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『しーちゃんと記憶の図書館』第97話
ふたつの缶
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翌日、
しーちゃんは棚の並びを少し変えた。
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父の鉛筆が眠る缶ペンケースと、
兄弟の宝物が詰まった缶ペンケース。
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二つを並べると、
まるで昔からそこにあったかのように、
しっくりと寄り添った。
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訪れた人は皆、
「どうしてふたつ並んでいるの?」と尋ねる。
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しーちゃんは微笑んで答える。
「どちらも、大切な人と過ごした時間の入れ物です」
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時には母と息子が、
時には男性が、
それぞれの缶の前で立ち止まり、
互いに言葉を交わすようになった。
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言葉は短くても、
目の奥には、同じ温もりが灯っていた。
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風鈴の音が、
ふたつの缶を優しく見守っていた。




