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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
79/119

第七十二話 らりるれろ! らりるれろ!

グラたん「第七十二話です!」


 その果てにはスルトと早苗がいた。


「むっ……この気配は――」

「……ぷいっ」


 魔理沙の意識はもうあまりなく、二人を進路上の障害物程度の認識しかしていない。


「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」


 正面に魔法陣を張り、得意だったマスタースパークを模した雷撃を発射する。


「早苗!」

「へっ?」


 スルトはこれを好機と早苗の体を引き寄せて絶対防御発動させる。術式は一瞬だけ拮抗し、弾かれる。

 当の早苗はスルトの急な行動に驚きつつも怒った口調で視線を上げた。


「ひゃっ!? 何ですか急に!?」

「妖怪のようだ。ここで迎撃する」


 真面目な視線で妖怪を見ると確かに強そうな妖怪ではある。しかしスルトの絶対防御があるからか不機嫌のままにそっぽ向いた。


「……ぷい」


 事態が事態であり能力制限を食らっている以上、早苗の力を借りたいスルトは結局最後の手段に訴えた。


「……後で何か一つ言うことを聞こう。それで許してほしい」

「そ、そっ、そんなことで許して貰えると、お、思っているのですかっ」


 早苗は非常に動揺し、しかし言葉で否定しても節々は喜んでしまっていた。スルトの『何でも』は文字通り何でもであり、デート、結婚、世界一周、巨万の富、不老不死まで可能である。

 さてどうしてくれましょうか、と考えていると妖怪は無粋にも突撃を敢行してきた。


「ウガアアアアアアア!!」

「光の束縛!」


 スルトは妖怪の足と膝目掛けて拘束魔法を発動し、妖怪は無様にも前方に倒れた。しかしこれ以上はスルトには出来ないためそこらに隠れているだろう馬鹿者たちに対して叫んだ。


「――説教は後でするから今は手伝え! 神奈子、諏訪子!」


 妖怪が見えた所で出ようかどうか迷っていた諏訪子たちだが、ここで都合よく登場しても覗いていたことがバレて後で痛い目を見るのが分かっていたため少し様子を見ていたのだが予想に反して既にバレていたことに諏訪子たちは驚いた。


「バレてるぅぅ!?」

「言ってる場合じゃないよ! オンバシラ!」


 出て来いと許可が出たところで神奈子が御柱を構え、妖怪に向けて発射する。

 オンバシラは光弾を単発、連発、濃縮することが出来、今回は4本同時の濃縮ビーム射撃を選択していた。その理由は単純に妖怪は光による貫通攻撃に弱いからだ。


「ああああああああ!!」


 四肢を貫かれて妖怪は悲鳴を上げ、光の束縛も効力を失って消える。


「人型に近いほど妖怪ってのは強いからね! 全力で行くよ!」

「あいさ! 黒鉄大剣!」


 続いて諏訪子が両手に鉄の大剣を生成して前線に躍り出て、下段からX字に切り上げて渾身の振り下ろしで派手に体積を削っていく。


「グガアアアアアアアアアアアア!!」


 叫びと共に妖怪は振り切るようにして走りだし、諏訪子が与えた傷も肉体が蠢くようにして再生していく。  

 ――上位妖怪クラスですね。向かう先は町、でしょうか?

 メンタは瞬時にそう判断し、押しとどめることを選択した。


「させませんよ! シャイトゥーン・フォルフェクス起動! 紅蓮桜花ヘヴンズ・ヴェウィリーズ!!」


 武装を装備し、大ばさみをクロスさせて構えたまま背面のブーストを最大にして突撃し、力任せに妖怪を正面から押し返していく。

 その隙にシンが召喚符を上空に投げ、萃香、勇儀も前線へと走り出す。


「式神召喚、行く」

「おっしゃぁ!」

「人間を守るなんて不思議な気分だけど」

「フォッホッホ」

「案外悪くないわ!」

「手伝うよ、メンタ!」

「力比べなら負けねぇぜ!」


 萃香と勇儀が押し込みに加わったことにより妖怪の態勢が崩れ、背中から倒れて仰向けになる。


「行きます!」

「押して参る!」


 これを好機と椛が身の丈に合わない大刀を片手で持ち、左手には丸い盾を構えて飛びかかった。射命丸も烏の両翼を広げ、椛の斬撃が終わるのを見越して上空から羽による連続射撃を見舞う。


