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『しーちゃんと記憶の図書館』第51話
もう一度、海へ
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翌週の午後、
しーちゃんは小さな封筒を手に、海斗を図書館のテラスに呼び出した。
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「これ、あなたに渡したくて」
海斗が開けると、中には青いチケットが二枚。
行き先は「港町行きの臨時バス」。
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「……どうして、僕に?」
しーちゃんは静かに笑った。
「港まで行く必要はありません。
ただ、バスの窓から“遠くの海”を見てほしいんです」
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海斗は視線を落としたまま、しばらく黙っていた。
そして、チケットをそっと握りしめた。
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「……行ってみます。
でも、しーちゃんも一緒に来てくれますか?」
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しーちゃんは、柔らかくうなずいた。
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当日、バスはゆっくりと坂を下り、
遠くの水平線が見えた瞬間、
海斗の肩がかすかに震えた。
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それでも、彼は窓から目を逸らさなかった。
「……青いままだ」
海斗の声は、涙と笑いが混ざっていた。




