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『しーちゃんと記憶の図書館』第90話
音をしまう場所
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図書館の一角に、
しーちゃんが新しい棚を用意していた。
棚の上には、小さな透明の箱が並び、
その中には短冊や古い写真が収められている。
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「ここは、“音をしまう場所”なんです」
しーちゃんは風鈴を指先で軽く揺らした。
チリン…
—
海斗と真理子さんは、
その音に耳を澄ませたまま動かない。
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「風鈴の音も、言葉の響きも、
いつか消えてしまうようで、実は残るんです。
こうして形にしておけば、
誰かがまた出会うことができます」
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二人は顔を見合わせ、
そっと風鈴を棚の真ん中に置いた。
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短冊の文字は、
まだ書きたての墨の香りがした。
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「この音を聴いた人が、
自分の大切な人を思い出してくれたらいいですね」
しーちゃんの言葉に、
海斗は静かに「きっとそうなる」と答えた。
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その日、図書館の奥には、
潮風の音がしばらく残っていた。




