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『しーちゃんと記憶の図書館』第58話
図書館に戻る道
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海斗と女性は、
並んでゆっくりと歩いていた。
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夕方の光が、
道の端に長く影を落とす。
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女性は、ときどき海斗の顔を見て、
少し照れくさそうに笑った。
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「あなたが描いた物語、
どこか懐かしくてね。
初めてなのに、昔から知っているみたい」
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海斗は、
その言葉を胸の奥で大事に包んだ。
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やがて、
小さな煉瓦造りの建物が見えてくる。
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「……あそこが、記憶の図書館です」
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木の扉の前で、
しーちゃんが待っていた。
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「あら、おふたりで?」
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女性は、
少し戸惑いながらも笑顔を見せた。
「海斗の描いた物語に、会いに来ました」
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しーちゃんの目が、
やさしく細くなった。
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「じゃあ、どうぞ。
ここは、思い出を大切にしまっておく場所ですから」
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扉が開く音は、
まるで心を迎え入れる音のようだった。




