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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
81/119

第七十四話 夏コミ前日~女子力~

グラたん「第七十四話です!」


 夏コミのブース調整やライブ時間の設定、メインイベントの下準備、書類業務等々をようやく終えたスルトは熱気漂う町中を避け、デパートの屋上へと退避していた。

 そこでイベントが行われていることを知らなかったこともあり、暇つぶしには丁度良いと飲み物を片手に吹き抜けになっているテラスモールの屋上から見物していた。


「ではではお時間となりましたので開始いたしましょう! 皆様お手元の準備はよろしいでしょうか!?」 

 司会も観客の熱気も高く、参加している者たちの意欲も計り知れない。特に願い一つもしくは10万円分の商品券ともなれば主婦たちはこぞって参加する。参加している子供たちも先に答えんとばかりに笑みを浮かべている。


「……早苗たちは一体何をしているんだ」 


 ただ、その中にロリっ子三人と親二人が良く見覚えのある人物だったことにスルトは若干呆れを覚えた。


「……いや、これはある意味好機か」


 早苗の幼少期を知らぬスルトからすればロリ状態の早苗は今後お目にかかることすらない絶好の好機。加えて諏訪子と神奈子、レミリアにメンタ、幽々子への土産――というよりは交渉材料になる、と考えて空間収納ストレージから三台の高画質カメラを手に、一台は浮遊録画、一台は自動シャッター状態で待機、一台は瞬間連射撮影バーストモードで厳戒態勢を敷き、腕を組んで時を待った。


「第一問! 『今回の夏コミ主催者は誰』!?」 


 観客及び回答者全員が分かるような、それでいて出資者が誰なのかあからさまに分かる媚び問題にスルトは滑り落ちそうになる。


「さあ解答は~? はい!」

「『スルト様』!」


 子供から大人まで知る近代の有名な神様。同時にここ最近で良く耳にする神の名前。スルトは呼ばれることも称え崇められることも慣れているがどうしても苦笑いになる。

 中央都市の大半の施設はスルトの作った資金や出資で作られてはいるし、組合にもお金をかけている。そのほとんどが融通と情報網のためだ。


 ――あ、パルに気付かれた。


 早苗たちの方を見ているとやはり注視が過ぎたのかパルに発見され、続いて早苗たちにも伝わったらしく、スルトは軽く手を振り、そして静かにせよ、と人差し指を立てた。

 が、時遅くパルも手を振ってしまったため観客に気付かれるのも時間の問題と考えて隠蔽魔法を使って姿を消し、気配も断つ。

 分かっている通り、神様スルトがそこにいるというだけで熱心なファンやマスコミが来るため居ない振りというのは意外と重要だったりする。


「あれ、消えちゃった」


 手を振り返すとスルトが焦ったように姿を消し、しかし浮遊カメラは浮いているためそう遠くには行っていないだろうとパルは思う。


「第二問! 『幻想郷の町や里に必ず一人はいる人気の職業は』?」

「『陰陽師』!」


 ――そういえばメンタも陰陽師にいるんだっけ。

 何をどうしているのかは全く分からないがメンタなら何をしたって何でもできるだろうと思う。


「第三問! 『博麗神社に住んでいる巫女の別名は』?」

「『最強可憐の巫女』!」


 ――嘘です。

 ――それはありませんね。

 霊夢の普段の姿を知っている咲夜たちからすればあり得ないという感想がまず出るが、それでもゴシップに疎いと女子が廃るため知識は新聞やら雑誌を読んで仕入れているため正解はした。


「第四問! 『チェイルズシリーズ、第3作目の名称は』?」 


 司会の言葉に観客と参加者全員が一度沈黙した。幻想郷屈指の人気シリーズ作であるチェイルズは現在で9作品あり、名称を全て記憶するのは自身がオタクであるとバラす行為でもある。


