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『しーちゃんと記憶の図書館』第71話
塔の扉
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塔の前に立つと、
海の風が一層強くなった。
塩の香りが、胸の奥まで沁みわたる。
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扉は木製で、ところどころ白い塗装がはがれていた。
中央には、小さな鍵穴。
しーちゃんはポケットから古い鍵を取り出した。
「……これ、合うかもしれない」
—
カチャ…
錆びた音とともに、扉が少しだけ開いた。
その瞬間、塔の中から
温かい空気と、紙の匂いが流れ出す。
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中には、螺旋階段があった。
階段の壁一面には、
無数の紙片や古びた封筒が貼られている。
「全部……手紙?」
海斗がそっと指先で触れる。
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一枚一枚に、誰かの“書きかけ”の文章が刻まれていた。
『いつかあなたに届くように──』
『まだ言えていないことがある』
『続きを書いてほしい』
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遥さんが息をのむ。
「これ……誰かが置いていったままの、言葉たち」
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塔の奥で、ひときわ大きな封筒が光っていた。
しーちゃんは近づき、ゆっくり手に取った。
封には、こう書かれていた。
『記憶の図書館へ』




