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光明3

 入り口のあの邪魔くさそうな表情から、既に一転して緩んだ顔で簡易のテーブルを出してくれた。ヤカンに水を入れて湯を沸かす動作を見ていると、さっきまでの道中で夕紀が述べた女性観は吹っ飛んでいる。忠実(まめ)に世話を焼いてくれる実に思いやりのある桜木の情感に美紀はスッカリ気に入っている。

 お湯が沸くまでにカップ茶碗を用意して、あの本だろうと片隅に積まれた中から二巻を探し出して美紀の前に置いてくれた。お湯が沸くと紅茶も出してくれる。

 桜木には来るなら来るで連絡しろよと、何も用意してないから慌てて仕舞うだろうと言われる。別にこっちはそんなものは期待していない。あの年配者に見せたように、此処でももっとナイーブな女心に、寄り添ってくれると夕紀は期待したい。

 抜き打ちでやって来た美紀には、桜木は面倒がらずに紅茶を出してくれる。このおもてなしに秘めた優しさは朗報だろう。だがその桜木の優しさが曲者なんだ。彼は書物から得た男女の心の駆け引きが愛で有り、それにそぐわない男女の行動は理解出来ない。それを夕べは夕紀が桜木に問うたが、彼は終点の八瀬駅まで見送って(なお)もその答えに窮している。そんな奴が、そう簡単にこの訪問の意味を知るわけがない。

「お陰で今日はあの本が全部売れちゃった」

 夕紀は取り敢えずこの一件が完遂したと報告する。そうかやっと一段落したか、といつものように桜木は、砂糖なしで紅茶を飲み始める。

「それにしても解りにくい関係の二人だった」

 まったく、今まで読んだ小説に当てはまらないと桜木はぼやいている。

「そうかしら至って解りやすい二人だと思っているのに」

 何処が解りにくいのか訊ずねても、桜木は返事に困っている。


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