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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
59/119

第五十三話 紅に染まるダウト・後編

グラたん「第五十三話です!」

「では! 第四回目です!」


 メンタがカードを配布し、各自が一斉にカード引いた。


『ドロー!』

「手番は諏訪子さんからです!」


 次死ねば下着及び手ブラ腕ブラが避けられない者たちにとっては決戦場も良いところだ。


「1を三枚」

「2」

「3を二枚」

「4を二枚――あ、んっ! スルト、動かない、で……!」


 先程からずっと胸に抱えられているスルトの背には早苗の殺意が突き刺さっており、何とか離れようと動く。

 ――窒息はしないが早苗に殺される! いい加減離せ、幽々子! 

 まずは顔を話そうと幽々子の肩に手を伸ばす。その過程で胸をしっかりと揉むのは不慮の事故とは言えないだろう。


「やっ! 胸は……!」

「何してるんですかスルトさん!!」


 早苗が遂に出刃包丁を持ち出し、パルが必死に腕を抑えつける。


「お、落ち着いて早苗!」

「そうですよ! そんな豊満な胸に頭埋めて羨まし――いえ、ゲフン」


 早苗の視線が自身に向いたところでメンタは視線を逸らした。


「……5」

「全く……何してんだか。ダウト」

「ううっ」


 さりげなく出した輝夜のカードが晴明に止められ、残り18枚となって手番は妖夢に移った。


「6」

「7を二枚」

「8を二枚」

「9を三枚」

「10」

「11を二枚――」


 晴明がカードを出そうとすると早苗の怒りの声が響いた。


「離れてください!」


 見れば幽々子の胸に埋まっているスルトを引き離そうとして幽々子が両腕をクロスしてスルトを離すまいと抵抗していた。


「んっ……やぁ……」


 その過程で幽々子がエロスティックな吐息を漏らし、早苗の怒りボルテージはみるみる上昇していく。


「せいやっ!」


 そして強引に引っ張りだすとその反動でスルト自身がテーブルの方に放られ、晴明の方へ着地した。


「うおあ!?」

「おっと!」


 晴明も思わず手札を落としてしまい、オープンカードのまま場に出されてしまう。


「……あっ」

「ダウト」


 シンに刺され、晴明は目を見開いて叫んだ。


「スルトお前はァァ!!」


 晴明の持ち手が残り17枚になり、続いて諏訪子がカードを出した。


「12」

「13を二枚」

「1」

「2。スルト、大丈夫?」

「う、うむ……」


 スルトが再び席に戻り、幽々子が正妻の如く寄って早苗もパルに連れられて席に戻った。


「フー! フー!」

「落ち着いて! ね!」


 呆れ交じりに輝夜たちがカードを出していく。


「3を二枚」

「4を二枚。凄いことになってますね」

「5を三枚。半分くらい幽々子様が悪いと思いますが――」


 雑談しながら咲夜がカードを出し、スルトが目ざとく止めた。


「むっ、ダウトだ」

「くっ!!」


 幽々子が近寄り、スルトは咲夜の方を見てクククと笑った。


「流れに乗じようなど思わぬことだ」


 幽々子の方は見ていないが、自分に言われたと勘違いした幽々子が離れて落ち込む。


「ガーン」

「スルトさん! 言って良い事と悪い事がありますよ!」


 そうなると今度は妖夢が抗議し、スルトは困る。


「うっ……そっちに飛び火するのか……」

「悪いと思ってるのなら……」

「ムムム……」


 スルトは呻きつつ幽々子が両手を広げてウェルカムする。また埋もれ、今度こそ早苗が弾幕を右手に持って物理抗議をしようと振りかぶった。


シャァァ――――ッッ!!」

「堪えて! 耐えて早苗!!」


 パルも全力で正面から抑え込み、咲夜がカードを拾って残り11枚となるのを見て魔理沙がカードを出した。


「くふふ、面白いな。6を二枚」

「修羅場っていうのは傍から見れば面白いものよ。当人は気の毒だけど」


 霊夢も面白がって酒を進め、もっとやれと言わんばかりに拳を振り上げた。


「7」

「8を二枚」

「9を三枚出すよ」

「10」

「ダ――」


 諏訪子が二度目をしようと止めに入り、レミリアがさせまいと11をオープンカードで繰り出す。


「させるかぁ! 11!」

「ダ――」


 次いで紫も悪乗りしようと身を乗り出して先んじて藍が12を出した。


「チェンジ! 12!」

「13」

「ふふ~ん。A」

「2」

「3」

「4を三枚」


 咲夜が出すと晴明が止めた。手持ちから考えても安牌だと確信があった。


「ダウトだ。そんなに持っているわけなかろう」

「残念ながらジョーカー込みです」

「ぐっ……迂闊!」


 直撃を食らい、メンタたちの目が一斉に理事長の方へ向いた。


「理事長、アウトゥゥ――――ですッ!」

「ぬぐぐ……」

「自爆ね。()()()


