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『しーちゃんと記憶の図書館』第49話
ほどけていく記憶
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海斗は、日記を両手で抱えるように持ち、
ゆっくりとソファに腰を下ろした。
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しーちゃんは、対面の椅子に静かに座る。
部屋の中は潮の香りと、ほのかな紙の匂いが混ざっていた。
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パラ…パラ…
ページをめくるたび、海斗の表情が変わっていく。
笑みがこぼれたかと思えば、眉がわずかに寄る。
その間、しーちゃんは何も言わず、ただ見守っていた。
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「これを書いた頃、
僕は毎日、海ばかり見ていました」
海斗の声は、懐かしさと少しの痛みを帯びていた。
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「でもある日、
見たくても海が見られなくなったんです。
理由は……もう、閉じ込めたつもりだった」
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言葉と一緒に、
長い間縛られていた記憶が、
糸が切れるように静かにほどけていくのがわかった。
しーちゃんは、そっと問いかける。
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「その続き、今なら……話せますか?」
—
海斗は小さくうなずき、
日記を胸に抱きしめた。