「『チェイルズ・オブ・シンフォニャー』!」


 ここで答えられたのは参加者の半分だ。もう半分は見得とプライドを秤にかけて回答権を捨ててしまった。


「余裕だね」


 ここはパルに任せよう、と咲夜たちは回答権をパルに丸投げし、答えさせる。当然チェイルズはグロもサービスもあるため必然的に親から行き渡ったのだろうと観客は咲夜たちを見て、二人は視線を逸らした。


「第五問! 同じくチェイルズより出題! 『チェイルズシリーズ伝統の剣技必殺技の名称は』?」


 これを答えられるのは最低でも中盤までプレイしたか単行本を読んだ人でなければ分からない。咲夜たちは微笑ましく回答権を投げ、パルは喜々として答えた。


「『真刃まじん剣』!」


 子供と良い大人が必殺技を真似する形で技を放ち、司会者もご満悦で次へと進んだ。


「では第六問! 『先日、カルリスで行われた陰陽大会の優勝者四人を答えよ』!」


 先の陰陽大会終了後、優勝したのが東の陰陽師院であることは周知ではあるが、その優勝者の名前が載っている記事は月間・紅葉新聞と毎日ブンブン新聞の二つしかない。ゴシップ紙もその取材に伺い、理事長にインタビューをし、『陰陽大会。東の陰陽師院、優勝』と題を打ってしまい優勝者への質問は()()()()()


「『枢、シン、メンタ、てゐ』」


 無論、答えられたのは当日関わりがあったパルたちだけだ。それ以外は全滅し、敗退した。


「おおっと! まさか答えてくるとは思いませんでしたが――これはかなりのファンと見て良いのでしょうか!?」


 まさか優勝者が実妹だと今の体の状態では言えず、パルは沈黙した。


「それでは第八問! これを答えれば商品券ですよ!」

『おおおおおっ!!』 


 観客たちのボルテージも上がり、その歓声に当てられて物見客も増えていく。


「『第八問、幻想郷の魔法文明と魔導書の開発をした偉大なる魔法使いの名前を答えてください』!」


 咲夜たちの動きが眼に見えて固まり、パルは少々困ったような顔で咲夜を見上げた。


「ねぇ、さく――お父さん……」


 酷い棒読みの問いかけに咲夜は表情を強張らせ、しゃがんでパルに耳打ちする。


「パル、間違っても名前で呼ばないように」

「うん、ごめん」


 パルも答えが誰なのかは分かっているが、こうでもしないと本当に子供なのか、と疑われてしまう。


「『パチュリー・ノーレッジ』」 

「せ、正解です!!」


 レミリアたちが此方に来たのは実に50年以上も前の話。祖父や親世代ならギリギリ知っているかもしれないような人物なのだ。世間的には『紅魔館で魔法の研究を続けている偉大なる賢者』という認識であり『魔法で不老不死を会得した魔法使い』となっている。


『おおおおおおおお!!』


 観客たちも咲夜が知っていたことに驚き、特に魔法使いや見習いの陰陽師たちからは賛辞の拍手が送られる。

 ――止めてください! 本当は私、紅魔館のメイドなんです! 

 身内を出汁に正解した心苦しさと今更ながら全員を騙しているという罪悪感に咲夜の心は酷く痛めつけられていた。


「だ、第九問! 『幻想郷の神は八雲紫様ですが、その御傍でお仕えしている金色九尾の御狐様は誰でしょうか』!?」


 これは答えられまいと司会者はほくそ笑み、パルはそっと回答権を早苗に渡した。その背後にいる藍は早苗に耳打ちする体勢になり、上手いこと顔を伏せた。

 八雲藍という人物は世間的には『神様にお仕えする九尾』と認識されており宗教上にも『司祭』や『神官』として描かれることが多い。藍自身もそれは知っているが御狐様とか言われるほどの御大層な人物ではないことくらい自覚している。むしろ、家事や帳簿をつけて暇があれば橙と遊び、パルたちと買い物に行ったり女子会することだってあるくらいの女性だ。


