第77話
こんにちは!
明日葉晴です!
前回はなんかシンとトレイズが語り合った回でしたね。
なんか、男の子同士が静かに語り合うのって、友情って感じがしていいですよね。
さて、今回はそんな二人の話…かと思いきや違います。
それでは本編をどうぞ!
前回のあらすじ
ソラを探す為に奔走するシン。しかし一向に手掛かりは見つからず、空振りに終わってしまう。その代わりにソラの様子が違うことの原因を推測する。夜には部屋に戻り、トレイズに班についての説明を行ったのだった。
=side/シン
授業が始まって二日目。今一つ眠りに就くことのできなかった僕は、まだ朝とは呼べない薄暗い時間に身体を起こしました。
「ぐぅ…ぐがぁ…」
机を挟んだ反対側の寝台では、トレイズさんがいびきを掻いて寝ていました。この様子なら多少物音を立てても大丈夫でしょう。そう思い僕は寝台から降りると、湯浴み場で軽く体を洗ってから、一応すぐに授業に行けるよう武器も持って部屋を出ました。
ふむ…やはりまだ誰もいませんか…
静かな寮の廊下を、足音を立てないように進みます。やがて寮の共通の玄関広間に着きました。そこには管理人の方が掃除をしていました。
「おはようございます」
「おや、おはよう。今日は君かい」
「昨日はソラさんがこの時間でしたか」
「そうだね。この時間なら女子寮に忍び込めると思っていたかい?」
「いえ、偶然ですね」
「くっくっくっ…そこは同じ返しかい。冗談さ。ごみ箱を取ってくれるかい?」
「え…あ…はい」
なんだか不思議な言葉を交わしたような気がする僕は、戸惑いながらも言われたとおりにごみ箱を渡しました。そのあとは特にやることもなく、備え付けの長椅子にただただ座っていました。いつの間にか管理人の方はいなくなっています。
ふむ…朝に話したいからと言って、この時間から待つのは少々早すぎましたか…
そう思っていると女子寮のほうから、たったったっ、と軽快な音が聞こえてきました。朝早い時間には似合わず、ずいぶんと慌ただしい方がいるようです。そう思って女子寮の方を向くと、知った顔が走って来ていたので驚いてしまいました。
「ハクアさん…?」
「えっ…!?あっ…!シンっ!」
僕のことを認知すると、ハクアさんは慌てた様子で止まりました。勢いあまって僕の前を少々通り過ぎてしまいましたが。
「シンはソラを見てないでありんすか!?」
「ソラさんですか?見ていませんが…」
見ていない…と言うより、見るために待っていたので…
「そうでありんすか…と言うことはやっぱり…」
「どうかしたんですか?」
「ソラは昨日から帰ってないんでありんす…」
「はい…?」
昨日から帰っていない…?
「どういうことですか?いえ、それよりも場所に心当たりが?」
「はいでありんす!こっちでありんす!」
「わかりました!」
そうして、僕はハクアさんと一緒に寮から急いで出て行くのでした。
=
道中、僕はハクアさんから簡単に昨日の出来事について聞きました。
「そうですか…そんなことが…」
「きっと…わっちのことが嫌いになったから帰ってこなかったでありんす…」
走りを止めなかったものの、喋り終えたハクアさんは落ち込んでしまいました。きっと、ソラさんに酷いことを言ったのを後悔しているんでしょう。
「大丈夫ですよ。ソラさんはそんなことでは嫌いになったりしないはずです」
「でも…わっちは…」
「ソラさんは人の本気をちゃんと受け取る人です。ハクアさんが本気だったなら、ソラさんはちゃんと受け止めるはずです」
「わっちの…本気…?」
「えぇ。ソラさんを思って言ったハクアさんの言葉は、きっと届いてるはずです」
「だと…いいでありんす…」
それでも割り切れないのでしょう。ハクアさんは落ち込んだままでした。それに僕の推測でしかないので、ソラさんの気持ちを聞くまでは納得できないのでしょう。
「あっ…あそこでありんす…」
「あれは…」
ハクアさんが示したのは道場のような建物。訓練場の一つでしょうか、ずいぶんと種類が多いですね。
「昨日はあそこで別れたでありんす。そこにいなければわからないでありんす…」
「なるほど…」
そうして、僕とハクアさんは道場の中に入って行ったのでした。
=side/ソラ
アタシ…何してんだろ…
道場の真ん中で目を覚ましたアタシは、倒れて天井をぼんやりと見上げたまま頭を働かせ始めた。
そっか…昨日…訓練してて…それで…それで…
ハクアに心配されて、それを受け入れなくて、怒られて、そのあとに訳が分かんないくらいモヤモヤして、それを振り払おうとがむしゃらになって、倒れた。
バッカみたい…あぁ…ハクアの言う通りだ…
昨日ハクアは泣いていた。アタシが泣かせた、のだと思う。いや、完全にアタシのせいだろう。本当にバカみたいだ。
強くなりたいのに、人を泣かせてたら意味がない…アレ…?
