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『しーちゃんと記憶の図書館』第82話

もうひとつの手紙



岬の灯籠の中には、まだいくつかの小瓶が残っていた。

海斗がそのひとつを手に取り、そっと栓を抜く。



中から出てきたのは、

小さく折りたたまれた青い便箋。

潮の香りがほのかに漂った。



紙を広げると、

丸みのある、やさしい字でこう書かれていた。


“あの日、声をかけられなかったあなたへ。

もしこの灯りを見つけたら、

私はまだ、ここで待っています。”



読み終えた瞬間、海斗の表情が変わった。

「……この字、知ってる」



しーちゃんと遥さんが驚いて顔を向ける。

海斗は便箋を見つめたまま、

少し震える声で続けた。


「子どもの頃、港でよく遊んでくれた女性がいたんだ。

 船を降りたら、必ず僕に絵葉書を書いてくれた。

 その字と同じだ」



遥さんは静かに頷いた。

「じゃあ、その人は今も、この岬に想いを残してるのね」



海斗は灯籠に手を添え、

潮風に向かって小さくつぶやいた。


「……会えるかな」



鈴の音が、答えるようにひときわ強く響いた。


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