「咲夜、援護しなさい」

「はい、お嬢様」


 レミリアの声に合わせて咲夜が時間を停止させる程度の能力を使って妖怪の動きを一時的に止める。その合間にレミリアは悪魔のような両翼をはためかせて上空に上がり魔力に物を言わせた全長7m直径1mはあろう巨大な槍、グングニルを生成して振り下ろした。

 咲夜の時間停止は、停止したままだと傷付かない一種の無敵状態のため、振り下ろされた段階で能力を解除し、代わりにナイフを妖怪の影に向かって投擲する。これはチェイルズシリーズを読んで会得した『影止め』という技だ。

 影止めが上手く決まり、妖怪は身動きが取れないままグングニルの直撃を許した。


「ウガアアアアアアア!!」


 ――おいコラ待て!! 過剰! 明らかに過剰だから!!

 魔理沙の内心の叫びは届くことは無い。

 全員で押し込んでいる様子を見ていた早苗は自分も前線に出ようと一歩踏み出した。


「相手は人型……なら――」


 続く言葉はスルトの手と言葉に遮られた。


「早苗、神降ろしは使うな」

「何故でしょうか?」

「今朝方に後遺症が出たばかりなのに無理する必要は無い。それにこれだけの面子がいれば早々負けはせん」


 前線で戦いたいと思ったのは先程の挽回をしたかったからであり、スルトの言い分の方が正しいことは分かっているため数秒葛藤し、今回は諦めることにした。


「……そうですね。早計でした」

「良い。術式で援護するぞ」

「はい!」


 前線に出られなくても拘束、妨害、支援は出来、早苗にとっては攻撃よりも搦め手の方が使いやすい術式でもある。

 スルトも先端に深紅の宝石が填まっている装飾豪華な長杖を空間から取り出し、前線で戦っているメンタたちに向けた。


攻撃力増大魔法アタック・エンハンス威力上昇魔法ブースト・エンハンス瞬間威力増大魔法エス・パーチング身体能力向上魔法フィジカル・エンハンス身体能力活性化魔法フィジカル・フィジックス攻撃速度上昇魔法コンバット・プロモーション移動速度上昇魔法スピード・エンハンス筋力増大魔法プラーナ・エンハンス単体攻撃特攻魔法アイン・ブーステッド属性攻撃強化魔法エスカトル・エンハンス味方行軍強化魔法エル・オール・エンハンス味方範囲強化魔法エル・フィジカル・エンハンス――――」


 メンタたちは立て続けに強化され、


「術式解放! 妨害します!」


 早苗の得意術式である拘束と移動阻害を付与され、妖怪の動きが鈍くなる。

 これ見よがしにメンタたちの攻撃は苛烈を極め、妖怪の再生も追いつかなくなっていく。


「ウガアアアアアアア!!」


 ――痛い痛い痛い! 容赦なさすぎだろ畜生!

