!」
俺たちは、窓口の前に来て、ギルド職員に話をした。
「了解しました。」
「こちらから、後ろの部屋へどうぞ。」
どうやら魔導書は、価値が高いらしく、その辺で何かしようものなら途端に盗まれてしまうかもしれないとのことだった。
「魔導書ですね。情報は、こちらでも確認しております。」
「盗難などに遭わないよう入手情報を精査してこちらで管理しております。」
透が魔導書を庇うようにぎゅっと抱きしめる。
「ご安心ください!」
「こちらで回収することはございません」
少し困った顔で伝える。
「それでは本題に___」
「____ということです。」
魔導書に魔力を込めると反応する。
そして、適性者であれば、魔法が獲得できるとのことだった。
この世界で確認できている魔法の獲得方法は、現時点では、二つ。
元々魔法を持っているか。魔導書で獲得するか。
レベルアップや、迷宮のクリアで獲得できる可能性もあるが、特に情報はなかった。
「よし」
透は、気合を入れると手に魔力を込めていく。
そして、魔導書に触れる。
ピロン
ステータスが表示された。
「おぉ!!!?」
「適性はありません。」
「えええええ!!、」
透は、悲しそうな顔をして項垂れている。
透がダメならしえるか。
「とおる!しえるがやってもいいか?」
「うん」
透は泣き目になりながら小さく頷く。
「で、では…。」
しえるは小さく呟くと手を魔力に込めていく。
そっと魔導書に手を触れる。
ピロン ステータスが表示される。
「すでにこの魔法をもっています。」
「あぁ…。」
そうして俺だ。
グッと魔力を込めた。
魔導書に触れる.
ピロン
「獲得資格はありません。」
「おい!!!!」
資格ってなんだよ…。
そうして俺たちは、新しい魔法は、獲得できずがっかりしていた。
それをみていた
ギルド職員が
「適正に関しては、魔法の属性に適正がなかったようなので今後チャンスは、ありますよ!」
「え?」
透の顔が輝いている。
まぶしい。眩しすぎる。
「こちらどうされますか?」
「買取も行っております。」
3人で顔を見合わせる。
使えない魔導書を持ち続ける理由はない。
俺たちは売却することに決めた。
「これ売れば限定ガチャ……。」
「浩介?」
「いや、なんでもない。」
知らない顔をする。
「俺のファイヤーボールがぁぁぁあ!!」
そして、透は、俺たちに引きづられながらかえることになった。
こうして俺たちは、変わり始めた世界の一部を体験した。
でも。
まだ知らなかった。
世界が本当の意味で変わった瞬間は、これからだった。




