【大流行】世紀末イリュージョンでバスケリングをぶち破ってみた☆(※人生初の借金付き)
前回のあらすじ:筋肉宇宙人VSニンニクましまし軍団の濃厚バスケ対決! ピザ油チャンスでボールを託されたパジュが、ついにシュートの体勢へ!
しかし、大勢が見守る中、なんと再びあの不穏な『ステーキ臭』が漂い始め……!?
果たしてパジュは、ラジと約束した禁じ手(変異)を使ってしまうのか!?
そして「歴史的変態」の汚名から抜け出したばかりのラジに迫りくる、次なる危機……!?
さぁ、一体どうなるのか……!? お楽しみください!
「そのボール、いただくわ!!!!」
「そのボール、頂きピッツァ!!!」
パジュの持つボールを目掛け、成川軍団を率いる『ショートカット刈り上げ鬼神』こと、バスケ部エースのなっちゃんが右から。
そして、『反ピザまん団体の名誉会長』ことピ川が左の上空から、その小さな体を押し潰す勢いで猛然と飛び掛かった、まさにその瞬間!
――シュッ!!!!!!!!
空を切るかすかな音と共に、パジュの手元から忽然とボールが姿を消した。
「え、ボ……ボールが消えた……!?!?」
「……ボール、どこピッツァ? イタリアまで飛んでいったピッツァ??」
コート内の敵味方はおろか、ラジを含む体育館中のオーディエンスまでもが、空っぽになったパジュの両手に釘付けになった。
その、直後――。
シュッパァァァァァァァァァァァァンンンン!!!!!!!
電光石火の如き速度で天井方向から飛来したバスケットボールが、ゴールリングを垂直にブチ抜いた。
突如として起こった『隕石落下・疑似体験』に、そこにいた全員の体が、しんと硬直する。
落下してきたボールの凄まじい波動により、リングネットは最初からそこになかったかのように一瞬で燃え去り、無残に変形したリングだけがギシ……と力なく揺れている。
焦げたボールと、それをモロに食らった床……もとい、巨大な『五右衛門風呂の穴』となった場所から、「パチパチ……」と微かな放電音すら聞こえるほどの、異常すぎる静寂だった。
――誰かの悲鳴が鳴り響く、コンマ1秒前。
パチンッ♪
魔法のように明るく軽い音が体育館に反響する。
それを合図に、極限まで張り詰めていた空気がパァッと瞬間解凍され、何事もなかったかのように、みずみずしい黄色い歓声が一瞬にして咲き乱れる。
「お~すげ! 『電光石火・隕石リングぶち破りシュート』じゃん! マジか!!」
「ファオリオさん、ちょっとバスケかじってたんだね! ナイス~!!」
「パジュちゃん、すごいよ~!! 最近流行ってるもんね、『リングぶち破ってみた』って! 私も真似してみよっかな!!」
「ミス・ファオリオ! スゥバラシィ・ノ・シュートゥ! デモ・リング・コワスゥノ・メッチャダメ!!」
『電光石火・隕石リングぶち破りシュート』という、バスケリングと床板がいくらあっても足りない協会泣かせのムッキムキ・プッシュプッシュの人外シュート。
それを、まるでスラムダンクの派生技でも決めたかのようなテンションで軽く受け流し、盛り上がる生徒とピカアチュたち。
そして何事もなかったかのように、ぼちぼちと試合が再開されていく中――。
ただ一人、ラジだけは目を丸くし、この異常すぎる現状を全く飲み込めずにいた。
「パジュちゃんって、小っちぇくて大人しいのに、意外と運動出来んだな〜。バスケ界の槇原敬之じゃん! ってか、花臣さんのあのパス、ナイスアシストだったくね? なぁ、黒瀬? なぁ! なぁ?!! 」
「…………」
……パジュ、あいつなにや――って、バスケ界の槇原敬之……?
……なんだそれ、例え下手くそすぎんだろ、どこに『どんなときも。』な状況があったんだよ。
あいつがひと言でも『もうバスケなんてしないなんて』言ったんか!? 『言わないよ絶対』なぁ!?!
…………いや、槇原敬之さんは今どうでもいい。問題は、マッキーじゃなくてムッキー(パジュ)だ。
あいつ、さっき何やったんだ?
状況から見て、能力を使ったのは丸わかりだが、外見上、腕は一切変異していなかった……。
でも、微かに匂うあのステーキ臭。……パジュのやつ、一体何をどうしたんだ??
隣で「いや、やっぱバスケ界のラッツ&スターって感じかな?!」と、謎に音楽界のレジェンド縛りで例え続けるロコモコ浜田をよそに。
ラジは周りの音を完全に遮断し、脳の回路と回路を繋ぎ合わせるように右手をそっと口元に当て、目線を左下へと泳がせた。
「…………」
…………ッ!待てよ、あいつもしかして……!
音速で右腕筋肉を変異させた…………!?!?!?!?
ま、まさか『ステルスムキムキ』?!?!?!?
