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『しーちゃんと記憶の図書館』第85話
海色の手紙
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海斗は深呼吸をひとつして、
封筒の口をゆっくりと開けた。
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中から出てきたのは、
海色のインクで書かれた一枚の手紙だった。
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“海斗へ。
あの日、私は言えなかった。
けれど、あなたが海を離れるとき、
灯台の花に『また会おう』と願ったの。
もしこの手紙を読む日が来たら、
きっとあなたは帰ってきてくれた証。
ありがとう。
私は、ずっとここで待っています。”
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文字は少し震えていて、
何度も書き直した跡があった。
海斗は手紙を胸に抱きしめ、
目を閉じた。
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「……まだ、生きていてくれるだろうか」
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しーちゃんは海斗の肩に手を置き、
「探そう。きっと、この町のどこかにいる」と静かに言った。
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港の方から、
小さな風鈴の音が聞こえてきた。
それはまるで、誰かが二人を呼んでいるようだった。




