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『しーちゃんと記憶の図書館』第26話
未来の自分へ描く絵
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母からの絵はがきが並ぶ棚の前で、
一人の小学生の男の子が立ち止まっていた。
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彼はじっと港町の夕陽を見つめ、
ポケットから小さなスケッチブックを取り出した。
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「ぼくも、未来のぼくに描いてみよう」
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鉛筆の音が、静かな図書館にやわらかく響く。
ページの中で、太陽は大きく、海はきらきらと光った。
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描き終えると、
男の子はしーちゃんのところへ来て、
少し照れながら差し出した。
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「これ、20年後のぼくに渡してほしいんです」
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しーちゃんは笑って受け取り、
未来の宛先を封筒に書いた。
“203X年の〇〇くんへ”
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棚には、絵はがきと並んで、
男の子の未来への絵がそっと置かれた。
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それを見た来館者たちは、
「私も描いてみようかな」と
鉛筆を手に取り始めた。
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こうして、夕焼けの棚は、
過去と未来が入り混じる、不思議な時間の場所になっていった。