 メンタから斬撃と砲弾を直撃させられ、入れ替わるようにして萃香と勇儀が素手で殴る蹴るでコンボを決めてくる。


「ったく、無駄に体力あるね」

「その上再生能力持ちと来た」

「二度と生き返らないようバラッバラに引き裂くしかありませんね。チョキチョキチョッキンわくわくタイムDES!」


 鋏を開閉して鳴らし、それを見て魔理沙も死を覚悟する。

 ――……ここまでだな。ま、こいつらに討たれるならそれでも良いか。

 それが運命なら――と受け止めかけたところで上空から魅魔が突撃してきた。


「ちょっと待てぇぇえええええ!!」


 地面に激突し、メンタたちは後方に跳躍して砂煙を躱す。


「魅魔、突然どうしたの?」

「げほっ、げほっ……くぅ、久々に全力で飛ばしたぜ……」

「さっさと用件言ってくれますかね? こっちは血に飢えてるんですよ! 早くしないと早苗さんが『諏訪子様が育てた蛙の姿焼き美味ェ!』ってなるです!!」

「私!?」

「早苗ちゃん酷いのだぁ!?」

「そうだそうだ! そこの妖怪のモツで一杯やるんだ! 師匠が!」


 てゐは、永琳がここにはいないと判断してそう言ったのだが不運なことに背後には妖気を感じて駆けつけた永琳の姿があった。


「ふふふ。ねぇ、てゐ。兎は何故空を飛ぶのだと思いますか?」


 ゾクリ、と全身の毛が逆立つと共に前方に跳躍するが、時遅くその頭部は鋼鉄の片手アイアンクローに掴まれていた。


「アガガガガ! 兎は空を飛ばな――」

「私を怒らせたからです!!」


 砲丸投げの要領で体を半回転させ、プロも唸るフォームで投げ、およそマッハ1の速さでてゐは何処かに飛んでいく。

 それはさておき。


「スルトならもう気付いてんだろ?」


 呼吸を整えた魅魔はまずスルトに視線を向けた。


「如何にも」

「どういうことですか?」

「どうも何も、その妖怪は魔理沙だろう?」


 推理、直感、魔力、予知等々の言い訳はあるが気付いていたことに変わりは無く、妖怪を魔理沙だと言われて各々驚愕した。


『ふぁっ!?』

「てめっ、分かってんなら討伐しようとするな!」


 スルトはククク、と笑って告げる。


「ノリだ」

「こんのクソ快楽主義者ァァ!!」


 魅魔の咆哮と同時くらいに上空から後を追いかけてきた霊夢の姿が見えた。


「見つけたっ。滅符「龍岩堕落」」


 スペルカード発動し、巨大な岩石を模した弾幕を魔理沙に向けて落とす。


「ちっ! 霊夢か!」


 それを魅魔が放射のスペルカードで迎撃して爆散させる。霊夢はそのまま下降して着地し、据わった目で魔理沙だけを睨んでいた。


「……失敗できない、失敗できないのよ。妖怪は殺す。殺して、解決しないと……次は無い。負けられない。事変を解決出来なかったら生きてる意味はない……」

「待ってください、霊夢さん! この妖怪は魔力暴走した魔理沙さんです!」


 自分を追い詰めている霊夢に対してメンタは説得を試みるが、聞こえてないのか次の弾幕を手にした。


「龍符「破光魔砲刃」」


 両手から光と魔力を合成したビーム砲撃が魔理沙に向かい、直撃して貫通する。


「ガアアアアアアアアアアアアアアア!」


 魔理沙も攻撃した霊夢を睨んで跳躍し、叩き潰そうと拳を振り下ろした。霊夢も後方に跳躍して躱し、ホーミングアミュレットを取り出して牽制する。

 その間にメンタたちは一か所に固まって現在の状況を確認していた。


「会話を聞く限り、状況をまとめますと何らかの精神影響が原因で魔理沙さんが魔力暴走を引き起こして妖怪になってしまい、霊夢さんは昨日の失敗が精神に異常を来して惰性のようになってしまった、ということですね」

「あの二人って思いこむと酷いからね」

「はた迷惑なのだ~」


 霊夢はプライドから、魔理沙は劣等感から思い込むタイプなので結構質が悪い。


「それで、どうするの? 一応、あれが魔理沙だとしても妖怪が町に出現した以上はちょっとした事変よ。討伐しなければ町に被害が出るかもしれない、けど、あのまま放置していれば多分霊夢が殺すわ」


