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『しーちゃんと記憶の図書館』第52話

白いページに波の音



バスから戻った翌日。

図書館の奥の席で、海斗は静かにスケッチブックを開いた。



白いページが、陽の光を受けて淡く輝いている。

しーちゃんは遠くからその様子を見守っていた。



鉛筆が紙をかすめる音が、

波の寄せては返すリズムに似ていた。



最初に描かれたのは、

水平線の向こうに漂う、小さな光。


次に現れたのは、港町の赤い屋根。

そして、そこへ続く細い坂道。



海斗は一度手を止め、

深く息を吸い込んだ。


「……描けるかもしれない」



その声は、誰に向けたものでもなく、

自分自身への小さな宣言だった。



ページの上で、波が形を持ちはじめた。

それは、昨日の海そのものだった。



しーちゃんは心の中でつぶやいた。

「記憶は、描きなおすことができる」


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