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『しーちゃんと記憶の図書館』第25話
母からの絵はがき
夕焼けの絵と手紙が並んだ棚の前に、
ひとりの女性が立っていた。
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長い時間、便箋の文字をなぞるように見つめ、
やがて深く息をついた。
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「…母の字に似ています」
そうつぶやいた声は、少し震えていた。
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女性はしーちゃんに向き直った。
「母から昔もらった絵はがきがあるんです。
どこかにしまったままで…」
—
それは、母がまだ元気だった頃、
旅先から送ってくれたものだったという。
そこには、夕焼けに染まる港の風景が描かれていた。
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「ずっと探していたのに見つからなくて」
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しーちゃんは静かに頷いた。
「もしよかったら、見つけたときにここへ持ってきませんか」
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数日後。
女性は小さな封筒を胸に抱え、再び図書館へやって来た。
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封筒から現れたのは、港町の絵はがき。
裏面には、丸みのある字で短い言葉が書かれていた。
“夕陽を見て、あなたの笑顔を思い出しました。”
—
その絵はがきは、夕焼けの棚にそっと加えられた。
棚は、色も記憶も少しずつ重なり、
一枚の大きな物語になっていった。




