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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
82/119

第七十五話 ザ☆夏☆コミ!

グラたん「第七十五話です!」

メンタ「やっとあらすじ回収ですね」

グラたん「長かったですね~」

 チェイルズ・オブ・ベルセリャという小説がある。作者はフルーツ・レイン。

 この作品は主人公であるヴェルベットが歌とダンスで珈魔と呼ばれる魔物を浄化していき、清涼委員会の在り方を仲間と問いかける物語である。

 

 作中用語

 祭歌さいかの顕主:歌って踊って人々を魅了する化身。必ず女性でなければならないという決まりがある。


 珈魔こうま:カフェインを取り過ぎた人間の末路。その身は理性無き獣となる。


 珈琲病こうまびょう:カフェインを欲する病気。非常に苦しいらしい。


 清涼委員会:珈魔と戦い、祭歌の顕主と共に踊る戦士たちの集まり。清涼を信仰しており、人々を守るため今日も踊る。


 導師:清涼の頂点に立ち、珈魔を救済する偉人。また、一時的に珈魔を鎮める事が出来、礼舞にて隊祭士たちと共に御多芸を激しく舞い踊る。


 隊祭士たいまし:人間の中でもよく訓練された存在。御多芸を使うことが出来、清涼飲料水で珈魔を一時的に沈めることが出来る。


 清励せいれい:隊祭士たちに強力な援護をする見えない影部隊。清涼飲料水を差し入れしてくれる。


 歌の主(かのぬし):祭歌の顕主のために歌を作る人。


 来舞らいぶ:祭歌の顕主のために用意されたステージ。質素だろうと豪華だろうと踊れば珈魔は静まり、隊祭士たちは熱狂する。


 御多芸おたげい:祭歌の顕主を支援するための踊り。これがあることによって祭歌の顕主は最大限のパフォーマンスを発揮することが出来る。


 特等隊祭師:一等以下の隊祭士たちを束ねる数少ない最強の称号。一人一人オリジナルの御多芸を持っており、その威力は時に暴力にもなるほど。隊祭士たちはこれを習得もしくは自身のオリジナルを見つけることを目標とする。


 一等隊祭士:隊祭士たちを束ねる隊長格。そこらの隊祭士よりキレがあり、一目置かれる存在。


 下位賊かいぞく:隊祭士になれなかった炙れ者の集まり。しかし時には一等隊祭士や特等隊祭士に匹敵するほどの力を持った輩も存在する。


 神衣かむい:特等以上のみが使える強力な必殺技。主に人的被害が出た場合に使用され、珈魔など相手にもならないほどの力を得られる。ただし使用の際には精励の協力が必須。


 覇龍ドラゴン:世界最強種。精励が珈魔病にかかり、珈魔となった時の姿。これを鎮められるのは祭歌の顕主、導師、精励、特等隊祭士が力を合わせた時のみ。





 夏コミ当日。

 コミックマーケットと言っても地球でやるようなヲタクだけの世界ではなく、子供も大好きなアニメ展覧や飲食店もあり、近場にはヒーローショーを公演予定の公園もある。そのおかげもあってか会場は大人も子供もヲタクも大きな盛り上がりを見せており、開始を今か今かと待ちわびて並んでいる。

 さて、そんな中でメンタたちは、というと――。


「ザ☆夏☆コミ! 遂にこの日がやってきました!」

「幻想郷に百合を咲かせまくるぜ!」


 既にブース内に入っており、コスプレ会場の着替え場の一角を占領し、自身は既に着替え終えて霊夢たちの着替え終わりを待っていた。


「はい! そしてコスプレもあります! 渾身作ですよ!」


 地球に居た頃は資金力とコネと素材、年齢制限の問題があったため可能な限りの再現になってしまい、非効率的な衣装を作っていたのだが幻想郷ではそれら全てが解決されるため上質かつ非常に再現度の高い衣装をメンタは制作していた。


「ねえ、本当にこれで大丈夫なの?」


 衣装室から霊夢が出て来て不安げにメンタに確認を取る。霊夢が来ているのは赤と黒を基調として二の腕、腋、下乳とお腹、ショートパンツもダメージになっており太ももが露出している派手な衣装だ。左腕は包帯を巻いており、右腕には内部にロングナイフが内臓されている小手を装備している。肩からは黒いロングコートを羽織っているが全体的にダメージを加えているためやはり露出度が目立っている。