 レミリアが視線を向ける先では相変わらず魔理沙が不利なまま戦闘が続いており討伐されるのは時間の問題だろう。


「うむ。各自、己が心に従い諾否を決定せよ」

「ちなみにスルトさんは?」


 無論、と一度首肯し腕を組んで答えた。


「早苗とのデートを邪魔されたから討伐しておきたい」

『超私怨だ!!』


 腹いせ半分冗談半分の笑みに全員が突っ込み、続いてメンタに話しを振った。


「メンタは?」

「オレは生け捕りですね。この面子が協力すれば不可能ではないと思います。魔力が暴走しているというのならその原因を取り除けば元に戻るはずです」


 霊夢が討伐すれば今度は魔理沙を殺した後悔から余計酷く落ち込むだろうし、一応二人には拾って貰ったり魔法や戦闘技術を教えて貰った恩があるのでそれを返そうとメンタは思う。

 次にフールエンリルたちがメンタの意見に肯定し、シンを見た。


「こういう時の冴えは本当に役立つわね」

「普段が普段じゃからのぅ」

「俺たちァ、シンに従うぜ」

「どうするの?」

「霊夢と魔理沙には色々恩がある。メンタ同様に生け捕りが良いと思う」

「おう、分かった」


 残るはレミリアたち、早苗たちと椛たちだ。萃香と勇儀は既にやる気満タンで酒盛りをしている。


「神奈子様と諏訪子様は如何なされますか?」

「生け捕りに一票」

「だね~。早苗ちゃんは?」

「私も同様です」


 では残りは問答する必要もないだろうと思った矢先、射命丸がカメラを構えて場の空気を軽くしようとジョークを口にする。


「断固討伐! 妖怪死すべし!」

「あ、烏の妖怪発見ヒャッハー!」


 突っ込むのは椛。射命丸の背中に火を付けて叫ばせる。


「ウギャァァアアアア!!」


 近くの湖に高速移動する合間に咲夜はレミリアに確認を取る。


「お嬢様は如何なされますか?」

「愚問ね。町中に入ろうとしたらグングニルをぶつけて終わらせる」

「畏まりました」


 現在の最も危険な状態は暴走中の魔理沙と霊夢が町中へ入ることだ。祭りの喧騒が大きいためここらの騒動は見向きもされていないため、レミリアは知らぬ間に終わらせる心積りだ。


