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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
58/119

第五十二話 紅に染まるダウト・前編

グラたん「本日は二話投稿しています! 第五十二話です!」

メンタ「ダウトしましょう!」

グラたん「イエェェイ!」

てゐ「オゥオ、オゥオ!」

※夜のテンション入ってます※


 紅魔館の夜と言えば大体皆予想が付くだろう。

 闘技大会も終わり、シンと理事長の命の安全も保障された所でメンタたちはここぞとばかりに第二会ゲーム大会を企画したのだった。

 現在は居間にメンタ、てゐ、霊夢、魔理沙、咲夜、永琳、藍、妖夢、早苗という面々で揃っていた。


「ダウトやりましょう!」

「おー!」


 馬鹿二人の宣言を聞いて他は全員立ち上がって退出を決意した。


「勝手にやってなさい」

「お前等が宣言するとロクなことにならないからな」


 そう言いつつも霊夢と魔理沙はこの後の展開を予想してお湯を作り始め、


「全くです」

「ええ。その通りです」


 咲夜もそれを手伝いつつすぐに逃げられるように待機する。


「それに此方は此方で楽しみますので」

「咲夜さんから事前に聞いてますのでパスしますね」

「すみません」


 妖夢と早苗は心から逃走を決意しておりスタスタと出口へと向かった。

 当然の如くメンタが先回りして扉に手をかけて開け放った。


「そういうと思いまして対策はしてあるんですよ! さあどうぞお入りください!」

「やりましょうか」

「やるー!」

「うん!」

「やれやれ」 


 まずは紅魔館勢。レミリア、フラン、パル、パチュリーと、美鈴を除いた全員が呼ばれており、その美鈴はメンタからの心温まる夕食を渡されて満足し、今は門の前でぐっすりと寝ている。