「髪の毛もちゃんと結んできてくれたんですね」

「遊びには常に全力よ」


 うんうん、とメンタは頷き、念の為にとてゐは確認を取る。


「ちなみにこれは誰の衣装なんだ?」

「チェイルズオブベルセリャの主人公、ヴェルベットの衣装です! 言葉遣いとか態度を考えても霊夢さんが一番だと思いました!」

「ふふん、流石私の一番弟子ね」


 余談だが霊夢をヴェルベット役にした理由はそれ以外にも普段の傍若無人な態度やら本気を出した時の変わりようとチョロイン属性が似合っていたという理由がある。


「で、メンタの衣装は?」

「せっかくなのでチェイルズで統一しようかと思いまして、オレのは同作品の通称ボケ役ことマギュルーです」


 メンタの姿はピンクと群青色と黒を的確に分けた衣装だ。肩から胸にかけて大きく露出しており袖が分離しているのが特徴的だ。腰から下は数冊の本を括りつけてスカート上にし、内側は必要最低限の装備となっている。加えてブーツも同様の色で攻め、頭上から二つに分かれた特徴的な魔女帽子も同様だ。

 ちなみにてゐは海賊風のキャプテンハットにサラシ、船長用の革コート装備だ。腰にはペングラムと呼ばれる魔法銃を装備している。


「……あれだな、魔女衣装を着ると別人だな」


 はい! とメンタは威勢よく答え、喉の調子を整えて返答する。


「そうじゃろそうじゃろ?」


 一瞬本気でメンタが発言したのか、と疑うレベルで違う声が出ており、てゐも霊夢も驚いて数回瞬きした。


「誰だマジで!?」

「腐腐腐、こういうことも出来るんですよ」


 自慢げにメンタは胸を張り、カーテンが開く音がする方に視線を向けた。


「おーい、そっちは着替え終わった――か?」


 見れば魔理沙たちが衣装室から出て、全員がコスプレを着こなしていた。


「魔理沙――あんたそれって」

「おう、アイジェンの衣装だぜ」 


 魔理沙が来ているのは全体的に黒を基調とした海賊風の衣装だ。コート、ブーツ、グローブも揃って革作りで黒光している。中に来ているV字シャツはオレンジ色のためか、若干義賊らしく見えなくもない。


「皆よく似合っているわね」


 その背後には紫がおり、此方は白と水色を基調としたロングドレスを着用している。手に持っているのはホワイトウッドで作った長めの杖だ。髪はウィッグを付けて地毛を隠し、顔も全体的に化粧を施して白くしている。


「おお! 紫さんはバッチリですね!」

「何かこういう姿されるとちゃんと賢者やってるって感じがするわね」

「清涼の風紀委員長ことテルサ様の衣装ですからね」


 普段の抜けている態度を表に出さなければこれ以上ない適役と言えるだろう。特に事情を知らない町人からすれば賢者らしくもみえよう。


「見違えました紫様」

「うんうん」

「藍さんの衣装は清励シェアリーズで橙のはベルセリャのヒロインことラフフィシェットの衣装です。超萌えです!」


 藍も同様に白い衣装だが髪はウィッグで紅色ポニーテイルであり、スカート丈も膝上10cm以上とかなり短めだ。胸も大きく強調するように作られているためか普段の藍からは見えない色気が出ている。そして黒ハイニーソとブーツのコンボも忘れて無く、絶対領域が眩しい。

 橙はベージュ色のウィッグにアホ毛をセットした髪型だ。衣装は紫のような白いロングドレスに青と黄色で整えた前掛けを首から下げている。


「へー……藍が母親ってのもありかしら?」

「霊夢~!」


 そう考えていると橙が霊夢に抱き着き、普段とはやや違う感触に戸惑いながらも受け止める。


「わっと! もぅ、橙ったら」


 続いてシンたちも着替えが終わり、別の場所で着替えていた枢と理事長も合流して各自の全く違う姿に眼を細めていた。


「待たせた」

「へぇ、衣装と髪型を弄るだけでこんなにも変わるのか」

「ほほう、眼福」

「あ、シンたちも来ましたね」

「うん。何か変な所とか無い?」


 シンも一応メンタの要望通りに仕上げてきたがコスプレするのは初めてのためか、あまり自信なさげな表情だ。


「大丈夫ですよ」


 メンタはそう言ってシンを安心させ、落ち着かせる。


「この衣装は?」

「ヴェルベットの弟のラウウィセット。歌の主」


 シンの衣装は腰から何本もスリットの入ったワンピース姿だ。色は白を基調として外線に水色を入れて目立たせている。本来なら肩と首が露出していなければいけないが、シンの事情も鑑みて今回はその上から大きめのロングケープを装着し、首を隠している。