「『八雲藍様』」

「せ、せせ正解!!」 

『うおおおおおおおおお!!』


 遂に願い事まで王手をかけ、各々凄まじい精神ダメージを負いながらラスト一問へ挑む。司会者は懐から出したカンペを見つつ震えながら息を吸った。


「ではラストの第十問! 『この娘たちは誰でしょう』!?」 


 アシスタントの一人が写真の貼られたプレートを掲げ、それが実によく見た事のある人物だったことに咲夜は眼を伏せ、藍たちも俯いた。


「おや、ではヒントを差し上げましょう! この二人は今、この町に来ております!」


 早苗は解答を投げ、受け取った妖夢は手際よく解答を綴っていく。


「『諏訪子様と神奈子様』」  

「なっ――正解……!」


 その写真に写っている人物たちは衣装をコスプレしており、一見誰だか分からないが元どころか写真撮影に協力までした早苗からすれば答えにくいのは当然だろう。

 尚、撮影・提供者はメンタだ。 


「おめでとうございます! いやぁ、まさか守矢の二大神までお答えになられるとは――」


 その後、全員が揃って報酬を辞退し、10万円分の商品券は貰ってその場を去った。

 再び休憩スペースに戻り、人払いを済ませて全員が体型を元に戻し、近くの椅子に座り、一息つく。


「と、とりあえずこれどうしようか~」


 耐え切れなくなったパルが商品券を片手に話題を振るい、まずは藍にパスする。


「い、いえ、私は……すみません、早苗さん」


 次に早苗にパスされ、


「わ、私もちょっと……咲夜さん」


 咲夜に渡されると無言で妖夢に回され、その妖夢も困ったようにパルに手渡した。


「其方たちは一体何をしているんだ」


 そこへ録画を終えたスルトが姿を現し、パルもこれを機にと商品券をスルトに無理やり押し付けた。


「スルトさん! お願い! 何も言わないで受け取って!」

「う、うむ」


 その過程で他色々と押し付けられもしたが比較的平常心で受け取る。だが、スルトとしてもタダで受け取るわけにはいかないので提案だけはしてみることにした。


「しかし結果的に皆で勝ち取ったことに変わりは無い。何か形に残らないものに変えてしまえば良いのではないか?」

「例えば?」

「例えば……クレープとか、パフェとか、どうだろうか?」


 形に残る物は使い辛く思い出しもするので食べ物に変えてしまえば思い出としか残らない。加えて昼食をまだ食べていなかったためその申し出に乗っかることにした。


「そうしましょうか」

「ええ、そうですね」


 うむ、とスルトも頷いてパルたちと共に喫茶店へと向かって行く。

 


 ――予想通りだ。

 スルトは美味しそうにパフェやケーキを食べる早苗たちを見て笑む。そう、この状況は誰が見ても羨ましい両手に華、否、疑似的ハーレムなのだ。それこそメンタが見れば発狂間違いなしの空間だ。


「パル、あーん」 

「はむっ」


 女子が女子に食べさせるという素晴らしい展開。しかしここで邪な視線と感情を抱いてはならない。女子という生物はそういう視線に機敏なのだ。

 スルトは仮面を外して紅茶を飲み、一歩引いた境界線からその光景を眺める。


「こ、これモンブラン、でしたっけ? 美味しいですよ!」 

「こっちの抹茶ロールも甘さが丁度良く舌ざわりもくどくありませんね」


 早苗は苺パフェ、パルは蜜柑パフェ、咲夜はショートケーキ、妖夢がモンブランで、藍が抹茶ロールを食べ、飲み物はセカンドフラッシュの紅茶を飲んでいる。スルトもせかっくなので餡蜜を食べている。

 テーブルは円卓になっており中央には中世の貴族が使ってそうな装飾が施されたケーキツリーが置いてある。そのケーキもショートケーキ、チーズケーキからバームクーヘン、ロールケーキと種類が豊富だ。

