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『しーちゃんと記憶の図書館』第87話
風鈴に込めた手紙
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「どうして、こんなところで……」
海斗の声は震えていた。
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真理子さんは微笑んで、
窓辺に吊るされたひとつの風鈴を指差した。
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「これは、あなたがくれた音なの」
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海斗は息をのんだ。
それは、小さなガラスの風鈴。
中には、色あせた短冊が入っていた。
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そこには、幼い字で
「また、会えますように」と書かれていた。
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「あなたがいなくなった日から、
私は毎年、この短冊を新しい風鈴に入れ替えてきたの。
願いが風に届くように、ね」
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海斗は胸が熱くなった。
「じゃあ……全部の風鈴に、何かが?」
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真理子さんはうなずき、
一つひとつの風鈴を指で鳴らしながら言った。
「全部、手紙よ。
あなたや、大切な人たちへの、届かないかもしれない手紙」
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潮風が吹き、
十を超える風鈴が一斉に鳴った。
その音は、言葉よりも確かに、
二人の心を結び直していた。