「生け捕りにするならまずは霊夢を止めないといけないわね。まずは精神から攻撃しましょう」


 ひょっこりとスキマで現れた紫がメンタを促した。


「オレの出番ですね!」

「はい。その後、霊夢を捕縛して抑え、同時に魔理沙も捕獲します。魔力暴走が原因なら充分に発散させれば良いと思います」

「――十分に発散……」

「ふふん、なるほどね」

「つまりは――」

「ストレスを解消させれば良いのね」


 ストレスの解消方法は色々とある。特にくすぐることや笑う事、触手、蝋燭、水攻め、針治療などなどがある。


「……神奈子様たち四人は霊夢さんの方を担当して下さい」


 その邪な考えを表情から読み取った早苗が霊夢の方を指差して告げた。


「何故ですか! 決してやましいことなど200%くらいしか考えてませんよ!」


 100でもダメなのに200%で何故許可されると思ったのか。


「アウトです」


 紫が一度咳払いをして場を整えると全員の表情が引き締まり、それを見て号令を下した。


「各自、迅速に事態収拾に勤めてください」

『はい!』

「霊夢さんの足止めします!」


 まずは霊夢の行動をとめるべくメンタ、諏訪子、神奈子、射命丸、レミリア、咲夜が正面、側面、背後を囲んで各々の持てる攻撃を叩き込んだ。


「超電磁砲!」

「黒鉄大砲、発射!」

「リボンズキャノン!」

「ウインドブラスト!」

「四連グングニル!」

「ミスティックナイフ!」


 顔面、胴体、四肢に爆撃の如く弾幕を食らい、霊夢も攻撃に気付いて避けようとするが速度重視の攻撃を一瞬で判断して躱せるわけもない。


「ガフッ!?」

『あっ…………』


 まさか諸に直撃をするとは思っていなかった様子でメンタたちは唖然とした。普段の霊夢なら五射同時でも一、二発当たれば御の字だからこの結果は予想外だった。

 早苗、スルト、椛、レミリア、シンたちは霊夢が倒されたのを見て拘束術式から攻撃術式へ弾幕を変更する。


「あれが魔理沙さん……」

「気後れしたのなら後は俺がやろう」

「いえ! やります!」


 ――嵩都さんに良い所見せるチャンス!

 デート中ではあまり良い結果を残せなかったためせめてこの場くらいは良い所を見せようと早苗はトドメをスルトに任せることにして拘束と移動阻害の術式を手に持った。


「うおおおおお! 熱血ドロップキッ――クっ!!」


 何処かに飛んで行ったてゐがようやく戻って来て、そのまま跳躍し、魔理沙の顔面に蹴りが炸裂した。その足元には早苗の放った移動阻害が展開されている。

 続いて永琳が距離を詰め、弓矢ではなく普段のストレスを発散するかのように素手で飛びかかった。


「月光体術奥義、月狼!!」


 右、左、右、左と計6回のデンプシーロールから蹴り上げ、蹴りの三段突きを食らわせて最後にムーンサルトを決めて後方へ跳躍してフールエンリルたちと入れ替わる。


「八つ裂きにしてやるぜ! グロウズ・クロー!!」


 十全にパワーアップした状態で振り下ろし、掴み裂き、両手突き刺しと両手の爪による高速の斬撃を繰り出し、鋭い斬撃跡が体に刻まれる。そして肩をぶつけて魔理沙を押し倒し、その胴体を蹴って前方に跳躍する。


「これでも食らいなさい! パラライズ・スクエア!!」


 次にインアンドセクトがその上に立って両手の大鎌による斬り上げ斬り降ろしの四連撃を繰り出し、左から右へ体ごと薙ぎを繰り出して右へ転がる。


「コッソリやった修行の成果を見せてやろうぞ! 大爆撃!!」


 その背後からガシャポンドクロが第三形態に変身してシンが回した大量ガシャポンを両手に持ち、プラグから大気の魔力を吸収して強化し、放つ。

 小規模の集中爆撃が魔理沙に被弾し、数発を視界にぶつけて眼を眩ませる。


「この高速機動に付いて来れるかしら。ザース・リペイン!!」


 強化状態のフールエンリルの血を吸い、高速機動でバインパイアが上空から距離を詰め、マッハ2の速度を乗せた踏みつけを顔面にお見舞いする。


「術符解放。魔理沙は大事な友達、止めて見せる! アルマ・アニマ!」


 四匹が作った攻撃の合間にシンが空気圧縮と内部爆撃、バックドラフト現象をもって作った直径8mの極大の火球をバインパイアが退くと同時に振り下ろした。


「ギュアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 全身を焦がされて魔理沙は叫び、その側面から両翼を広げた椛が迫る。 


「せめて活躍くらいします! この斬撃で眠れ、ダイヤモンド・スコールラッシュ!!」


 氷を剣に纏わせて下段から素早く二連撃で斬りつけ、右から左へ五回の刺突を繰り出す。最後に大きく後方に跳躍し、大刀を肩に構えて再突撃して渾身の振り下ろしを見舞う。最後に左手に溜めていた冷気弾を後方跳躍しながら駄目押しで繰り出して下がる。


