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『しーちゃんと記憶の図書館』第96話
同じかたちの入れ物
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ある午後、
図書館に入ってきた男性が、
展示棚の前で立ち止まった。
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「……これ」
彼の目が、缶ペンケースに吸い寄せられた。
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しーちゃんが近づくと、
男性は静かに笑った。
「うちにも、同じ形のがあります。
中身は……子どもの頃の宝物です」
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彼は鞄から、
小さな缶を取り出した。
色は違うけれど、形はまったく同じだった。
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中には、
ビー玉、切手、そして古いバッジ。
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「兄と競って集めたんです。
でも兄は……もう遠くに行ってしまって」
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しーちゃんは言った。
「この缶も、きっとお兄さんとあなたをつなぐ糸ですね」
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男性はうなずき、
缶を優しく撫でた。
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そして、風鈴の音がまたひとつ、
静かな記憶を揺らした。




