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『しーちゃんと記憶の図書館』第35話
眠っていた箱
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展示の準備を終えた後、
少女がしーちゃんの視線を追った。
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「……あの箱、ずっと気になってました」
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棚の隅に置かれた古びた木箱。
金具はくすみ、蓋にはうっすらと埃が積もっている。
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しーちゃんは少し考えてから、
布手袋を手にはめた。
「じゃあ、一緒に開けてみましょう」
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カチリ、と金具を外すと、
柔らかい紙の匂いがふわりと立ちのぼった。
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中には、
色あせた封筒と、
見慣れない地図の切れ端が重なっていた。
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封筒には、
“見つけた人へ”とだけ書かれている。
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少女は息をのんで、
しーちゃんを見た。
「……これ、手紙ですか?」
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しーちゃんはうなずき、
封を切った。
中から現れたのは、
優しい筆跡で綴られた短い言葉。
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『この場所に、忘れ物があります。
見つけてくれたら、どうか伝えてください』
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二人は顔を見合わせた。
その“忘れ物”が何なのか、
まだ誰も知らなかった。