 と、酔っ払っている霊夢の言葉に眼が座った晴明はシンとメンタを手招きした。


「……シン、メンタ」

「イエス!」

「任せる!」

「やれっ! 陰陽師の底力を見せてやれ!」

「サー!」


 右手を高く上げて降ろし、悪乗りでやってきたてゐ、諏訪子、神奈子が背後から霊夢を押さえつけた。


「ちょっ、ふざけないで! 脱ぐならあんたが脱ぎなさい!」

「良いではないかー」

「帯取った!」

「腐腐腐、うら若い乙女の肉~です!」


 もはや集団プレイの如く集られ、剥ぎ取られ、畳まれていく。


「あんたは中年のおっさんか! ええい! 返しなさい!」

「巫女服剥いでやるぜぇぇ!」

「抑えろ抑えろ!」

「博麗の淫乱巫女にしてやんよ!」

「や、やめなさいこのエロ神共! 紫! 藍! 魔理沙! 助けなさい!」


 霊夢が助けを求めると三人は『敵だから』という理由で霊夢から視線を逸らした。


「あー……お茶が美味い」

「カード切っておきますね」

「くぅ……まさかの手ブラしながらとは……っ!」

「あんた等ァ――――ッ!?」


 裏切られたショックのあまり霊夢は驚愕し、下着姿になるとメンタたちも満足して席に戻った。


「ヒャッハー!」

「くっ! あ、後で憶えてなさいよ! メンタ!」

「オレ限定ですか!?」

「ええい! 酒持ってくるわ! 飲まなきゃやってられないわよ!」


 霊夢が下着のまま一時退出し紅魔館の蔵から酒樽を持って来てそこらに転がした。


「第五回目! やりますよー!」

『ドロー!』


 その間にメンタたちはカードを配って手に持った。

 カードを見てスルトは悪い笑みで幽々子に迫った。


「……幽々子、少し良いか?」

「はい、キスでも押し倒しでも何でもどうぞ?」

「違う。一つ策を使おう」


 小声のため早苗には内容が聞こえていないが、見た感じであればスルトから幽々子にアプローチをかけているようにも見えなくない。


「――ふふっ」


 次いで幽々子の満足そうな笑みを見て早苗は立ち上がった。


「カァァァァァ!!」


 両手を大きく上下に開いて右腰に溜めに構え、中央に気を集めて鬼の形相でスルトを睨んだ。それをパルが背後から抑え込んで荒ぶる早苗の手を何とか抑える。


()()()()()()()気功玉はダメだよっ!!」

「離して! 後生だから離して!」


 通称『お客様とて許せぬ波』が蓄積されつつもパルの必死の宥めと着席で事を抑えたが、誰一人としてスルトを心配する者はいなかった。


「手番は理事長からです!」


 メンタの宣言と共に晴明がカードを出した。


「1」

「2」

「3!」

「4」

「5」

「6」

「7」


 恐ろしいほどの単発にメンタは驚愕する。


「なんで単発ばっかりなんですかね!?」

「良く切れているのでは?」


 永琳が答え、そんなものだろうかと思いつつもメンタは納得する。


「8」

「9」

「10」

「……11を二枚」

「12」

「13」


 累計14枚になったのを確認つつも諏訪子がカードを置いた。


「ねーねー、これもう一発退場コースなんだけど。1」

「誰が仕留めるか――2」


 遂に酒に手を出した藍がカードを置き、


「面白い! 3を二枚」


 神奈子が数を増やした。


「4を三枚」


 そして幽々子が枚数を上げるとてゐが叫んだ。


「露骨にレート上げてきやがった!」

