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【木彫りのハニーベア・終章:16】

ま、その後はもう簡単でいいよね。



ちょーっとまったりしてたらなんか忘れてるなーってもやもやして。

なんだろなーって思ってたら茂みの向こうからゾンビが襲ってきたの!!!

……うん、まあ、血ヘド吐きながらよたよたと様子を見に来たコゲツくんだったんだけどね。

後から聞いたとこによると、なんでも儀式には一度死ぬことが必要だったんだって。

そんなこと知らなかった……というかまあ、いろいろあってコゲツくんのことすっかり忘れてた私は、余りにびっくりして思わず矢を数本ぶち込んじゃった。(もちろん急所は避けたよ!当たった足は裂けてたけど……)



まーその後は急いで満身創痍のロウガと死にかけのコゲツくんをベッドに放り込んだよ。

もちろん私も飛び込んだけど。



んで。

まあ、その後も婚姻問題やら掟の問題やら復興やらなんやかんやあったんだけど。

大切なことは一つ。

最後はみんな、仲良しこよし、めでたしめでたしだったってこと。



ここも、端的に事実だけ教えるね。

本当はもっとめんどくさい事件があったんだけど……ま、今回の話にはあんまり関係ないしさ。

大きく分けると四つかな。



一つ。

ウルフェン族の村はフォクサス族の尽力もあって前以上に立派になった。

その過程で二つの民族は同盟になってすごく仲良くなったみたいだね。



二つ。

ロウガは掟から解放されて自由になった。

同盟全体の長になって、って声も少なからずあったんだけど……ま、どうなったかは四つ目で話そっか。



三つ。

『先祖返り』はおそらくもう出ない、ってみんなが“わかった”。

これは、本当になぜなのかわからないけど、みんなが同時に、自然にそう思えたんだ。



四つ。

コゲツくんは、“手前にはまだあの人の隣に立つ資格がない”って自分から婚姻を取り下げようとした……んだけど。

肝心のロウガが、“別に形式的なものなら構わない”って勝手に話を進めちゃったの!

一緒に住む、とか何かの縛りを科すわけでもない、互いの自由を担保した契約なら問題はないって。

コゲツくん真っ赤になっちゃって、どっちがお嫁さんかわからなかったよ。

そのくせ、ロウガは“もっと広い世界が見たい”とかってふら~っと旅に出ちゃうんだから自由過ぎるっていうか。





でも、一個だけ解決していないことがあるんだ。



それは、最後、コゲツくんだけは絶対死ぬはずだったってこと。

どの儀式書を見ても、儀式の執行者が生き残った事実はないの。

毒薬はもちろん致死量だった。何ならゆうに100回は死ねるレベルで。

本人に聞いてもあんまり覚えてないみたいだし。どこかで形見のハンカチを落としたみたいだってすごく嘆いてたけど。



……ん?

私もコゲツくんにぶっ殺されてただろって?

んー、あれはね、正確に言うと死にそうだったけど死んではなかったんだ。

まあ、普通あんだけ血が出たら生きてたとしても身体も動かせないし意識もないから死んでるのと同じなんだけど。

それでもなんとか行動できたのは天雷木のお香――つまるところ、報酬でもらってた“木彫りのハニーベア”が熱で活性化したおかげだったってわけ。



天雷香、その効果は生物に有効。

対象は完全な死を迎えるまで無理矢理行動することができる。

ゲーム的に言えば効果中はHPが0にならない、って感じなのかな。



え?コゲツくんはロウガと別れて、それでよかったのかって?

ふふ、それはねーー



「どうしよっかなー、言っていいのかなー」



顔を赤らめながら身体をくねらせるスズメ。

いつのまにか敬語は崩れている。

スズメさんはいつもこうなのだ。

普段は落ち着いて敬語で話すけれど、テンションが上がってきたりすると素の部分が出てくる。



「えーきかせてくださいよぅ」



ライタは熱心にスズメの言っていることを書き留めていく。

ああ、やっぱり今回の話もいい、願わくばもっと詳しく聞いてみたい、と思いながら。



と。



「さっきから黙って聞いていれば言いたいことばかりべらべらとふざけるなこの耳年増の性悪女めロウガさんを見習えというかなんだ人のことばかりやいのやいのとうるさいやつめそんなんだからお前は顔はそれなりなのに相手がよってこないんだ」