「楽しくなりそうですね」


 次いで入って来たのは紫だ。


「げぇ!?」

「もぉぉ――――っ!!」


 紫がいるということは霊夢も藍も逃げられないことを意味し、藍は牛の如く猛った。


「さぁさぁ妖夢もやりましょう」


 その後には幽々子がおり、逃げようとしていた妖夢を抱きかかえて入って来る。


「こんちくしょ――っ!」


 妖夢は手足をバタつかせて抵抗するが幽々子相手に本気を出すことは出来ないためほとほとして大人しくなった。


「嘘ですよね……?」


 早苗の前にいるのは守矢の二大神様。


「へへへ~」

「ワキュワキュ」


 その顔は面白がっている顔であり、手は滑らか過ぎるくらいに嫌らしく蠢いていた。


「くぅぅ……この駄女神様方!」

「ゲフッ」

「ごぶっ」


 早苗の一喝に神奈子と諏訪子は血を吐いて膝を付いた。


「あ、あの、永琳も、やろ?」

「ううっ……やらないと盗撮した写真見せるって言われました……」


 永琳の前にはおどおどした輝夜とイナバもおり、その手にはてゐの手によって盗撮された二人の下着及び湯気さんが活躍している写真が多数握られていた。


「卑劣なっ!」

「ゲェヘヘヘヘヘ!!」


 てゐの悪い顔を永琳は掴み、そのまま床に叩きつけかけて粉砕する。無論、その程度はいつものことなのでダメージの無いてゐは下半身だけを動かしてメンタにヘルプを求めた。


「来た」

「何故俺まで……」

「偶には息抜きも必要だろう」


 次いで陰陽師院からはシン、枢、晴明の三人が到着しており、その後ろからはスルトと霖之助もついてきていた。


「諦めも肝心だ」

「嫌な予感しかしません……」


 メンタは手早く椅子を用意し、咲夜は溜息と共に居間の空間を拡張してテーブルセッティングを済ませた。


「さぁさぁ狂ったようにやりましょうか!」

「やるのはダウトだっけ?」

「はい! 脱衣ダウトです!」 


 これがただのダウトであれば早苗たちも諦めて参加しただろう。


「嫌です!」

「俺たちもいるんだぞ!?」


 主に男性陣が大抗議した。確かにこの美少女美女とそんなことが出来れば夢のようだが、理性ある現実の血生臭い光景の方が幻視出来た。


「てゐ! パチュリーさん!」

「あいよ!」

「しょうがないわね!」


 パチュリーも今回の企画に一枚噛んでおり、指を鳴らすと強制的に扉が閉まり全員の退路が断たれる。加えて部屋の中を破壊されても良いように時限式の復元魔法を展開する。


「しまった!」

「ここから出たければ脱いで貰いましょうかねぇぇ!」

「なぁに、勝てば良いのよ」

「ええ、そうですね」


 幽々子も紫も扇を開いて口元を隠しつつ不気味に笑う。


「このダメ主人共!!」


 妖夢の叫びはきっと従者たちの心の中を代弁していた。

 そうして一悶着も終わり、彼女たちは諦めてメンタと持って来たホワイトボードに注目した。


「ではではルールを説明していきましょう! まず、全員能力禁止です! この前はパル姉のせいで散々なことになりましたからね!」

「ボクが悪いの!?」


 主にラスト一回前のパルの能力使用でメンタとてゐは非常に痛い思いをしており、今回はそうならないように単純な実力勝負にしようと考えた。


「次にペアについてです! このゲームではくじ引きで二人組になって貰い、主人と従者の役割に分かれて貰います。主人はゲームに参加し、従者は主人が勝てば他の従者を脱がせることが出来ます。しかし従者は『嫌がる』ことが出来ます。主人が認めた場合のみ、主人が脱意することで従者の服は守られます! 分かっていると思いますが負けたら自分が脱ぎます!」

『ヒャッハー!』


 てゐと主人勢が手を高く上げていつの間にか用意されていた酒瓶を片手にノリ良く叫んだ。


「そして一回毎に勝者は一人のみです。このゲームは数が少なくなればなるほど相手の手札も分かってしまうので必要だと思いました」

「……でもそれですと脱がせられるのは一人のみになってしまいますよ?」


 ルールを見た藍が疑問を投げるとメンタは不敵に笑った。


「ニヤリ。ところがギッチョン! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 長く続けるためにも脱がせられるのは一枚のみです!」


 男性陣の服装は上下と下着のみであり最大でも3回で決着が付く計算になり、女性陣は人によって違うが、多くても6回程度で全裸待機を余儀なくされる。


「ちょっと待ってください! まさかとは思いますが下着はどうなるのですか!?」


 早苗の猛抗議にメンタは激しく頷いた。


「負けたら脱ぐんです! このゲームは誰か一人を全裸にするまで終わりません! 言い忘れていましたが手札が20枚を超えたらドボンです!」

「ドボン?」


 聞きなれない言葉を輝夜が聞き返し、メンタは問いに答えた。


「強制的にアウト、という意味です。あまりにも手札が多いと消化しきれませんし、ダウトの回数が多くなってしまい白けますので。勿論、アウト=脱衣です!」

「なるほど」


 それが適用されるならと永琳は男性陣を一瞥した。


「なら……全員で男性陣を指名しましょう」

「気の毒ですが、ここを乗り切るにはそれしかありませんね」


 妖夢も首肯して、しかしメンタはこの前のこともあるためルールを追記した。


「あ、言っておきますが男性陣を目隠しするのも恥ずかしがってタオルを巻くのも無しです。連続して脱がせるかどうかは各自に任せますが……ある程度盛り上がるようにしてくれると嬉しいですね!」

