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『しーちゃんと記憶の図書館』第70話

海沿いの丘へ



机の上の一行を、三人は黙って見つめていた。



「……行くしかない、ですね」

海斗が、静かに言った。


遥さんも頷く。

「ええ。きっと、その場所が私たちを呼んでる」



しーちゃんは、少しだけ迷うように目を伏せたが、

やがて小さく笑った。


「じゃあ、準備をしましょう。

 海沿いの丘は、そう簡単にはたどり着けないから」



三人は、それぞれ鞄を用意した。


・しーちゃんは、図書館の鍵と古い地図

・海斗は、書きかけの原稿とペン

・遥さんは、スカーフと、あの栞



出発の日の朝、

図書館の扉を閉めると、

不思議なことに、風の向きが変わった。


まるで、彼らの行く先を示すように──。



丘までの道は、

舗装もされていない細い小径だった。

左右に咲く野花が、足元で揺れる。


遠くに、海と、

その先に小さな塔の影が見えた。



「……あれだ」


海斗の声に、二人も足を止めた。


塔は、夕陽の中で金色に縁取られていた。

そこから、かすかな“声”が、確かに聞こえていた。


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