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『しーちゃんと記憶の図書館』第44話
雨の午後の再会
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その日、図書館の窓を雨粒がやさしく叩いていた。
空は淡い灰色で、街の音が遠くに感じられる。
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午後三時。
しーちゃんは、奥の扉を開けて待っていた。
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やがて、入り口のベルが静かに鳴った。
そこに立っていたのは、背の高い男性。
少し濡れた髪と、抱えた封筒。
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女性は、その姿を見た瞬間、息をのんだ。
「……お兄ちゃん」
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二人はゆっくり歩み寄り、言葉より先に抱き合った。
雨音の中、ただ互いの存在を確かめるように。
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「手紙……ありがとう」
兄の声は、かすれていたが温かかった。
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しーちゃんは少し離れた場所で、
そっと二人を見守っていた。
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奥の部屋の棚には、
水色の封筒がひとつだけ、静かに残っていた。
そこにはもう「待ってる」とは書かれていない。
代わりに、小さなメモが添えられていた。
「もう、ここで会えたから大丈夫」