「ひゅー! ひゅー!」

「それでこそメンタ!」

「……鬼」


 諏訪子、神奈子に続いてシンも口だけで表情はまんざらでもなさそうだ。


「一つ聞くが、何かしらの不可抗力で余たちが気絶した場合はどうなる?」


 スルトが懸念しているのは女性陣による強制退場になった場合の話だ。


「イエス! 氷水ぶっかけて起こしますんで安心してください! それでも駄目なら放置です!」

「……左様か」


 かなり鬼畜仕様だが起きれば幸せになれることを野郎共は頷きあった。


「良くないですよぉぉ!!」

「使うデッキはトランプ2セット! ジョーカー込みで108枚です!」

「それだけで足りる?」


 パルが今いる人数を見てトランプを増やそうとしてメンタはその手を止めた。


「ゲームに参加できるのは十二人ですので一人頭九枚回る計算です」


 九枚が多いのか少ないのかは人の判断によるが、パルとメンタの中では大丈夫だろうという共通認識で可決された。


「じゃあ大丈夫だね」

「はい! それでは待望のくじ引きと行きましょう!」


 これは完全に運のみのくじ引きでレミリアも能力は使わずに引く。この内の半数以上は止む無く引いて自身の運を信じた。


『いっせーの、せっ!』

「くじと同じ色の人がペアになります!」


 メンタの宣言にある者は喜び、ある者は絶望した。 

 一組目は腐女子組合のメンタ&シンだ。


「まさかの組み合わせ」

「そんなに驚くことですかね? どっちが主人役しますか?」

「良ければダウトしてみたい」

「分かりました。今回はサポートに回りますね」

「うむ、ありがと」


 メンタにしては控えめで殊勝な提案だが本当にそれで済むのだろうか、とシンは疑問視した。

 二組目は幻想郷のBBA組合こと永琳&神奈子だ。


「珍しい組み合わせになりましたね」

「そうだねぇ。どっちやる?」

「私はあまり駆け引きが得意では無いので従者役をしたいと思います」

「オッケー。任せな!」


 永琳は自身がゲーム関係に然程強くないのを知っているため神奈子になる投げし、自身も可能な限り譲歩する予定だ。

 三組目は永遠亭の住人勢てゐ&輝夜となった。


「輝夜と、か。面白ぇことになったな」

「頑張りましょう!」

「そうだなぁ……輝夜、やってみるか?」

「よろしいので?」

「何事も経験だろ!」

「では……やってみますね」


 輝夜はゲーム関係にめっぽう強いがこうした大人数のリアルなゲームは初めての為、緊張もしている。てゐは自分がやるよりはルールを飲み込んだ後の輝夜の方が良いだろうと判断して今回は譲った。

 四組目はパル&早苗という無難な組み合わせだ。


「よろしくね!」

「はい!」


 この時早苗は感極まって泣きかけた。

 ――よ、良かった……他の人だと主人役でも売られかねないし……。


「早苗はダウトやったことある?」

「神奈子様に連れられて里で少々あるくらいよ。パルは?」

「ボクは学校で友達とやったくらいかな」

「それなら主人役をお願いしても良い? カードゲームはあまり自身無くて……」

「分かった。頑張るよ!」


 ――パルの運の良さは折り紙付き。後はパルの手札次第……。

 リアルラックが異常に高いパルが味方にいるということは勝ったも同然。しかしそれを上回る形で卑劣な戦いを繰り広げるのがトランプゲームというものだ。

 五組目はレミリア&諏訪子だ。


「ま、安牌ね」

「よろしくなのだ~! そして私に任せろ!」

「良いけど……」


 レミリアは諏訪子が自分から主人役を買ったことに驚きつつも首肯する。

 ――どうせ脱ぐのは諏訪子だし。

 ――へっへっへ……レミリアたんの全裸待機を全員に拝ませるのだ!

 どっちもどっちな思考を誰も知ることは無い。

 六組目はフラン&咲夜となった。


「咲夜と一緒っ!」

「フラン様の貞操はこの咲夜が命を賭してお守り致します!」


 ――レミリア様はさて置いてもフラン様とパルは守らなくては!

 最近、自分の主はかなり雑に扱っても大丈夫だということを理解した咲夜はフランとパルの二人を最優先に守ることを覚え、例えそのどちらかが割を食らう場合はフランを優先しようと考えていた。

 現在の紅魔館の三角図は最上段にフランドール、次にパルと咲夜、三段目にパチュリーと美鈴、最後にレミリアと小悪魔および妖精となっている。

 七組目は幽々子&スルトという珍しい組み合わせだ。


「ふむ、奇縁」

「も~、スルトさんの馬鹿ぁ~」


 余談だが幽々子はスルト大好き勢の一人であり早苗と奪い合う仲でもある。


「冗談だ。幽々子、後ろは任せて好きなようにやると良い」

「良いの?」

「こんなこともあろうかといつもより多く着込んでいる」

「流石スルト~、好き~」

「渡しませんよ!?」


 抱きつく幽々子に対して早苗が猫の如く引き剥がそうと試みてパルに引き剥がされて席に座らされる。

 八組目は妖夢&霖之助だ。


「死にたい」 


 真っ先に出た言葉に霖之助は必死に妖夢を励ました。


「私にも男の矜持というものがありますから! 従者で結構ですので妖夢さんは勝ってください!」

「……最善は尽くします」


 こういう時、霖之助の優しさと気遣いは好感度が高いのだが何故かモテない。

 妖夢もそれに励まされて席に座り、勝つために瞑想を始めた。

 九組目は魔理沙&枢だ。


「向こうの野郎二人は意気込みが違うなぁー」


 能天気な魔理沙が枢をチラ見しつつ問う。


「な、枢? お前に期待したいんだが?」


 これが霖之助やスルトであれば二言で返事しただろう。だが枢は違う。


「俺は真の男女平等主義者だ。女性にだって顔面にドロップキックを入れられる男だ!」


 聞くに堪えない宣言で魔理沙をドン引きさせる。


「ケッ! ……あーあ、スルトと組みたかったぜ」


 ――知らん。聞かん。俺とて全裸は御免だ!

