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『しーちゃんと記憶の図書館』第27話
過去の自分への手紙
未来への絵が並ぶ棚の前で、
一人の高校生の女の子が立ち止まった。
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彼女はスケッチの横に添えられた
「未来の自分へ」という言葉を見つめ、
小さくつぶやいた。
「…私も書きたい。でも、未来じゃなくて──」
—
その視線は少し下を向き、
指先は机の上でそっと動き出した。
—
便箋に書かれていくのは、
中学一年生だった頃の自分への手紙。
“あの時の私へ。
泣きながら部屋に閉じこもっていた日、
ちゃんと外に出られる日が来るよ。”
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書き終えた手紙は封筒に入れられ、
表にはこう書かれていた。
“201X年の私へ”
—
しーちゃんは、その封筒を両手で受け取り、
未来への絵の棚の反対側、
“過去の自分への手紙”という小さなコーナーを作った。
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そこには、これまでになかった新しい流れが生まれた。
未来と過去、
どちらにも手を伸ばす棚。
—
その日から、棚には
さまざまな年代の自分への手紙が並び始めた。