「5」

「当たりたくないですね。6」

「それも運命でしょう。7」


 妖夢と咲夜がお互いに首肯しつつワイングラスを傾ける。


「いやな運命だぜ、8」


 魔理沙も焼酎瓶を傾けつつ手札を出す。


「9を二枚」

「10を四枚出すよ」


 パルの宣言に全員が騒めいた。

 ――勝負に出た……けど!

 ――ここは流しておくべきね。

 ――そして恐らくは……。

 シン、霊夢、輝夜は視線を躱して今回は流す。


「11」


 ――あれ? 流れちゃった。

 ――意外だね。

 パルと早苗も肩透かしを食らって驚く。


「12を二枚」

「13」

「A」


 神奈子が出し、次は幽々子という所で彼女は不気味に笑った。


「ふふっ」


 ――空気が変わった!

 ――来る!

 幽々子から発せられる謎の空気に全員が黙る。


「2を()()出します」


 ――なんて――っ!

 ――露骨な誘い!!

 誰もが歯を食いしばり、幽々子が手の甲を見せて広げ、持ち札ゼロを表示させる。


「ここでこの回は終わらせましょう」


 誰かが止めなければいけない。しかし止められない。

 ――どうするメンタ?

 てゐがメンタに視線を向け、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ――誘ってることくらい分かってますよ。しかしこれ脱ぐのは――!

 レミリアは場に出ているカードと各自の手札を確認する。

 ――既に場に出ている2は二枚。幽々子が出した手札は2が六枚。デッキ二個分を考えれば、あり得なくはないけど現実的にあり得ない手ね。でもさっきパルがジョーカー三枚という手を出してしまっている……。

 パルの手がミスリードとなり、フランも紫たちも困惑する。

 ――2が二枚でジョーカー四枚、もしくは2が三枚でジョーカー三枚もあり得るね。

 ――それに加えて外せばドボンという致命的な状況……。

 迂闊に手は出せないが誰かが止めたい場面。

 ――これはスルトさんの策?

 ――やるね~。もし失敗しても今のスルトなら上一枚で防げる。持ち手を切るには絶好の機会だね。

 藍と諏訪子は素直に賞賛し、スルトは笑みを深めた。


「ククク……さあどうする?」


 余談だが先のこともあり幽々子は椅子からソファーに座っており、スルトがその太腿に頭を乗せており胴体は横になっている。


「膝枕しながら威厳を出すのって凄くシュールですよね」


 メンタの言葉に全員が頷いた。


「良いわ。私が引導を渡してやるわ」


 次いで覚悟を決めたレミリアが沈黙を破って手ブラで立ち上がった。


「お嬢様!?」

「お姉ちゃんカッコイイ!」


 フランが応援しなければレミリアの姿を見て誰かが代わりにやったかもしれない。だがこうなってしまった以上レミリア以外がダウトすることは許されず、レミリア自身も冗談とは言えなくなった。


「――ッ! ダウトッッ!」

「クハハハハ!! 死ぬが良いわッ!!」


 カードが翻され、2が五枚とジョーカーが一枚あり、レミリアの敗北は決定した。


「甘い! まだ帽子とニーソックスがあるわ!」


 帽子を机に叩きつけ、次があったとしてもニーソで対応できるとレミリアは考える。だがそれをスルトが見逃すはずがない。


「ククク……左様か。ならば、喰らうが良い。()()()()()()()()()()()()()()()()