 まずは自分の命が大事だということを枢は嫌というほど知っている。加えて何かの間違いがあればこの中の誰が動いても余波で枢は死ぬ。

 十組目は霊夢&晴明という犬猿コンビだ。


「まさか手を組むことになるとはな」

「組んだ覚えはないし、参加する気は無いわ。勝手にやって頂戴」

「協力する気が無いならわざと負けるが?」

「ちっ、面倒な奴ね。観戦くらいはしてやるわよ」

「……まあ良いか」


 と言いつつも霊夢は晴明のとっくりに酒を入れ、晴明も霊夢の方に注ぎ返して飲み、適当な肴を抓んで食べる。

 十一組目は藍&紫のいつもの主従だった。


「いやぁぁぁあああ!!」


 藍はここ最近では一番の不幸に見舞われたように泣き喚いた。


「酷い! 藍酷い!」

「ぐすん……勝っても全裸。負けても全裸なんて……!」


 どちらにしても全裸確定とも言われれば紫とて少々腹を立てる。


「なら、藍がやってみたら?」

「くっ……やってやります! 負けません!」


 紫はニヤリと笑って酒を飲み、藍も浴びるようにマタタビを口に含んだ。

 最後の十二組目はパチュリー&イナバだ。


「お任せします」

「良いの?」

「ゲームならパチュリーさんの方がお強いでしょう?」

「まあ、そうだけど」


 イナバは自分がやるよりは遙かに勝率が高いだろうパチュリーに投げ、自身は身を投げてでも勝つつもりでいた。

 全員のペアが決まった所でメンタはトランプを切り、もう1セットをパルが切っていく。


「では! 手札も配り終えた所で第一回目行きますよ! 順番はパル姉から時計回りです!」

『――っ!』


 全員ドローし、手札を翻す。

 テーブルは円卓となっており幅も広い。そのためテーブルの中央に手が届かないので浮遊魔法でカードを中央に投げて置くことが出来るように魔法の設計がなされている。

 加えてトランプのカードが見えるように場に出されたカードは空中の仮想ディスプレイに映し出されるようになっている。

 手番はパル、晴明、諏訪子、藍、神奈子、幽々子、輝夜、妖夢、咲夜、魔理沙、パチュリー、シンの順に回っていく。


「1を二枚」

「2」

「3」

「4」

「5を三枚」


 神奈子がいきなり仕掛けて来た所で全員の手が少し止まった。

 ――早くも手を打ってきましたね。

 メンタが神奈子の顔色を見定め、他の者も推測を描く。

 ――神奈子様の顔色を察するに、これはダウト。


「ダウトです」


 咲夜が先んじて宣言し、自動オープンされたカード三枚は5、6、6の三枚のため山になっていたカードすべてが神奈子の方へ配当された。


「ちぇっ。そこまで上手く行かないか」


 神奈子が残り14枚となり手番は幽々子から始まった。


「6を二枚」

「7」

「8です」

「9」

「10」

「11」

「12」

「13を二枚」

「1」

「2」

「3」

「5……あ、4」


 幽々子の言い間違いに場の空気が張り詰め、お互いを牽制し合う。

 ――……あれ?

 パルは首を傾げ、

 ――んん? ひっかけかな?