 そしてこの場において一品をシェアし、舌鼓を打つ姿を眺めることこそが正しい選択なのだ。


「スルトさんもどうですか?」 


 早苗ならばそうするだろうと機を待っていたスルトは期待していなかった素振りを見せつつティーカップを置いた。


「良いのか?」

「はい!」


 好意に食いついても控えめに、すぐには返答をせずに一拍置いてから頂く。向けられたフォークもケーキのみを食べるように心がけるのが鉄則だ。

 咀嚼して飲み込み、一息入れる。


「やはり甘味は美味いな。早苗も食べてみるか?」


 感想を入れてお返しをする。早苗はやはり待っていたらしく大きく頷いてスルトが差し出したスプーンごと食べる。


「ん~~!」 


 たまらないというように早苗が頬に手を当てて幸せそうな表情で食べ、そのイチャイチャぶりを間近で見せられていたパルたちにも別のスプーンを使って餡蜜を持ち上げた。


「食べてみるか?」


 今度は腹黒い笑みでパルたちに問いかけ、少々戸惑う。

 ――こ、これは、試されているのでしょうか?

 ――早苗さんの手前断るのは難しいですが食べるのも相応の勇気がいりますね。

 ――受け答えにも女子力を要されるとは……っ。

 ――美味しそう~。


「うん!」 


 まずはパルが先陣を切り、口に入れる。


「美味しい!」


 素直さと天然を前面に押し出して難関を突破し、続いてその視線が咲夜たちに向かう。その中で咲夜が覚悟を決め、口を開いた。


「貰いますっ」


 パクっ、とスプーンを口に入れてから咲夜は気付く。

 ――これ、パルと間接的にキスしているのでは!?

 別の意味で幸せになり、咲夜は紅茶をゆっくり飲む振りをして口元を隠す。そうでなければ早苗にあらぬ誤解を与えてしまいかねないと危惧したからだ。


「私は大丈夫ですよ」

「わ、私も……っ。それより早苗さんに食べさせてあげた方が良いです、はい」

「左様か。早苗」

「はむっ」


 藍と妖夢は無理と判断して身を引き、そのスプーンが早苗の口に入って行き、ホッと胸を撫でおろした。

 ――少々意地が悪かったかな。

 スルトもそこで満足し、後は早苗たちに任せることにしてティーカップを手に取った。



 女子が一度おしゃべりを始めれば長くなるのは当然のことであり、程なくしてスルトは仕事の残りを理由に退席していった。

 余談だが会計は商品券で済ませ、残った8万円程は幽々子の食費に変換されることになる。


「すっかり遅くなっちゃったね」


 時刻はすっかり夕刻になり、デパートから出てきた時には陽が落ちかけていた。


「こうやって一日中遊ぶというのは中々ないから新鮮だね」

「はい。私としては三人共女子力が高くて驚きました」

「意外だったのは早苗が化粧品や香水に詳しかったことですね」

「うん。香水ならボクもある程度分かるけど化粧品はあんまりだからね」

「ふふふ」


 今日の出来事や購入した品のことを話しながら宿の方に向かって歩いていると向かい側からレミリア、フラン、美鈴、橙、幽々子、紫の姿があった。


「あっ、咲夜」

「咲夜、パルー」

「はふー」

「美味ー」

「あ、妖夢も食べる?」


 その両手には購入して食べ続けているのだろう品々があり、妖夢は驚愕して叫んだ。


「夕食前にどれだけ食べるんですか!?」

「食べ歩きは人生の醍醐味よ!」


 レミリアたちも満足気にしていることから食べ歩いたのだろうと咲夜は推測する。否、よく見れば美鈴が大量の荷物持ちをさせられており、その袋の中には縁日で取っただろう景品が色々と詰まっていた。軍資金は2万円程度しか渡していないため荷物の量と金額が合わない。