「で、俺が何故か導師アルトリュス役に選ばれた」


 枢はその身長と体格からリーダー役である導師の役目を勝手に背負わされ、衣装も白衣にロングコート、白グローブに白ブーツと全身を白で詰められた服装を着せられている。白衣とコートには質素な装飾が施されており、首からは木製作りの民族的なお守りが垂れさがっている。髪はそのままで良かったため、後ろをアップしている。


「私はメルトキオ役というわけだ」


 理事長――晴明は導師の傍付き兼相談役のコスプレにさせられており、衣装は清涼委員会の制服である白いロングドレスに青と赤の毛であしらった肩当を装着している。これに加えて横に唾が広がっている学者のような白帽子を被り、左目には度の入っていないモノクルを装備して知的な雰囲気を醸し出している。


「あれ? それじゃリクローとオシュカー役は?」

「呼びましたかキラッ☆」


 待ってましたとばかりに紺とオレンジ色の和服を重ね着し、背中には巨大な刀を背負った霖之助が眼元でピースサインを作りながら登場した。


「お引き取り下さい」


 無論、誰得のためメンタたちは追い払うように手を振るった。


「初っ端から酷いですねぇ!!」

「来てあげたわ」

「おー、アリスがオシュカー役か」


 アリスも白いドレス姿ではあるが、スカート丈が短く、橙と同じ前掛けを付けている姿だ。腰にはレイピアを装着しており、髪型もさっぱりとしたショートヘアにしている。


「身長差的にはそうなっちゃいますからね」

「うむ、必然的に霖之助さんがリクロー役」

「まぁこう見えてもリクローは好みのキャラですからね。衣装も似たり寄ったりの所もありますし」


 元々和服もどきを着こなしている霖之助は役柄によく合っており、しかし普段の眼鏡は外してコンタクトをしている。そのおかげか一見したら霖之助だとは分からない。


「閃撃必当!」


 と、メンタが唐突に言うと、


「ゼロの型、春雨!」


 腰に装備していた模造刀二本を抜いて誰も居ない前方に刺突した。


「ノリノリだな」


 流石は新刊が出る度、一足先に読んでいるだけはあると魔理沙は思う。


「だけど、こっちはベルセリャで固めたってことは守矢勢はまさか――」


 てゐの懸念通り、着替えを終えた早苗たちがやってきた。


「呼びましたか?」

「ウホゥ! 皆さん凄くよく似合っていますね!」

「なんというクオリティ――っ」


 メンタとシンに手放しで褒められ、早苗はちょっと照れくさそうに頬をかいた。


「そ、そうでしょうか?」

「メンタ、これは対にしたのか?」


 早苗の衣装は枢よりも質素な導師衣装であり、髪型も同様のアップになっている。違いはブーツの毛の素材や色、黒のホットズボン、外套の背後に装飾された紋様、そして腰に装備されている儀礼用の木刀だ。


「イエス! 早苗さんの衣装はチェイルズオブゼステリャ・ジ・クロウズの主人公、シュレイの衣装です! ゼステリャはベルセリャの一つ前の作品で爆発的な人気を誇った作品です!」

「うんうん!」


 大ファンであるパルも思わず同意し、衣装室から出てきた諏訪子たちが早苗の方に寄っていく。

 神奈子の衣装は白をベースにして下部を薄ピンクで染めた羽織りと動きやすいスパッツスカートだ。背中には身長よりも長い槍を背負っている。


「ほえー、あの早苗ちゃんがこうも変わるとは。ちなみに私はアルイーシア役だ」

「意外なのだ。そして私はルゼ役だ!」


 諏訪子の方は赤に近い桃色の町娘の服装だ。動きやすさを重視されており、活発的な印象を前面に押し出している。


「パル姉はミクルオ役ですね!」


 そしてパルは通称メインヒロインとも呼ばれる精励の衣装だ。衣装自体は橙に近く、色は水色と群青色で強弱をつけている。髪の色も衣装に合わせて水色にしており、ショートカットで揃えている。