 諏訪子も疑問視し、

 ――気になるけど、ただの言い間違いの可能性もあるわね。

 レミリアは冷静に歯止めをかける。

 ――まだ止める段階じゃないな。

 まだ大丈夫と魔理沙は手を下げ、

 ――見ている分には面白いわね。

 観戦している霊夢はニヤリと笑って次の妖夢に手番を促した。


「5」

「6」

「7」

「8」

「9を二枚出すよ」


 パルが二枚を繰り出した所で各自が手札の確認を始める。

 ――……パルの手札は後五枚……。

 ――刺すならそろそろだが……。

 止める者はおらず、手番が晴明に向かう。


「10を二枚」

「11」

「12を三枚」


 神奈子が再び三枚を宣言したことにより魔理沙は眉を上げた。

 ――また勝負に来た? いや……でもこれは――。


「ダウトだ!」


 確信。数から考えても神奈子が12を三枚も持っているわけがないと魔理沙は仕留めにかかる。

 だが開かれたカードは12が二枚とジョーカーが一枚だ。


「ヒャッハー! 持ってけドロボー!」

「何ィ!?」

「あーあー……」

「やらかしたな」


 霊夢とスルトが憐みの視線で魔理沙と枢を見る。


「魔理沙さん、アウトぉー!」

「やんややんや!」

「死ぬだにカモガワ!」


 てゐと諏訪子が騒ぎ立てて楽しそうに手を叩いて踊る。


「メンタ。()()()()()()()()()()()()?」


 そう言えば説明していなかったことを思い出してメンタはホワイトボードに追記した。


「あっ、それも言い忘れてましたね。ドボンした場合は主人が従者のどちらか一人が脱ぎますが、決定権は主人にあります」


 つまり脱ぐのは枢ということになり、魔理沙はホッと胸を撫でおろした。


「悪いな、脱げ」

「畜生っ!!」

「初回から野郎脱衣とか誰得ですかねー」

「お前のせいだからな!!」


 枢が上着を脱いで畳んで置き、その間に手札を切り、配って二回目の準備を整えていく。


「では気を取り直して二回目行ってみましょう! 手番は魔理沙さんからです」

『ドロー!』


 全員がカードを翻して手に取り、今度は魔理沙から開戦した。


「1」

「2」

「3を三枚」

「ダウト」


 シンの些細な動揺を読み取ったパルが止めをかけ、カードが開かれる。

 ――あら? パルにしては速いわね。

 それを横目で咲夜が確認し、視線をカードに戻す。


「うぐっ」


 シンの手札が残り11枚となり、パルが次のカードを出した。


「4を二枚」

「5」

「6を二枚」

「7」

「8を四枚」


 神奈子が()()()()()()()()()()()()()()()、全員が視線を交わし合う。 

 ――四枚……ですか。

 ――序盤にしては勢いが良いな。

 メンタと、さっき爆死した魔理沙は見逃す方針を決め、輝夜とてゐは小声で相談する。

 ――ど、どうする?

 ――このままだと神奈子に流れを持っていかれる。ダウトだ。

 例えそれが罠であったとしてもギリギリ耐えられる枚数まではダウトに出来る。


「ダウト!」


 輝夜が宣言するとカードが翻り、相当数が輝夜の元に舞い込んできた。


「ほれ、持ってきな」

「うう……」


 輝夜の手持ちが残り19枚となり幽々子からスタートした。


「9を三枚」

「10」

「11」

「12」

「13を三枚だ」


 魔理沙の手にてゐはニヤリと笑う。

 ――馬鹿め。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! ダウトだ。当然、13も残り枚数を考えればダウトに踏み切れる。

 実に13が六枚もあればジョーカーを使われない限り安全圏だ。


「ダウト!」


 再度輝夜がダウトを宣言し、魔理沙は渋々カードを受け取る。


「ぐっ!? ――って、全員嘘つきじゃねぇか!!」

「よくあることです」


 ダウトは基本的に全員が嘘をついて良いゲームだ。パルもそこは分かって参加しているため、それ以前に勝負事なので真剣に早苗と相談しあっている。

 魔理沙の手持ちが残り18枚になり、その顔は苦渋に満ちた。次はパチュリーからのスタートだ。


「1」

「2を二枚」

「3を三枚」


 パルの手を見て魔理沙とてゐは止めたい一心に駆られるが、それを見越しての手だ。

 ――刺したいが……。

 ――こっちは3が一枚。刺すには危ういな。

 結果はスルーとなり晴明がカードを出した。


「4を二枚」

「5」

「6」

「7を二枚」

「8を二枚」

「9を三枚」

「10を二枚」

「11」


 ――これで累計20枚。誰が刺しても飛ぶわね。

 咲夜が息を吐き、誰も止められないため魔理沙に手番が移る。


「12」

「13」

「……A」


 ――全員静観……ですか。

 シンの手持ちだけでなく魔理沙と輝夜以外の手札はかなり少なくなっている。

 ――なら、これで終わらせるよ。

 パルと早苗は公式イカサマ(カードカウンティング)を使って読み取った次のカードを纏めて放出した。


「2を四枚出して――上がらせて貰うよ」


 パルと早苗は笑んだままそれ以上の顔色を窺わせない。


「何ッ!」

「ここで来るか!」


 真実かハッタリか見分けがつかないまま全員が一旦沈黙する。

 ――さて……。

 ――誰が刺すか?

