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『しーちゃんと記憶の図書館』第73話
海の町への一歩
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朝、図書館の前に集合した三人。
海斗はリュック、遥さんはスケッチブック、
しーちゃんは例の古びた紙を大事に抱えていた。
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バスに揺られて二時間。
窓の外に、ゆっくりと青が広がっていく。
潮の香りが車内にまで届き、
三人は顔を見合わせて笑った。
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町に降り立つと、道は細く、
古い木造の家々が並んでいた。
壁には海風で色あせた看板、
そして軒先には網を干す漁師の姿。
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「この景色……」
遥さんが紙を見ながらつぶやく。
「物語に描かれていた町と、そっくり」
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海斗はポケットからカメラを取り出し、
シャッターを切った。
「ここで、あの旅人と少女が出会ったのかな」
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しーちゃんは波打ち際へ歩き出す。
砂浜には、何かが半分埋まっている。
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それは、錆びた小さな鍵だった。
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「……もしかして」
しーちゃんは海を見つめながら、
胸の奥に静かな確信が芽生えるのを感じた。
この町には、物語の続きを開く扉がある──と。