「パルにはどうしてもやって貰いたかったんです!」

「勿論オッケーだよ!」


 パルはノリノリだが、反面、霊夢はちょっと複雑な心境だ。


「……言っちゃアレだけど、思いっきり二分したわね」

「どういうことだ?」

「ゼステリャ・ジ・クロウズのキャラクターは、ベルセリャにとっては敵も同然なのよ」


 ゼステリャのキャラクターが清涼に味方するのに対し、ベルセリャは珈魔や下位賊の味方だ。時系列の関係上ぶつかり合うのことは無いが、設定上は敵同士となっている。

 勿論のこと、ゼステリャファンとベルセリャファンが対立する原因にもなっているし、一部過激派は徹底的な敵対姿勢を取っている。

 そんな説明をしている霊夢たちはさて置き、レミリアたちも衣装を着替え終えて出てきた。レミリアの衣装は薄黄色と薄橙色を基調としたワンピースドレスだ。手元には小さなぬいぐるみの付いた傘を持っている。

 フランは全身を犬の衣装で包み、はしゃいでいる。


「ふふん、こういうのも偶には良いわね」

「うん!」

「お二人ともよく似合っておりますよ」

「レミリア様はエドゥナ衣装でフラン様は犬ニン衣装ですね! 可愛い~」


 その背後にいる咲夜は、いつもなら絶対にしないだろうツンツンのロングヘアと入れ墨、上半身はサラシと黒革のジャケット、そしてやや太めのホットズホンとブーツという姿だ。


「咲夜さんは……まさか……」

「ザギーダよ」


 この二大シリーズには中立と呼ばれる存在がいる。精励もその一つであり物語を進める上では絶対に欠かせない存在だ。この中ではザギーダ、アイジェン、エドゥナ、犬ニンなどが挙げられ、どちらにも登場するキャラクターとして高い人気を誇っている。

 全体の時系列はベルセリャが先であり、ゼステリャは後の話となっており咲夜の姿はゼステリャバージョンとなっており、魔理沙はベルセリャ側、レミリアはゼステリャ側だ。フランは両方とも同じ姿なので省略する。


「ま、咲夜なら当然よね。――そういえば美鈴とパチェはどうしたの?」

「もう間もなく来ると思いますが――」


 噂をすれば何とやら、美鈴は衣装こそ清涼だが高身長を活かして槍をブンブン振り回しながら駆け寄って来る。


「じゃじゃーん! マルトゥラン衣装で登場!」

「あんまり落ち着かないけどね」


 パチュリーはやや露出度が高い紺色のワンピース姿だ。キャラクターはシャイモンと呼ばれる敵魔法使い。だが、肌の露出が多いため黒の半袖を着ている。


「その通り! そしてレリミアちゃんがこちら!」


 美鈴が横にずれると背後には亀の甲羅を背負ったレリミアの姿があった。


「トータストータス」

『……か、亀忍……っ!』


 先程、中立の立場もあると供述したがその中には商人も含まれる。特にこの亀忍の姿は両方の陣営が手を組み、涙して敬礼するほど大切にされる。


「亀忍。通称、お客様の笑顔のために定価で物資を供給してくれる都合の良い亀です。ストーリー上でもここぞという時にはボス戦前に必ずいてくれるお方です!」


 メンタがビシッと敬礼し、パルたちも揃って敬礼する。余談だが定価は普通と思うかもしれないが『魔物がいる中やボス前で商売するとなると定価では赤字なのです』と、亀忍談。


「レリミアは何故その衣装にしたの?」

「それは勿論売り子をするためよ。ね、皆」

「おう!」

「お嬢のために!」

「人肌脱ぐよ!」

「うむ!」


 いつもの四匹も揃って亀忍姿になっており結構違和感がある。だがそれを追求してはコスプレにならないのでメンタは口を噤んだ。


「全員色違いの亀忍って……ま、いいですけど」


 ゴーン、ゴーンと鐘が鳴り、もうじき開幕パレードの合図が辺りに鳴り響いた。


「おっ、そろそろ配置に付いた方が良さそうだな」

「私たちはブース内を巡回してるから!」


 フランと橙たちは会場を回ることをメインにし、


「私たちの方は西側のブースで礼舞ライブしていますので後で見に来てくださいね」


 早苗たちは来舞の予定を告げ、


「……絶対乱入してやるわ」


 霊夢とレミリアは含み嗤いをしていた。 


「では、行きましょう!」


 ともあれ、まずはコスプレイヤー集団が集うパレードに参加するため、メンタを先頭に待機位置に向かって行く。


 

