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しーちゃんと記憶の図書館』第65話
川辺のベンチ
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ベンチには、
白いスカーフを巻いた女性が座っていた。
川面をじっと見つめ、
手には小さなノートを抱えている。
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海斗は、胸の鼓動が速くなるのを感じながら、
ゆっくりと近づいた。
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「……遥さん、ですか?」
—
女性はゆっくり振り返った。
その瞳は、海斗がかすかに覚えていた
“優しい光”をたたえていた。
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「……あなたは?」
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海斗は胸ポケットから封筒を取り出し、
両手で差し出した。
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「これを、渡すように頼まれました。
“記憶の図書館”からです」
—
女性は封筒を開け、
中の栞と手紙を見つめた。
やがて、
口元に小さな笑みが浮かんだ。
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「……あの場所は、まだあったのね」
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川辺に、静かな風が吹いた。
二人を包み込むように──。