「なっ――!?」


 レミリアは驚愕した。現在レミリアが身に纏っているのはニーソとショーツのみ。スルトの命令で全員と言われているため諏訪子への身代わりも不可能。


「流石スルトさん! お、鬼掛かってますね!!」

「生かさず、しかし完全には殺さずにゲームに参加させるだと……っ!」

「で、でもそれじゃあレミリア様は!?」


 パルが上着を畳みつつ、誰よりも悲惨なことになっているレミリアを凝視した。


「ルール上は、()()()()()()()()()()()()()()()。違うか?」

「違いません!!」


 つまり裸手ブラロリハイニーソという、ただの裸体よりも特殊な状況にレミリアは歯噛みする。ちなみにてゐはもう死んでいるのではないか、と思われるかもしれないが、彼女は自身の毛を抜いて素早く飾りや靴下を編み、現在は手ブラ状態となってギリギリ生きている。


「ならば続行だ。否とは言わせんぞ、誇り高き吸血皇女よ」

「卑怯なっ!」


 しかしどんなことになろうともルールはルールだ。


「僭越ながら私がお手伝い致します。パル、早苗、壁を作ってください」

「うん!」

「はい!」


 素早く咲夜たちが動き、次いで諏訪子たちも動いた。


「うへへへへ! レミリアたんハァハァ!!」

「へへへ、私たちも手伝ってあげよう!」

「席に座っていてください!」


 早苗が二人を席に戻し、レミリアはなすすべなく剥かれた。


「いやぁあああああああああ!!」


 全員の脱衣が終わり、スルトは非常に満足そうな笑みを浮かべていた。


「ふむ、眼福」


 ただし眼は閉じて脳内で想像を膨らませている。


「幽々子さんの膝にうつ伏せになりながら言う辺り流石です」


 メンタたちはそんなスルトに対して畏敬さえ覚えた。普通の男性であれば死を覚悟してでも顔を上げてゲームに参加するだろう。そして数秒後に天に召される。

 だがスルトは自ら目を閉じて()()()彼女たちを視るのだ。 


「んんっ……! スルト、あまり鼻息かけないで……っ!」


 当然ながらその一番の被害を受けるのは幽々子だ。


「仕方あるまい。ここにいるほとんどの者が下着姿なのだからな。それに左右はおろか仰向けになった瞬間、余はきっと死ぬだろう」

「すげぇ……紳士だ……」

「でも、その幽々子様も今や手ブラ……」


 何かの拍子で万が一頭が浮き上がれば後頭部が幸せになる。


「生の太ももで膝枕とか!」

「代われ! 今すぐそこを代わって!」

「そうですよ! 代わってください!」


 諏訪子、神奈子に続いて早苗も抗議する。


「早苗!?」

「うむうむ! 何とけしからん! 私がやってやる!」


 おまけに酒に酔って顔を赤くした晴明も加わってしまう。


「……あの……」

「輝夜、()()()見てはいけません。穢れます」


 永琳は手でそっと輝夜の目を閉ざし、聖母の笑みで告げる。


「私は? 私はいいんですか師匠!?」


 ただし永琳とて手は二本しかない。守れるのは片方だけなのだ。


「アハハハハ! ざまぁないわよ早苗!」

「ゴクリ」


 霊夢は大笑いし、魔理沙は生唾を飲み込んで行く末を待つ。


「とても危ないことになってるわね」

「パチュリー、見えないよー」


 パチュリーもフランの目を隠し、咲夜もレミリアの目をわざと隠した。


「そうですね」

「咲夜っ! 手を離して! 見えない! 見えない!」

「そろそろ次やりましょう?」


 紫が言うと全員の視線が一気に向いた。


『まだやるの!?』

「で、ですが、そろそろ良い時間ですし終わりにしても――」


 ここで終わらせられればそれに越したことはないため藍は流れに乗じて中止を提案する。