 パレードは順調に進み、開会式を経て、メンタたちはブース内へと入って行く。観客も順を追って入って行き、ブース内はあっという間に騒がしさを増していく。

 数時間もすれば同人誌ブースにもお客の足が寄っていく。


「売れ行きはそこそこですね」


 メンタのブースにも多数のお客さんが来ており購入していく。コスプレの効果もあってかリピーターも来ている。


「いや、他と比較すると結構ヤバイ売り上げだぜ?」


 他はボチボチの客足と閑古鳥だ。これが初の開催とも考えればそれも仕方ないと割り切る人も多い。


「この調子であれば午前中には全部売れますね」

「だな」


 てゐが頷くと同時くらいにスキマが開く。


「メンタ――っ!」


 紫が血相抱えて飛び込んできて、二人は左右に飛び退いて避ける。


「う、うわぁ!? どうしましたか紫さん!」

「ちょっとこれ見て!」


 バッ、とスキマから取り出した紙を顔面に押し付けられ、メンタは紙を引き剥がして内容を吟味する。


「こ、これは……」


 ――売上げ総評――

 1位 紅魔の館     3800部

 2位 フルーツ・レイン 3300部

 3位 椛新聞      2200部


 メンタは思わず額に手を当て、高笑いする。


「HAHAHA! HAHAHA!!」


 カタカタと壊れた笑いにてゐが肩を揺すって気つけする。


「しっかりしろメンタ! まだ試合は終わってねぇぜ!」

「そうよ! こうなりゃやっておしまい!」


 何を、と問う必要は無い。メンタもハッと気を持ち直して紫に聞き返した。


「え、良いんですか?」


 頷き、切実な表情で告げた。


「このままだと紅魔に売り上げを取られて借金が返せないの!」

「……ちなみにその借金って何処のですか?」


 紫は言い辛そうにしつつも西の方を見て答えた。


「……守矢」

「誰からでしょうか?」

「スルトの奴」

「返せないとどうなりますか?」

「藍と橙を身売りしなくちゃならないわ」


 自分と言わない所にメンタたちはニヤリと笑った。その脳裏には藍と橙が親子丼されて食べられる寸前の絵が出来上がっていた。


「次の同人誌ネタには丁度いいな」

「ですね」

「冗談無しにやって頂戴!」


 実に切羽詰まった表情でメンタを促し、


「イエス! 責任は取りませんけどね! 能力発動!」

「私もやるぜ!」


 右手を翳すとメンタを中心に何かが発せられ、てゐもメンタに能力を付与する。


「闇の炎に抱かれて消えろ!」

「オスはオス、メスはメス。開け、新世界の扉DES!」


 一瞬、シーンと静寂が辺りを包み、


『ヒャッハァァ――――――――ッ!!』


 と、バイキングのような声を上げて老若男女がメンタの店へと押しかけてきた。その眼はハイライトを失っており狂気を宿して走って来る。


「うわっ! ちょ、お客さん多いですよ!」

「私の能力は『人間に幸運を与える程度』だからな。メンタは人間だし効果抜群だぜ」


 効果 は 抜群 の ようだ。


 てゐの能力は一時的に人間が持つ『幸運』――具体的には周囲の乱数を強制的に上限値まで引き上げる――を上昇させることが出来る。

 メンタの能力、脳を操る程度と組み合わせればより強力な力となって広がることが出来る。


「言ってないで追加持って来て下さい!」

「あいよ!」


 二人でお客を捌くことが出来るか、と言われれば可能だ。ただ人数が人数のため時間だけはかかる。メンタが売り子をして、てゐが裏方で段ボールを開けて荷出しを担当していた。


「……はー……使い方がアレだけど凄いわね」


 ――普段ろくなことしない二人だけど、こういうところはありがたいのよね。しかしこのお客さんの入りを考えれば……ふふふふふ腐腐腐!

 その思考をメンタは読む。

 ――紫さんの思考が手に取るように分かってしまう悲しさ。まあ、今使っているのは脳を操る程度の能力のほうですが、オレがまだあまり使ったことのない何かを腐らせる程度の能力も合わせて使えば、お客さんなんていくらでも増やせるんですけどそれはオレの腐学に反しますし、…………黙っておきましょう。

 果たして、それは学となりえるのだろうか。


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