【解説者・修二】
「はい、ラジが『からくり』に気づいたところで、目視できなかった皆さんのために、この僕が解説してあげるよ〜。パジュちゃんの変異は、音速で片腕の筋肉を収縮させることができる。だから、コンマ何秒の世界で右腕をムッキムキにして、ボールを上空に力任せに投げて落下させたってわけだね〜。いや〜さすが僕のパジュちゃん! ナイスステルス☆ 肩にちっちゃいジープ乗せてんのか~い☆」
――この破天荒・世紀末風イリュージョンの全貌を察したラジ。その瞳と握りしめた右拳に、音もなくすぅ……と、メラメラたぎる怒りの炎が着火する。
……あの野郎ぅぅぅぅぅ!! 見えねぇのをいいことに、白昼堂々とムッキムキしやがって!!
ついさっき屋上で『変異禁止』の契約結んだばっかだろうが! 何が「うん! わー、約束する」だ!!
ものの数十分で契約のグレーゾーン突っ走ってんじゃねぇぞ!! それもまた契約主の目の前でよぉ?!!
あいつ学校じゃ、回転寿司のレーンで放置されてる河童巻きぐらいおどおどしてやがるくせに、俺の前じゃなんだ、最近のおしゃれ恵方巻より図太ぇじゃねぇか!!
ったく、デパ地下惣菜並みにしたたかな奴だな。100グラムで計算させて、レジの合計金額でびっくりさせてんじゃねぇぞ。
カタコトのお面を被った、とんだイカサマ詐欺師野郎が!!
「パス! パス! そっち、空いてる!!」
「よし、もう一本いこ~!!!」
ラジのこめかみにピキピキと浮かび上がる青筋とは裏腹に――。
さっきの一投で色んな意味での自信がついたのか、今度はボールの行方だけでなく、コートで走り回るクラスメイトたちの姿をも遠慮がちに目で追うパジュ。
トコ、トコと一歩踏み出す足と同じだけ、その口角は少しずつ、嬉しそうに上がっていく。
また一歩と左足を前に出したとき。
右側の奥からただならぬ気配――自分に突き刺さるラジの『般若顔視線』を察知したのか、彼女の首がすぅとそちらを向き、二人の目が静かに合った。
「「………………」」
ラジの至極冷たい視線にたじろいだのか、パジュはバッと左の人差し指で問題の右腕を指差し、パクパクと口を動かし始めた。
普段のケロッとした真顔や、内弁慶タイムの顔とはまた違う、うしろめたさに少し慌てたような表情だ。
(ヘ・ン・イ!)
さらに両手で大きなバツ印を作って必死に首を振り、「(シ・テ・ナ・イ!)」と、声にならない全力の口パクで猛アピールしてくる。
「…………」
……いや、してた。思いっきりしてた。ファイナルアンサー『してた』すぎんだろ。
こっちは、ミリオネア達成しちまうくらいステーキの芳醇な香りが漂ってきてんだよ!!
「パジュちゃん、こっちこっち! もう一本決めちゃえ!」
パジュとラジの無言の空中コミュニケーションを、花臣の春風のような声が突き破る。花臣が頭上に掲げたボールが、綺麗な弧を描いてパジュの胸元にパシュッと届いた。
と同時に、さきほどの件がバレていたこともあってか、彼女は顔色を窺うように、チラッとラジへ視線を送る。
「…………ハァ」
浅いため息をつき、ラジは組んでいた腕をほどく。「どうぞ、ご自由に」とでも言わんばかりに右手でチョイチョイと軽く先を促すと、また静かに壁へと体を預けた。
許可なのか、呆れなのか、はたまた応援なのか、よく分からない右手の動き。それを好意的に受け取ったらしく、パジュはボールで塞がった両手の代わりに、大きな瞳を一度だけギュッとつむり、ラジを真っ直ぐに見つめた。
(がんばる)
そしてゆっくりと首を前に向け、顔をグイッと上げる。持っていたボールを右手に託して頭上へと高く掲げた、次の瞬間。
そのままズダズダズダズダッ! と、ゴールに向かって一直線に爆走し始めた。
「…………」
「アハハ、パジュちゃんルール無視すぎ!」
「トラベリングとかのレベルじゃないから〜。もはや別のスポーツだから!」
「いや、ファオリオさんって、結構おもしれ~!!」
「ピザはやっぱりマヨコーンの一択ピッツァ〜」
パジュの目視可能な2回目の暴走(完全歩行)により、後半女子チーム、そして体育館全体がなぜか温かい笑顔に包まれていった。
「…………」
……はぁ、疲れた。
壁に後頭部を預け、ズルズルと滑り落ちるように床へ座り込むラジ。
「あれぇ、黒瀬ぇ? 何笑ってんだ……? ……あっ! お前、俺の花臣さん見てただろ!! 目を閉じろ! この変態野郎が!!!」
「……うるせぇ。見てねぇよ」
***
キーンコーンカーンコーン。
一限目終了のチャイムが鳴り響き、生徒たちがぞろぞろと更衣室へと向かう中。
精神疲労と肉体疲労のダブルパンチにやられたラジも、だるそうに重い腰を上げて体育館を出ようとする。
――が、そこに。
逆三角形のナイスなくびれに手を当て、豪快さを具現化したような笑顔で『首太・笛チョーカー男』こと、ピカアチュがどっしりと立ちはだかっていた。
「黒瀬、これよろしくな」
「…………」
渡された、二つ折りの白い長方形の紙。嫌な予感と共にカサッと開くと、そこには『ゴールリング修繕代:30,000円』という無慈悲な文字が刻まれていた。
「ハハハ! 今日は最高のシュートだったが、備品を壊しちゃダメだ! ピピピのピだ!」
「…………いや、なんで俺が――」
「ミス・ファオリオのホームステイ先、保護者は黒瀬ん所だろ? じゃ、任せたぞ☆」
「あ、床穴は『隕石落下の可能性ゼロじゃないよ? あるかもだし、やっぱり入るべきじゃない学校保険』で、対応しとくから、安心しろ~」
そう言い残すと、ピカアチュはラジの肩をポンッと叩き、エアトランペットを片手に軽快なステップで鼻歌まじりに職員室へ消えていった。
「…………」
……あぁ、神様。
教えてくれ、俺は前世で、一体どんな罪を犯したんでしょうか。極悪非道の罪人だったんですか?
