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第2章 優しい悪魔

「キルヴァニャ、何を作っているの?」

夕食の後。ルルリアはふと、我が子が何やら編み物に夢中になっているのを見つけた。

指を持たないはずの彼だが、しなやかで力強い羽根がまるで編み針の代わりのように器用に動き、糸をすいすいと編み上げていく。

――速い。しかも上手い。

どうしてそんなことができるのか。

まったくもって、大きな謎だった。

それどころか、キルヴァニャはどう見ても、師であるはずのルルリアより裁縫が上手だった。

その苦い事実に、ルルリアは胸の奥のどこかで密かに頭を抱えている。年長者としての威厳が、ずしりと傷つく思いだった。

もっとも、彼女はパラディン・セイン〈大聖騎士〉として育てられた身だ。

花嫁修業など受けたこともない。家事の腕前といえば、袖のほつれを繕うとか、ボタンを付け直すとか――戦場で生き延びるための最低限の技術程度に過ぎない。

孤独な旅をするようになってから、ようやく日常の手仕事を少しずつ覚え始めたくらいである。

だからといって――。

自分の不器用さが面白いわけではない。

単純に、面白くないのだ。

元大聖騎士のルルリアは、しょんぼりとベッドの縁に腰を下ろし、ふわりと柔らかなマットレスに沈み込んだ。

去年編んだ毛布の上を指でなぞる。絡まった結び目や、ところどころに残る緩い糸が目に入るたび、口元にわずかなしかめ面が浮かんだ。

――決して傑作とは言えない。

「ニュニュの子どもたちのための耳当てを作っているのだよ」

「そういえば……先月、生まれたばかりだったか」

ニュニュは夏の終わりに伴侶を見つけ、

そのラッセルボックの夫婦は、次の季節にはもう十一匹の子どもを授かっていた。

本来、兎の習性として子どもを人前にさらすことはほとんどない。

だがニュニュは珍しく、キルヴァニャとルルリアにだけは安心しきった様子で我が子を見せてくれた。

きっと、彼らを完全に信頼しているのだろう。

もっとも、それも不思議ではない。最近では二人はほとんど離れないほどの親友なのだから。

「ニュニュが言っていました。ラッセルボックの赤ちゃんは、毛が生え揃うまで寒さを防ぐ術がないそうで。特に耳は凍傷になりやすいとか。だから、この耳当てが少しでも役に立てばと」

ルルリアの脳裏に、小さなラッセルボックたちの姿が浮かぶ。

乾いた草で作られた巣の中で、すやすやと眠る赤ん坊たち。まだ赤く、しわだらけの肌。

確かに、これから来る霜の季節にはあまりにも頼りない。

「そう……キミは本当に優しくて思いやりのある子だ、キルヴァニャ」

自然と笑みがこぼれ、ルルリアは素直に感心を口にした。

「ち、違う……ただ、大切な友人に感謝を伝えたいだけでだよ」

「感謝を言葉と行動で示せる人は、立派に優しい人よ」

その言葉を聞いた瞬間、

キルヴァニャはもぞもぞと身を丸め、くるりと球のようになって両翼で顔を隠した。

――まさか、照れているの?

なんて可愛いのだろう。

そう思い、ルルリアはくすりと笑った。

「きっとニュニュも、子どもたちも喜ぶわ」


魔法の森の冬は、良くも悪くもこの世のものとは思えない。

山の頂から湖の底まで、すべてが結晶の白に包まれる。

天を突く巨木は氷像へと姿を変え、

まるで水晶の城塞を守る無言の巨人兵士の列のように立ち並ぶ。

静寂の世界――

それでも、遠くにはかすかな祭りの足音が、ぱたぱたと響いていた。

幻獣たちは眠りにつき、

代わりに雪の妖精、冬の精霊、幽鬼たちがゆっくりと目覚める。

それは異形と精霊のための神聖な時節。

ひらひらと舞う雪片は、冥界の空気の香りと、

魔花の甘く濃密な芳香を運んでくる。

文明の手に触れぬ、

純粋な魔力を宿した凍結水の風景。

そこは、太古の存在たちが眠る、

世界の最奥の一隅だった。


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