 お互いが牽制し合い、しかし誰が止めても直撃を食らう状況だ。


「ふふん、ダウトしないの?」


 パルが余裕の笑みのまま腕を組んでプラス二割増しくらいになった胸を強調する。別の意味でも挑発しているがパルがそれに気付くことは無い。

 ――うわっ、パル姉が挑発してますよ。しかし――。

 ――あれは余裕の笑み。本当に二を四枚出したか――あるいは……。

 ――なんにしても逃した方が被害は少なくて済む……。

 現在の状況とこの後の展開を鑑みて即座に損得を換算したメンタ、スルト、パチュリーの三人は見逃す方針を出した。

 次いで他も誰も止めにかからないのを見てパルは少し驚いた。


「あれ? 本当に良いの?」

「それじゃ、今回はパル姉の勝利――」


 メンタが勝利宣言をしかけた所で()()()()()()()()()()()()()()()


「ダウトー」 


 そのまさかの宣言に藍は慌てた。


「ちょっ!? 無効! 主人以外のダウトは無効ですよね!?」

「いえ、従者ダウトもありですよー」

「先に言いなさい!!」


 藍が怒るが事実は覆らない。

 そう、ルール上明記されていないが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 暴論かもしれないが『ゲームに参加しないものほどつまらないものは無い』とメンタは考えている。

 ――やはりか……。

 メンタの思考をそれとなく理解しているスルトは視線を逸らした。

 そしてカードがオープンされ、場に出たカードを見て全員が引いた。


「カードオープン! げぇっ!?」

「うっわ……」

「引くわー……」

「は、ははっ……」


 メンタ、パチュリー、てゐ、諏訪子の四人は苦笑いさえする。


「すごーい!」


 唯一フランだけは純粋な心で褒めていた。

 場にはジョーカー三枚と二が一枚だけあり、藍はダウトの基本的なルールを思い出して審議した。


「じょ、ジョーカー上がりは無しですよね!?」

「ありです。ただしジョーカーのみの上がりはダメです」


 通常のルールでもジョーカーとプラスαがあれば上がりとなり、ジョーカー単体での上がりは誰でも出来るため禁止されている。

 メンタの無常な言葉に藍は泣き崩れた。それは好物のいなり寿司を作っている最中にうっかり油揚げを地面に落としたか、もしくは、橙がお風呂で溺れていたのを発見したのと同等くらいの悲しみがそこにはあった。


「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「な、泣いてる……」


 この中では善良な思考を持つ妖夢はそっと藍を慰め、他共は一斉に喧しくなった。


「ぬーげ! ぬーげ!」

「ぬーげ! ぬーげ!」

「ぬーげ! ぬーげ!」

「ぬーげ! ぬーげ!」

「ぬーげ! ぬーげ!」

「ぬーげ! ぬーげ!」


 容赦のない脱げコールに輝夜は疑問視する。


「え、でもルール上は紫様が脱ぐのでは?」

「従者の性ですよ……。藍さんなら――」


 同じ従者の性を持つ妖夢がもし同様の立場なら間違いなく自分が脱いでいるだろうと頷いた。


「く、うう……」


 藍の服装はドレススカートのため1枚脱衣するということはイコールで下着姿になるということだ。他の女性陣と比較しても死亡率が高い。余談だが帽子はそのままのためエロスが引き立てられる。