ふと思う。なんで意味がないのかがわからない。アタシが強くなりたい理由はアイツに勝つため。そこに他人は関係ない。
でも…なんでこんなにモヤモヤするんだろう…
昨日と同じ、ハクアが泣いてるとわかった時と同じ気持ちになった。なんだかとても、とても大事なことを忘れているような気がする。
まぁ…アタシが強くなれれば、泣かせることもないかな…
考えても分からない。だからそれを振り払うように立ち上がった。ハクアのことは気掛かりだったけど、今のアタシが何を言っても無駄なような気がする。
訓練しよ…
まだ授業までは時間があるだろう。なら、少しでも強くなるためにアタシは剣を握った。それに今部屋に戻ってもハクアを傷付けるだけ。だったらここにいた方がいい。
なんて…とっくに傷付けてんのに…
考えがまとまらないから剣を振る。だけど剣を振っても集中しきれず、どうしても昨日のハクアの言葉を考えてしまう。強くなることだけを考えたいのに上手くいかない。
「何が…いけないの…?」
気付けば言葉を漏らしていた。強くなりたい、それがいけないことなのか。アイツに勝ちたい、それはダメなことなのか。
「どうすればいいの…?」
分からない。どうすればハクアを泣かせなくて済んだのか。アイツに負けずに済んだのか。
頭の中はぐちゃぐちゃで、もうまともに剣が振れているかもわからなくなっていた。
バタンッ!
そして不意に訓練場の扉が開いた。
まさかっ…!?
アタシはアイツが来たのかを期待したけど、入り口に立っていたのは予想もしなかった人だった。
「シン…?」
「ようやく見つけました。ソラさん」
シンの後ろにハクアが見えた。すぐに扉の後ろに隠れてしまったけど、きっとハクアが連れてきたんだろう。
「ソラさん、昨日、彼…クラウセッドさんとなんかありましたね?」
「っ…!!」
アタシはアイツの名前を聞いた途端、頭に血が上った。それほどまでに、アタシはアイツを許せない。だけど、それはシン達には関係ないことだ。
「別に…なにも」
「嘘ですね」
「嘘じゃない」
「何かされました?」
「なにもされてない」
「そうですか?」
「うん。気にしないで」
問い詰めるシンをアタシは突っぱねた。これはアタシの問題だから。
「気にしないと言うのは無理ですね。今のソラさんは…ひどく怯えて、弱く見えます」
シンの一言で、アタシの中で何かが弾けた。
「アタシは弱くないっ!!」
「…っ!?」
アタシが叫んだことで、一瞬シンは息を飲んだように見えた。だけどもすぐに落ち着いたように、笑いを浮かべた。
「いえ。今のソラさんは弱く見えます」
「違うっ!弱くない!何がおかしいのよ!」
「そうですね。今のソラさんは、必死に虚勢を張ってる、か弱い女の子にしか見えないからですかね」
「だから弱いって言うな!」
シンには言って欲しくなかった。シンはアタシを認めてくれていると思ってたから、裏切られたように感じた。
なのに…なんでっ…!
「訂正して…」
「何をですか?」
「弱いって言ったこと訂正して…!」
「いいえ。しません」
「なら…力尽くで訂正させるからっ!」
そうしてアタシは、剣を構えた。それに応えるようにシンも構え、合図もなくアタシとシンは同時に踏み込んだのだった。
第77話を読んで頂き、ありがとうございます!
久々のソラちゃんとシン君のツーショット!
なんて言ってる雰囲気じゃないですよね。
さて、既視感を覚えるような展開ですが、第五章でやりたかったシーンその1まで到達しました。
厳密にはまだですが、まぁこの辺りが最初のチェックポイントですね。
それでは今回はここまで!
ブクマして頂いてる皆さん!
そうでない皆さん!
いつも読んで頂き、大変ありがとうございます!
次回もお付き合い頂ければ幸いです!