「神降ろしは出来ないけどやるだけやってみます。拘束術式発動!」


 隙を見ていた早苗が術式を発動させ、地面から鎖が伸びて魔理沙に絡みつく――ただし魔理沙はもう息絶え絶えであり痛みも感じなくなってきていた。

 ――し、死ぬ……。こ、こいつら、殺す気だ……。


「スルトさん!」


 まだ来るのか、と魔理沙は早苗が上を見ていたので視線だけ追うと、レミリアのグングニルの30倍はあろう威力と紫電を纏った巨大な槍が8本宙に浮いていた。


「トドメだ――神王の紫電槍(ゼウスロー)


 フハハハハハハハ! とスルトが高笑いし、紫電の槍が降り注いで魔理沙を貫いていく。加えて放電し、雷属性ダメージが妖魔となった魔理沙を蝕んでいく。


「アバババババッ! アバババババッ! らりるれろ! らりるれろ!」

「馬鹿野郎共ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」


 炭となった魔理沙が倒れ、魅魔が頭を抱えて叫んだ。


「てへっ、やっちゃったぜ☆!」 


 ゴメンネ、とてゐがペロッと舌を出して謝り、魅魔はペンチを取り出してその舌を引っこ抜こうと掴んだ。


「やっちゃったじゃねぇよ!? 霊夢も魔理沙も瀕死になってるぞ!」

「はい、治療しますね」


 緊急手術セットをとりだした永琳が霊夢と魔理沙を一か所に固め、右手逆手持ちでメスを持ち――(略)。  


「とりあえず、魔理沙さんの状態を何とかする必要がありますね」


 霊夢が治療されている間にまずは魔理沙の容体を何とかしないといけない。先の総攻撃によって魔力暴走はだいぶ収まっており、魔理沙らしき炭の面影が見える。


「そうだねぇ……とりあえず一言言わせて欲しい。――魔理沙は意外と胸ある!」


 メンタ、シン、てゐが一斉に右目スカウターを起動し、胸部戦闘力を図る。

 79という戦闘力にメンタは両手を開いて飛びかかった。


「モギトリマス!」

「捥いでもどうせ分からねぇだろ!」


 メンタとてゐの背中をシンが掴み、下がらせる。


「あれらはさて置き。メンタ、やってください」


 紫が指示を出し、ある程度の記憶調整をメンタは理解して能力を発動させた。


「イエス! 能力発動!」


 6秒くらいすれば調整は終わり、キラッと白い歯を見せて親指を立てた。


「終わりました!」

「速いな!」

「精神系統の修行は色んな人でやってましたから!」


 そう、例えば陰陽生、町の人、里の人、妖怪、野生の獣、霊夢、魔理沙エトセトラ……犠牲者は多い。


「次に魔力の放出だけれど……これはスルトさんが適任でしょう」

「うむ。奪うのは簡単だからな」


 ハッ!? とメンタはここぞとばかりに突っ込む。


「う、奪う!? まさかこんな公衆の面前で、ですか!?」

「露骨にエロイぜ!」


 素早く三脚とカメラを起動し、光熱術式でアップライトを再現して見せる。


「何を勘違いしているのかは知らないが――」

「スルトさん何考えているんですか! 厭らしい!」


 思わぬ飛び火に早苗は距離を取り、スルトは眼を見開いた。


「早苗、誤解だ。俺はそんなこと――」


 して貰う、と諏訪子がスルトを背を押そうと背後に回った。


「手が滑ったぁぁぁぁ!」

「チェンジ」

「へっ?」


 それを先読みし、諏訪子の足を引っかけて正面にいた魔理沙を押し倒すさせる。


「ぐむっ!」

「す、スクープ! 大スクープ!!」

「明日の朝刊は守矢の一柱が町外れで少女を押し倒す! これで決まりです!」


 男女関係の騒動はネタになり、それが神ともなれば号外が出てもおかしくはない。ブンヤ烏二匹はヒャッハーと喜び勇んでカメラのシャッターを押した。


