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『しーちゃんと記憶の図書館』第30話
母の秘密
夕暮れの図書館。
娘が書いた手紙の前で、母親は立ち止まった。
—
封筒に書かれた
「いつか会えるおばあちゃんへ」という文字が、
やわらかく胸を突いた。
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しーちゃんがそっと声をかける。
「……読んでみますか?」
—
母は小さくうなずき、
便箋を開いた。
そして読み進めるうちに、
目の奥に光がにじんでいった。
—
「お母さん……どうしたの?」
娘が心配そうにのぞき込む。
—
母は少し迷ってから、
静かに口を開いた。
「実はね……あなたのおばあちゃんは、
私が小さい頃、ずっと遠くに住んでいたの。
会えるはずの日が来る前に、
もう会えなくなってしまったのよ」
—
娘は驚いた顔をして、
「だから、写真が少ないんだね」とつぶやいた。
—
母はうなずき、
「でもね、こうして手紙を書けば、
きっとおばあちゃんも読んでくれる。
私たちの声は、どこにいても届くの」と微笑んだ。
—
二人は押し花の前で並んで立ち、
そっと手をつないだ。
その瞬間、家族の記憶が一本の糸のように結び直された。