『ラスト一回お願いします!』

「……それなら、まあ」


 が、次でラストであれば問題無いだろうと思ってしまいカードが切られていく。

 ――これ以上続けたらレミリアが切れそうだしね。

 霊夢もそろそろ引き際を感じており、ラスト一回は妥当だと思った。


「追加ルール。ラストなので勝った従者は一人に付き三枚まで脱がせられます」

「おまけに主人は誰か一人に命令できる権利を得る」

「尤も、公序に反しない程度にですけれどね」


 が、そこでメンタたちは恐ろしいルールを提案した。


「嘘っ――!」


 早苗が眼を丸くし、


「正気ですか!?」


 藍も毛を逆立たせ、


「紫最高!」

「イエーイ!」


 馬鹿二大神はノリよく頷き、


「ラストなら良いんじゃないの? その方がレミリア一人だけ死なずに済むし」

「だな」


 霊夢たちはその方が良いだろうと肯定した。


「では追加決定です!!」


 多数決によって追加ルールが可決され、カードが配布させる。


「では第六回目! 行きますよ!」

『ドロー!』


 全員がカードを注視し、一部は何が何でも勝つという気概を見せつける。


「手番は諏訪子さんからです!」

()()()!」

()()()!」

()()()!」


 もはやゲームなど関係ないと言わんばかりに三人が高速でカードを出し、一気に序盤が過ぎていく。


「殺す気満々ですね!?」

「まだ終わらせないわよ、ダウト!」


 ここで終わらせたらどんな命令されるか分からないためパチュリーは自ら犠牲になって残り18枚の負債を背負った。


「4を二枚」

「5を三枚」

「6、二枚!」

()()()()()!」


 咲夜の一瞬の隙を声色から感じ取り、スルトは声を出した。


「ダウトだ」

「~~~っ!!」


 が、声を出すということは吐息を出すということでもあり、幽々子はあまりのくすぐったさに思わずスルトの頭を掴んで自身の胴体の方に首の向きを変えた。

 思ったより力が入り、ボギッという骨が折れた音が聞こえた。


「くぺっ」


 スルトも不覚を取って変な声を出した。


「なんか嫌な音したよ!?」

「あっ!」


 パルの叫びに幽々子も気が付き、スルトは痛みを堪えつつ言葉を出した。


「……も、問題無い。幽々子、すまないが一度顔を上げるぞ」

「見たら殺すっ!」


 目を開けなければ正しい視点に戻せないのは分かっているが今のレミリアは全裸ニーソだ。加えて女子全員が格差こそあれ下着姿だ。


「分かったからグングニル出すな」


 スルトも起き上がって、流石に危険だと判断して一瞬だけ目を開けて自分の頭を掴んで位置を直した。実に100度回転したため、メンタも恐怖した。


「怖っ!」

「フランケンシュタインですか!?」


 再び顔を下に向けて僅かに眼を開いて着地点を確認し、止まる。


「良い…………幽々子よ、()()()()()()()()()()()?」

「ま、また首を変な方向に曲げないように、です。その、凄くくすぐったかったので……」


 確かにさっきのは自身が悪く、配慮にかけていた。であれば幽々子が太腿の間に頭部を挟もうとするのは当然ではないか、と愚かな思考で考えているためスルトは再び埋まろうと身を落下に委ねる。


「ふむ、では仕方な――」

「ダメに決まってるでしょう!?」


 早苗が立ち上がり、スルトの頭を掴んで引き摺って自分の席に戻り、太ももに乗せる。


「これで良いんです!」


 見れば早苗も相当酔っておりこれ以上癇癪されては敵わないとスルトはそっと目を閉じた。感じるのは幽々子とはまた違った柔らかさと温かさだ。それに女子特有の甘い香りが鼻と脳を刺激してくる。


