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『しーちゃんと記憶の図書館』第81話
記憶の岬
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潮が満ち始めた午後、
しーちゃん、海斗、遥さんは再び小舟に乗り込んだ。
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空は薄く曇り、海は静かだった。
しかし、舟が岬に近づくにつれて、
波がかすかに揺れ、どこからか鈴のような音が響いてきた。
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「風の音……?」
海斗が耳を澄ませる。
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やがて、岩肌の間に小さな入り江が現れた。
そこには白い灯籠のようなものが並び、
その中に揺れる灯りが海面に反射していた。
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舟を降りた遥さんは、そっと灯りに近づいた。
灯籠の中には、潮風で丸くなった貝殻や、
小瓶に入った手紙が置かれていた。
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一つの瓶を開けると、
中から短い言葉が現れた。
“あなたに、帰り道の光を”
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遥さんの目に涙がにじむ。
「父はここで、誰かの航海を見送っていたのね」
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しーちゃんは、灯りの列の向こうに広がる海を見つめた。
そこには、過去と未来をつなぐ静かな道があった。
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「この灯りは、まだ消えない。
きっと、これからも誰かを導き続ける」
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波が足元をさらい、
鈴の音がまた遠くで響いた。




