94/104
『しーちゃんと記憶の図書館』第94話
風鈴の下の再会
⸻
その日、
扉の前で二つの足音が重なった。
—
しーちゃんが振り向くと、
あの女性と、その隣に少年が立っていた。
—
「母さん……」
「来てくれて、ありがとう」
—
二人の声は、
同じ風の中で溶け合った。
—
少年は、
展示棚の上で揺れる風鈴を見上げた。
カラン……カラン……
音は、まるで二人の距離を
少しずつ近づけるかのようだった。
—
女性は、そっと少年の肩に手を置いた。
「この音、覚えてたのね」
—
少年は小さくうなずいた。
「うん……母さんの笑い声と一緒に」
—
しーちゃんは、その場をそっと離れた。
再会の時間に、言葉はもういらなかった。
—
風鈴の音が、
二人の間に漂う沈黙を
やさしく満たしていた。