 ――もしかして賭け事でもやって増やしたのかしら。

 無論、咲夜の懸念通りレミリアが能力を使って賞金付きの縁日を漁り増やした軍資金だ。金額にすれば実に30万円くらいは儲けている。

 しかし今日はレミリアから直々に暇を貰っているため、更に自分も楽しんでしまったため文句は言えない。


「あっちはともかくとして、四人とも楽しめた?」

「ええ、とても」


 なので咲夜はこの町にいる間は寛容な気分で居ようと決めた。レミリアもお小言の一つくらいは言われるだろうと思っていたのだが、咲夜の晴れ晴れとした表情を見てちょっと意外だった。


「貴方がそんな表情するなんて何時以来かしら?」

「ふふっ、こんなに満たされているのを自覚したからかもしれません」

「咲夜は一日中はしゃいでいたからね」

「にゃっ!?」


 背後からの思わぬ攻撃に咲夜は驚き、フランもニヤニヤとしながら加わった。


「見れば分かるよ。だってあの咲夜がお化粧とかしているからね」

「もぅ……」


 確かにその通りだ、と咲夜は思う。


「ああ、そういえば二人に――というより皆に聞いておきたいんだけど……明日の夏コミに参加する人、手を上げて」

『はーい』


 全員が手を上げ、むしろそれがメインだろうと言わんばかりの笑みを向けられてレミリアは納得する。


「……なるほど。皆楽しみなのは良く分かったわ」

「お嬢様も参加されるのですか?」

「まあね。偶にはお嬢様以外、コスプレをやってみるのも一興。楽しみにしていなさい」

「私も!」


 レミリアに続いてフランも手を上げ、咲夜は実に楽しそうに微笑んだ。 


「はい」


 勿論、自分の分も用意されているとはこの時、咲夜は思いもしなかった。



 夜、町から少々離れた高丘の野営地では煌々とキャンプファイヤーを焚き、眼下で騒いでいる人間共の町、カルリスを眺めている兎たちがいた。


「ふむ、夏コミか」


 灰色の人もフードを外して眺めており、隣には隊長が控えていた。


「どうしますか?」


「答えは一つしかないだろう。……いや、既にお前たちのその恰好が答えか」


 振り返れば――全員ヲタ芸セットを装備したメス兎共が喜々として祭を待ちわびていた。隊長も撲殺天使のコスプレをしてはしゃいでいる。


「勿論、姫様方の姿をDVDとブルーレイで保存しておかなければ!」

「これは任務! 姫様方を奪還する重大な任務なのです!」

「これは軍用正式装備であります! 見てくださいこのライトセーバー!」

「俺たちだってやれることはあります!」

「明日は派手にやるぜ!」


 兎たちがキャンプファイヤーを囲み、樽に入った酒を注ぎ、ジョッギを片手に飲み干していく。テーブルの大皿には鹿肉や肴が置いてあり英気を養っている。


「……ま、良いか。私も偶には羽を伸ばすかな」


 灰色の人も奴が幻想郷の内部まで監視してはいないことを知っているため許可をだし、隊長に兎兵士たちを任せてジョッギを片手に持った。


「あっちも楽しそうだし」


 遠視魔法で宿の一角を覗いてみればメンタたちの姿があり、何やら面白そうな催し物をしているようだ。

 背後ではライトセーバーを構えた隊長が機材のスイッチを入れ、険しい視線で彼女たちを見渡した。


「お前たち、分かっているな?」

『ハッ!』

「私たちの任務はパル姫様の護衛と周囲の警戒、そして害を成す者の排除と人助けだ!」

『本望!』

「では最後の演習を始める。構え!」


 片手を上げると全員が御多芸の構えを取り、


「始め!」


 曲が流れ、踊りが始まると統一された光が迸った。動きはスルトから裏で渡されたラインナップ通りに練習しており、曲はチェイルズシリーズだ。


「姫のために月と妖怪が手を取り合える……何とも数奇な運命……。これが幻想郷のあるべき姿だというのなら、それも成したのもまた彼女たちか」


 平和だなぁ、と灰色の人は宝石のように光輝く町を眺めつつジョッギを傾け、酒を飲んでいく。


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