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『しーちゃんと記憶の図書館』第77話
未開封の小包
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奥の棚の隅、
埃をかぶった木箱の中に、
白い布で丁寧に包まれた小包がひとつあった。
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包み紙には、薄く「開封日:未定」とだけ書かれている。
差出人の名前も、宛先もない。
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「未定って……どういう意味だろう?」
海斗が首をかしげる。
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しーちゃんは、
何かに導かれるようにその布を解いた。
中から現れたのは、
海色の封筒と、小さな木製のペンダントだった。
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封筒の封を切ると、
便箋にはこう書かれていた。
いつか、この町を大切に思う人が現れたら、
どうかこれを手渡してください。
私はもうここにはいませんが、
あなたに託します──
—
署名の代わりに、
小さな波のマークが描かれていた。
—
遥さんは、
ペンダントの裏に刻まれた日付を見て息をのむ。
「……これ、私が生まれる前の日付だわ」
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物語庫の空気が、
少しだけ重く、そしてあたたかくなった気がした。
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「この手紙、きっと私たちへのメッセージだ」
しーちゃんはそうつぶやき、
封筒とペンダントをそっと胸に抱いた。




