80/104
『しーちゃんと記憶の図書館』第80話
最後の航路
⸻
図書館の静かな一角で、
しーちゃんたちは航海日誌を広げていた。
—
ページをめくるごとに、
潮風の匂いがよみがえるような文章が並んでいる。
航路のスケッチ、星座の図、そして手書きの潮の記録。
—
遥さんの指が、あるページで止まった。
「ここ……“最後の航路”って書いてある」
—
そこには、海図には載っていない細い線が描かれていた。
線は沖を離れ、湾を回り込み、
やがて“記憶の岬”と名付けられた場所で終わっていた。
—
「記憶の岬……聞いたことがないな」
海斗が首をかしげる。
—
しかし、日誌の端に小さな文字が添えられていた。
“ここで出会った灯りは、海の道しるべになる”
—
遥さんは目を閉じ、深く息を吸った。
「父は、あの灯りを見せたかったのかもしれない」
—
しーちゃんはそっと微笑んだ。
「じゃあ行きましょう。まだ海は私たちに続きを見せてくれる」
—
窓の外では、潮がゆっくりと満ち始めていた。
海の物語が、次のページを開こうとしていた。




