三千院・起点と終点3
雑誌には此処が三千院の見どころ、メインスポットと書いてあった。まさしくあの二人のメインスポットでもあった。今、同じように三人もそこに佇んで、同じ想いに近付こうしている。
「あたしの所へ鍵を取りに来たとき滝川さんはなんか言ってたの」
たとえ彼女が亡くなっていても、滝川にすれば想い出に浸れるはずだ。
「あの時は道子さんの話を色々と聞いて貰った後だったから気持ちがスーと入って行けたけど、この日はなんか拒絶されてるようだったと言っていたなあ」
意外にも彼女は身近に居たと知って懐かしんだ。いざ家を訪ねる時に、そんな近くに居ながらなぜ彼女は黙っていたのか。夕紀にはこの沈黙が道子さんの思いの総てを語っている気がした。
「最近、道子さんと一緒にお参りした宇田川さんっていう人から聞いた話だと、道子さんはここにはずっと昔に、初恋の人と来た時と同じ共感が今でもするらしいって言われたそうよ」
「何だそれは。道子さんが亡くなる前に見た同じ阿弥陀仏を滝川さんが見ても全く反対の反応なのは何でだろう、夕紀はどう思う」
二人に対しての想いの違いかしら、それは想う人に対してのお互いの拘りだと夕紀は云う。想う人に対しての拘りとは何だ、とまた今度は此の言葉に桜木は極度に反応する。
「受け入れてもらえなかったって事なのかしら」
微妙に揺れ動くを女心をいたわって欲しいのだ。
「それでは目の前に千年以上も無言で居座る阿弥陀如来と何ら変わらんじゃないか」
「阿弥陀如来は極楽浄土へ導いてくれる仏さんで、人への想いは聞き届けてくれませんよ」
夕紀どころか美紀までも腹の中で笑ってしまった。
「それぐらいは解ってるよ、俺が言いたいのは宗教全般だ。信仰心の問題か、いや、あの二人が何を信仰しょうが差別はいかん」
阿弥陀如来様が誰を差別するのかしらと二人は笑いを堪えた。
桜木から真面目くさって言われると、この人は本当に女心の解らん変な理屈っぽい学生だ。あの二人を認識すればするほど、あのお年寄りたちとの対応が不可解すぎる。このギャップをどう分析してよいのか困る。これが桜木の裏表のない素性なら、この人は人間学を通り越して、恋する前にもっと自分を深く追求して欲しい。