遣隋使のくせに、聖徳太子の『笏』を借パクしちゃったとかですか?
それとも、こけたはずみで、聖徳太子のあごひげ掴んで難を逃れたことですか?
遣隋使たるもの、隋へのロマンを胸にそのまま顔面から転べってことですか?
運動後の体を冷やすかのように、夏風がファッと通りすぎ、虚しく手元の紙がカサカサと音を立てる。
バスケットゴールの修理代という絶望を前に、ラジは過去の架空罪(遣隋使ver)を懺悔しながら、重い足どりで更衣室へと向かった。
その背中にはまるで、これから海を渡る遣隋使に選ばれてしまった官人のような、深い哀愁と覚悟が漂っていたという――。
***
「パジュちゃん、二限目は英語だよ。もしかして、英語ペラペラだったりする?」
「…………周波数、合わせるだけ」
「(周波数? あ、ラジオで英語学習してたんだ)すごいね、パジュちゃん!」
更衣室から校舎へと繋がる渡り廊下に、体育終わりの火照った体と心を表すかのような学生たちの弾む声が響く――。
ヒュオォォォォォ……。
突如、季節外れの重い風が吹き付け、渡り廊下と校舎が一瞬にして暗い雲に覆われた。グラウンドにそびえ立つ大きな樹林が、まるで意思を持つかのようにザワザワと枝を揺らす。
その、木の頂上付近。
教室へと戻る学生たちを、静かに見つめる『影』があった。
「うぅ〜ん……。我が愛しのパジュよ。見つけたぞ、ついに……!」
震えるほどに凛として、それでいて毒を孕んだような妖艶な声。
その麗しいほどの威圧感に、数千年という月日を刻んだ大樹さえも恐れおののくように、パラパラと葉を散らしていく。
「…………(ん?)」
花臣のあとを追うパジュが、不意にピタッと足を止め、グラウンドの方向へと首を向けた瞬間――。
バサバサバサッ!
五、六羽のカラスが、パジュと大樹を結ぶ視線の先を横切っていく。
その羽ばたきの勢いにパジュが一瞬目を閉じ、再び見上げたとき――そこにはもう、何もいなかった。
「パジュちゃん、どうしたの? 早く行かないと二限目遅れちゃうよ〜」
「…………ん!」
パジュはもう一度だけ、不気味に波打つ大樹の枝葉を振り返り、それからパタパタと花臣の元へ再び走り出した。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
音速で右腕をパンプアップさせる荒技『ステルスムキムキ』により、見事にリングを粉砕したパジュ。
そしてその代償として「修繕代30,000円」という人生初の借金を背負わされ、前世の架空の罪(遣隋使の借パク)を懺悔するラジ……。
さらには不穏な『影』まで忍び寄り、彼の平穏な日常は遠ざかるばかりです。
(ちなみに、その3万円は修二が立て替え、現在ラジとパジュが『お手伝い』で絶賛返済中だそうです)
【読者の皆様へ、ラジから切実なお願いです!】
「私・俺もデパ地下のお惣菜でぶったまげたことある(笑)」
「笏の借パク、されたことある」
「ピカアチュとトランペットでアンサンブりたい」
……と、少しでもクスッとしていただけましたら!
ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】をタップして【★★★★★】にし、ラジへの応援(※ゴールリング修繕代のカンパ)をお願いいたします!
ブックマークへの追加も大変励みになります!
皆様の応援が、ラジの借金完済と、明日を生き抜く希望になります!!!
明日も【18:00】に更新予定です! お楽しみに!




