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『しーちゃんと記憶の図書館』第83話
港町をたずねて
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翌朝、海斗はしーちゃんに小さな地図を見せた。
港町の外れに丸をつけ、そこに「古い灯台」と書き込んである。
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「たぶん、このあたりだと思う。
あの人がよく話してくれた場所」
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二人は電車を乗り継ぎ、
潮の香りが強くなる道を歩いた。
港町は、古い瓦屋根と漁網の匂いが混ざる、静かな場所だった。
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道端で干物を並べるおばあさんに、
海斗が写真を見せながら尋ねた。
「この人、知ってますか?」
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おばあさんは少し目を細めて、
「ああ、この町の“灯台の花”って呼ばれてた人だよ」と答えた。
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「灯台の花?」
しーちゃんが首をかしげると、
おばあさんは笑って言った。
「灯台に花を飾ってね、帰ってくる船を見送ったり迎えたりしてたんだよ。
でも……もう何年も姿を見ないねぇ」
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海斗は胸の奥に、不安と希望を同時に抱えた。
「やっぱり、会って話したい」
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そして二人は、港の先に見える白い灯台へと向かった。
そこに、潮風に揺れる花の影が見えたような気がした。




