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『しーちゃんと記憶の図書館』第38話
重なる想い
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少女は、
壁に並んだ封筒の中から、
ひとつをためらいがちに手に取った。
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それは、
淡い水色の封筒で、
角が少しすり減っていた。
—
中の紙には、
こうだけ書かれていた。
『待ってる』
—
少女はしばらく、その文字を見つめていた。
やがて、
しーちゃんの方を振り返る。
「……これ、私の気持ちと同じです」
—
しーちゃんは何も言わず、
ただ静かに耳を傾けた。
—
「お父さんに、
もう5年も会っていないんです。
私、ずっと“待ってる”って……
言いたかった」
—
少女の声は震えていたが、
その目はまっすぐだった。
—
しーちゃんは、
そっと封筒を少女の胸に押し当てた。
「じゃあ、この手紙は、
もう“忘れ物”じゃなくなったわね」
—
少女は、小さく笑ってうなずいた。