それまで気配すらなかった隣の席に、いつのまにかフォクサス族の獣人が不機嫌な顔で座っていた。

いや、まあ、それはそれで不穏なんだけど、スズメさんから発せられるどす黒い雰囲気の方がまずい気がする。



「あらーごめんねーコゲツくーん全然気づかなかったーきゃぴ!」



やばい。

スズメさんはマジギレしている。

どう考えてもやばい。きゃぴとか言い出した。

巻き込まれないうちに逃げなくては――



「すみませんボク用事できたんでかえりま」



「……その無駄な愛嬌を振りまくのをやめろ空気に失礼だ吸えなくなるだろうもう少しこう落ち着いたらどうだああ無理かそのちんちくりんな体形だけは変わらないものな」



あっ。



「よし、殺す☆」



後ろで世界の運命を決める最終決戦が始まってしまいそうな予感を感じながら、ライタは必至で玄関に向かって走り出す。



「――おっと。」



もふ。

何か柔らかくてふわふわしたものに阻まれてしまった。

いや、ものではない、これは人だ。

あったかくて気持ちいいけど。



「わ、わ、すみませんっ」



急いで離れる。

見上げると、そこにはウルフェン族の、とてもハンサムな人がこちらを心配そうに見降ろしていた。



「いや、こちらこそすまない。怪我などなかったか?」



「は、はい、その、あの」



緊張して言葉が出てこない。

ただ、今は後ろで最終戦争がはじまりかけていて危ないということを伝えたくてそちらをふりむくと――



「ロウガさ……」



「――ロウガああああ!!!!」



「おっと。」



スズメさん の 猛タックル。

ライタは ふきとばされた。かべに ぶつかり 5 のダメージ。

ロウガと呼ばれたその人は、嬉しそうに微笑みながらスズメさんを抱きとめていた。

その様子をうらめしそうに睨むコゲツさん。

きゃいきゃいと騒ぐスズメさんの姿は、普段より一層子供っぽく見えた。



「ね、今丁度私とロウガの話してたんだよ!そこのライタって常連さんが聞きたいっていうからさー」



「ほう、そうなのか。では積もる話もあるし、3人で座って食事でも……ん?そこに居るのはコゲツじゃないか?」



「は、は、は、はい!!!て、て、て、てん、手前はコゲツです!!!同盟役員よりたまには羽根を伸ばせと休養を無理やり……」



「はは、コゲツは働き者だからな。役目をほっぽりだして遊びまわっている私が言えた義理ではないが……たまにはいいんじゃないか」



「あ、あ、あ、ありがとうございます!!」



「まったく、変わらないなあお前も。私の夫なんだからもっといろいろ言ってもいいんだぞ。流石に私も心苦しい」



「い、い。い……!!……いろいろ……!?」



コゲツさんは真っ赤になって湯気を出すと倒れてしまった。

きゅう、と声なのかなんなのかわからない音をあげている。

ロウガさんはそんな様子を見て肩をすくめると、すっとお姫様抱っこで抱きかかえて一言。



「……すまんスズメ、部屋を借りてもいいか?」



「いいよいいよー。うちはもう、宿屋だからね!友達料金でやってあげる」



宿帳に慣れた様子で名前を書くロウガさん。

スズメさんがロウガさんに鍵を渡す。



「助かるよスズメ。」



そう言うと、ロウガさんは廊下にあるドアを開けて部屋に入ったかと思うと、いくらもしないうちに出てきた。

ちょっと大人な展開になるかとおもっていたので少し意外だ。



「夫婦水入らずの時間をすごさなくてもいいの?」



「ま、それは後でゆっくりな。コゲツのやつは中々表に出さないが、結構疲れていたみたいだし、今は寝かせてやりたい。だから今は――」



「――お話ね?ふふ。了解。……ライタくん!まだ付き合えるよね?」



「あ、はい!」



席に座る。

大筋は理解したけど、細かい部分はもう一回聞くことで補強しないと。

隣にはロウガさん。

いつの間に用意されたのか、皿の上の大きくておいしそうな骨付き肉をほおばっている。

それを見ているのに気付いたのか、千切って分けてくれた。



「よっし、じゃあツマミも出来たし、そろそろ始めよっか。それじゃあ、どこから話そうかな……」





そうして、スズメさんは今の幸せをかみしめるように目を閉じ、その話が再び始まった――


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