「うほ――」

「ふむ――」

「ほほう――」


 まあ、野郎三人衆の視線が集まるのも無理のないことで……それに気付いた妖夢が刀を抜刀した。


「斬鉄剣!」

「ですよねー!!」


 内臓が飛散し、大量出血で視界が暗転した霖之助はその脳裏で幸せな光景を何度も思い返しながら眠りについた。


「スルト、見ちゃ駄目です」

「うぶっ!!」


 スルトのペアを組んでいる幽々子はこれ見よがしに豊満な胸に抱きかかえ、スルトは無抵抗のまま胸に埋まって窒息しかける。


「幽々子さぁぁん!!」


 その光景は浮気以外の何物でもなく、早苗が怒髪天で立ち上がって修羅場が勃発した。


「マスタァァァスパァァァァクっ!!」

「理不尽だぁぁああああ!!」


 そして枢も魔理沙の腹いせを何とか術式防御で対抗するが悪乗りしたメンタのスペルカードで背後を突かれて気絶した。


「ううっ……なんていう恥辱……」

「従者の仇は主人が取るわ! さあ、エレメントチェンジよ!」


 藍と紫が席を交代し、パルはメンタに審議した。


「良いの?」

「ありです。さあ、早苗さん! 好きな人を好きなだけ指名してください!」


 続いて早苗の攻撃が始まろうとし、その早苗が待ったをかけてパルを呼び寄せた。


「あ、ちょっと良い?」

「どうしたの?」


 ゴニョニョ……とメンタでも聞き取れないほどの声で打ち合わせをし、パルは酒も入っているため陽気に頷いた。


「良いよー」


 打ち合わせが終わったのを見越してメンタは告げた。


「さぁさぁ、誰を剝きますか!」

「メンタさんとてゐさんと神奈子様と諏訪子様、おまけにパチュリーさん」


 早苗がロックにウイスキーを注ぎながらオーダーし、呼ばれたメンタたちは一斉に硬直した。


「はえ?」

「ほへ?」

「ん?」

「は?」

「なっ――う、裏切ったわね、パル!」


 パチュリーに続き咲夜も驚いて口元に手を当てる。


「ぱ、パル! なんてことを――いえ、まさか早苗さんが!?」


 ニヤリ、と早苗が親指を立ててパルにも同じものを作る。


「う、えっ……な、何故オレたち何ですか!? というか何故オレまで剝くんですか! 何故オレが死ななければならないのですかぁ!」


 メンタのその言葉を待っていたと言わんばかりに二人はコップを持った。


「せーのっ!」


 早苗の掛け声と共にメンタは悟った。


『坊やだからさ!』

「ぬああああああああああ!!」


 まさかそれがやりたかったためだけに殺されたのか、とメンタは仰け反る。


「で、ですがまだ初回! 俺は足袋を生贄に捧げます!」


 だがメンタは巫女服ということもあり割と重装備だ。まずは足袋を脱いで掲げて畳んだ。


「汚ぇ!? え、ちょっとまて私これ一枚しか――」


 だがてゐは違う。兎の足は素足で良いためてゐは必然的にピンク色のチュニック一枚で過ごすことが多い。


「――()()()()()()()