「なっ! 止めるのだ!」

「さて、そんなことより」

「そんなこと!? 私の信仰が消えるかどうかの瀬戸際だっていうのに!?」


 紫の殺生な言葉に諏訪子は大抗議するが、どこ吹く風。


「スルトさん、やってください」

「うむ。――吸収」


 右手に魔力吸収魔法の魔法陣を起動させ、魔理沙から大部分の魔力を吸い取り、大気中に霧散させる。するとやや不格好だった魔理沙の体が元に戻り、炭の中から全裸状態の魔理沙の姿が現れた。精神的ダメージこそあっても大きな怪我はないようだ。


「おおっ! 見事に戻りましたね!」

「全く、妖怪になるほど悩むことかよ……」


 魅魔の呟きに耳聡く聞いたメンタは聞き返した。


「どういうことですか?」

「実は――」


 事情説明はどうせするつもりだったため、魅魔は最初から事の顛末を説明し始めた。

 数分もすれば全員が納得し、特にメンタは深く納得した。


「あー……そういうことでしたか」

「こうなった以上しょうがない。えっと、メンタだったな」

「はい」


 くいっ、と親指を魔理沙に向ける。


「ちょっと魔理沙の手足抑えてろ」

「イエッサーです!」

「おっしゃ! 任せろ!」


 次いで、てゐも協力して手足を抑え、魅魔は小瓶のキャップを外して魔理沙の口を片手で開かせて喉にねじ込んだ。


「オラオラ飲め飲め!」

「げふっ、げふっ!」


 びくんびくん、と二度、三度ほど痙攣を起こすが液体を飲み干し終えると小瓶を抜いて無造作にポケットに詰めた。飲ませたのは長寿薬の方であり、カメムシをすりおろしたような臭いと僅かな薬品の香りが周囲に立ち込める。

 臭いと射命丸と椛が羽をはためかせて臭いを飛ばし、さて味はというと……先日理事長が飲んだユニコーンの角に近い味だ。若干チョコレート味なのも相まって天災的な不味さになっている。


「もう良さそうだな。して、紫よ」


 スルトが紫を少々キツイ視線で睨み、紫も分かっているように頷いた。


「はい」

「霊夢にしばらく休暇を与えた方が良い。精神的にも追い詰め過ぎている」

「そうですね……まさかここまでとは思いませんでした」

「うむ」


 紫が聡明であることはスルトも知っているためこれ以上の追撃はせず、一転して不敵な笑みを浮かべて振り返った。


「さて、諸君。わざわざ覗き見をし、更には色々やってくれたことに俺としても相応のお礼が必要だと思うのだが……どうだろうか?」


 そういえば――と早苗も今更ながら思い出した。


『要りません!』


 と、メンタたちは言うがスルトは既に強制転移魔法陣を起動させており、わざわざのぞき見していた全員に光の束縛を付与していた。余談だがそこに咲夜の姿は無く、この展開を予想していたため現在は守矢神社に戻っていた。


「ハハハ、遠慮することはない。しばらく海水浴を楽しんでくると良い」

「やっ! ちょっと待って! 何をする気なのだ――!」


 緑色の輝きと共にメンタたちの姿が消え、一つ溜息を吐いた。


「紫、後は任せるぞ」

「ええ」


 紫も治療を終えた二人をスキマで運び、博麗神社に連れて行く。

 残ったのはスルトと早苗だけであり、横目で早苗を見ると機嫌も直っているらしく『後は早苗を引き立てておくか』と考えて微笑しつつ振り返った。


「さてと、デートの続きと行こうか」


 手を差し出し、早苗も嬉しそうに笑みを浮かべて手を繋いだ。


「はいっ!」


 時刻は昼頃を過ぎており、きゅるる、と早苗のお腹が鳴った。

 この後スルトがまた噴いてしまい、早苗が怒ったのは言うまでもないだろう。


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