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『しーちゃんと記憶の図書館』第32話

託す相手



夜の図書館は、

本棚の影が長く伸び、

しーちゃんの心も少しだけ揺れていた。



手元には、あの日のまま残った手紙の束。

封筒の端はすこし擦り切れ、

紙の匂いは懐かしさで満ちていた。



けれど、このまましまい込んでしまえば、

きっとまた何十年も

誰の目にも触れないままだろう。



「……この言葉は、誰かに届けたい」



思い浮かんだのは、

図書館に通う高校生の女の子だった。

彼女はよく詩を書き、

「言葉は時間を超える」と話していた。



翌日、

しーちゃんはその子を呼び止め、

手紙の束をそっと差し出した。



「これ……私の大切な記憶なの。

もしよかったら、あなたの言葉で、

続きを書いてくれませんか」



少女は驚きながらも、

まっすぐにうなずいた。



その瞬間、

会えなかった人との物語は、

新しい筆で書き進められることになった。


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