「あ――――ッ!!」


 メンタが眼をそむけつつも一気に脱がし、てゐは漫画の如く目を丸くして叫んだ。


「なら、注連縄を」

「帽子で」

「くっ!? パル、後で憶えておきなさいよ!!」


 諏訪子、神奈子、パチュリーの三人もまだ帽子や装飾品で耐えることが出来、死に一歩迫ったてゐと藍を見てメンタは腐的に笑った。


「では三回目行ってみましょう!」


 素早くカードが切られ、配布される。


『ドロー!!』


 全員がカードを手に持って翻し、負けられない戦いが始まった。


「手番は紫さんからです!」

「Aを三枚!」

「2」

「3を四枚」


 幽々子の飛ばしにパチュリーが鋭く止めた。


「ダウト」

「どうぞ」


 勢いだけでなく本当に切るカードがあったため出し、誰かが止めるだろうと予測して幽々子は出していた。


「なっ!?」


 パチュリーの元にカードが移動し、残り17枚となる。続けて輝夜がカードを出した。


「4を二枚」

「5」

「6を三枚」

「7」

「8を二枚」

「9」

「10を二枚」

「11を二枚」


 ――じゅ、十四枚――。

 ――これでは誰が止めても飛びますね~。

 あっという間にカードが嵩み、咲夜と幽々子の額に冷や汗が流れた。


「12」

「13を二枚」

「1」

「2」

「3を三枚」


 ――引けなくなったか……そうなると誰が一番早く上がるか、もしくはボロを出すかだが……。

 そこまでぬるい連中ではない、と晴明は考える。


「4」

「5」

「6、を二枚」

「さぁてと……ダウト!」


 明らかにダウトにしなくても良い諏訪子の宣言にパルたちは腰を浮かした。


「え!?」

「正気!?」

「……どうなるかしらね」


 レミリアも嫌な予感がしつつも傍観する。


「当たり」


 シンは真剣に頷いてメンタと神奈子が背後で効果音を鳴らした。


『ドヴォォォォォォン!!』

「うぎゃーしまったー」


 酷い棒読みにレミリアは呆れ、従者拒否を使用して諏訪子を脱がせようとする。


「著しい棒読みね。さ、脱ぎなさい」

「うわー、手が、滑ったぁぁああああああイエァ!!」


 代わり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「へっ?」


 パサッ、という擬音が付きそうなくらい軽やかに衣服が脱がされる。レミリアが着用しているのは咲夜特製の寝間着であり、背中の羽が寝る時に邪魔にならないように考慮されているため背中が空いているのだ。止めるのは腰紐だけのため、腰紐を解けば簡単に脱げてしまう。


「かーらーの! オレたち以外全員一枚ずつ脱衣です!」

『なら、靴下で』


 メンタの攻撃にパルと早苗は靴下を畳み始めた。

 次いで咲夜は()()()()()()レミリアの下着(上)を脱がし、折り畳む。


「やっ! ちょ、咲夜! 下着返して! ニーソックスあげるから!」

「ルールですので。それとニーソックスは却下です」

「何故!? だってフランなんて帽子でしょ!」


 確かにフランは帽子を差し出しており姉の無様な姿をせせら笑っていた。


「きゃははは~!」

「レミリア様、非常に言いにくいのですが言ってよろしいでしょうか?」


 咲夜は真面目な表情でレミリアを見据え、レミリアは半歩足を引いて聞いた。


「……なによ」

「今、私とレミリア様は()()()ですので」

「貴方それでも私のメイドなの!?」


 今の行動はあくまでも善意だ、といわんばかりのドヤ顔にレミリアは叫んだ。


「はい」


 咲夜は首肯して下がり、今にも襲い掛かりそうなレミリアを諏訪子が抑えた。


「この鬼畜ゥゥ!!」


 その諏訪子も靴下を脱いで畳む。


「じゃ、靴下」

「髪飾り」

「靴下や帽子で凌げるもんなんだな」


 魔理沙もちょっと意外そうにしつつも霊夢から勧告を受ける。


「私はまだニーソックスあるけど、魔理沙は次が無いわよ?」

「……お、おう」


 帽子も靴下も無くなり、次はドレスエプロンの下に履いているドロワーズを畳まなくてはいけないことに魔理沙は笑みを引き攣らせた。


「ぐっ!?」


 いつも面倒くさがって靴下を履いていないことが仇となったパチュリーは歯噛みし、


「ううっ……」


 着物を全て(十二単は重ね着ではなく一つの衣装としてカウントされる)イナバとてゐに剥かれた輝夜がおり、


「紫様、待って! まだ帽子を先に――」

「手が勝手にー」


 帽子を犠牲にしようとした藍より先に紫がブラを外して畳んでしまい、手ブラする羽目になった。


「うぐぐ……」


 妖夢は靴下で済み、永琳も帽子を置いた。


「帽子……くっ、帽子を出します」


 余談だが霖之助はさっきから気絶しており首から下は床の中に埋まっている。さっきから気絶と首から上は一階と二階の合間に埋まっている状態だ。そんな野郎共から服を剥ぐとか誰得なので満場一致で放置が決議された。


「って! 幽々子様は何しているんですか!」

「……幽々子よ。余とてモラルはある。この体勢はどうなのだ?」


 ふと早苗が見た先にはスルトが上半身下着の幽々子の胸に抱えられており、しかし抵抗することは男としての下らない矜持があるためされるがままにされている。

 ちなみに座り方はスルトが隣に座る形で上半身だけを捻り、埋まっている。


「エロエロですね~」


 メンタはニヤリとスルトを見て、幽々子も満更ではないように笑みを浮かべた。


「フシャ――――ッ!!」

「早苗が『この泥棒猫!』だってさ」


 スルトは現状を良く思いつつもアフターケアの方が大変そうだと脳裏で考える。

 ――別の意味で死にそうだ……。

 恐らくはスルト的には得をするだろうが、それを諏訪子と神奈子に弄られ続けるのは確定事項だった。


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