84/104
『しーちゃんと記憶の図書館』第84話
灯台に咲く花
⸻
灯台のふもとに着くと、
潮風が花の香りを運んできた。
—
岩の隙間に、小さな黄色い花が群れて咲いていた。
海斗はしゃがみ込み、指先でそっと花びらをなぞる。
—
「……この花、あの人がよく押し花にして送ってくれたんだ」
—
花の間には、小さな木箱が隠されていた。
海斗が取り出して開けると、
中には古びた封筒と、海色のリボンが入っていた。
—
封筒には、にじんだ字でこう書かれていた。
“海斗へ。
もしこの花を見つけたら、
あの約束を覚えていますか?”
—
海斗は封を開けずに、
潮騒の中でしばらく立ち尽くした。
しーちゃんはそっと寄り添い、
「ゆっくり読もう。ここで待っているよ」と微笑んだ。
—
灯台の白壁に、
二人の影が長く伸びていた。




