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『しーちゃんと記憶の図書館』第76話
波の下の物語庫
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鍵が回る音とともに、
波の形をした石の一部がゆっくりと動いた。
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扉の向こうは、暗い下り階段だった。
ひんやりとした潮の匂いが漂い、
足音がやわらかく響く。
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三人が慎重に降りていくと、
小さなランプの灯りがぽつんと灯る部屋にたどり着いた。
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そこは、まるで海の底にいるような場所だった。
壁一面に古い木箱や革のトランクが積まれ、
ガラス瓶の中には巻物や手紙が入っている。
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遥さんが、そっと瓶を手に取った。
中には、見覚えのある筆跡の短い詩が入っていた。
「これは……父の字だ」
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海斗は別の棚から、古い絵本を見つける。
表紙の裏には「旅の途中で会った君へ」と書かれていた。
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しーちゃんは、奥の机に置かれた分厚い帳簿を開いた。
そこには、物語庫に物を預けた人たちの名前と日付が
びっしりと記録されていた。
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「ここは……時を越えて、想いを預ける場所だったんだ」
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海の音が遠くで響き、
ランプの灯がゆらりと揺れた。