「返して~、私の旦那様じゅうしゃ~」

「わ・た・し・の旦那様! です!」

「幽々子様の従者は私です!」


 妖夢も参加し、メンタたちはホッコリ微笑んでいた。


「凄い修羅場ですね虞腐腐……」

「メシウマー」


 結局スルトは早苗の太腿に乗ったままゲームは再開された。 


「やれやれだな。8を三枚」

「9を二枚」

「10を二枚」

「11だよ」

「12を三枚」

「ダウトだ」


 魔理沙がダウトし、晴明は勝ち誇ったように笑んだ。


「持って行くが良い」

「くっ!」


 魔理沙が残り19枚となり勝利は絶望的となる。


「13を二枚」

「1を三枚」

「2を二枚」

「ダウトだよ」


 次いでパルが止め、神奈子にカードが移動する。


「げっ……そこで止めるかぁ……」


 神奈子は残り13枚。


「3を二枚――」

「ダウト!」


 もはや幽々子を仇にしか思っていない早苗が止め、幽々子は舌打ちして戻す。


「チィ」

「渡しませんからね!」

「4」

「5を二枚」

「6を二枚」


 ――全員が堅実になってきたな。

 最初の勢いが嘘のように静まり、全員が冷静さを取り戻していく。


「7」

「8を二枚」

「9」

「10を二枚だすよ」

「ダウト」


 パルの手持ちを予見し、スルトが止めた。


「声のトーン抑えたのに……」


 パルの手札が残り14枚となり、早苗が先程の幽々子同様に悶える。


「――んっ! す、スルトさん……」

「……すまん」


 やはりくすぐったかったか、と思いスルトは自重しようと思考する。


「か、構いません! で、でもあまりダウトしないでください……その、くすぐったいので……」


 が、やはりスルトも酔っているため早苗の愛おしさに負けて鼻息荒く言葉を紡いだ。


「――ダウトダウトダウトダウトダウト」

「ぁっ! ――――このっ!」


 流石に頭を叩かれ、スルトも黙った。


「むぐっ」

「も、もう! スルトさんの馬鹿っ」


 そこで幽々子が立ち上がり、スルトの首を掴んで引き、生の胸に埋めた。


「もぶぅ!?」

「痛いの痛いの妖夢に飛んでけ~」

「私に何か恨みでもあるんですか!?」


 叩かれた頭部を撫でながら酔った妖夢に手を伸ばし、物凄く抗議される。


「11だ」

「12」

「13」

「A」

「2」

「3」

「ダウト」


 今度はレミリアが輝夜を止めた。


「何故……分かったのかしら?」

「勘よ」


 単発なら大丈夫と思っていたため輝夜は下唇を噛んだ。


「4を二枚」

「5」

「6を二枚」

「7」

「8」

「皆慎重だね。9を二枚」


 パルの軽口も視線を集めるが、これは違うと全員が直感して避ける。


「10」

「11を二枚」

「12を二枚」

「13」

「A」


 幽々子がカードを出すと各々の思いで立ち上がった。

 ――終わらせる!

 と、早苗が指を差し、

 ――せめて最後くらい!

 と、今まで大した活躍もなかったイナバが立ち、

 ――この理不尽を――!

 ショーツ一枚姿にされたてゐが猛り、


「ダウト!」


 イナバが最初に口にし、


「だ、ダウト!」


 次いで輝夜、


「ダウト!」


 永琳もノリで止め、


「ダウトだよ!」


 パルもつられて止めに入り、


「存在がダウト!」


 てゐがスタイルの良さを指差し、


「その巨乳がダウト!」


 メンタが胸を指差し、


「私怨ですが、ダウト!」


 早苗が怨みだけで幽々子を止めた。


「えっと……この場合は?」

「――被った場合は一番速かった人が適用されます。今回はイナバさんですね」

「よしっ!」

「何方にしてもパチュリーの手持ちと合わせるとこれで終わりね」


 霊夢が呟いて酒瓶をテーブルに置き、真剣な表情で彼女たちを見据えた。

 ――来い……来い!

 イナバがちょっと期待したように笑い、スルトは勝利を確信して少し顔を上げて笑った。


「カードオープン!」


 テーブルのカードが開かれ、全員の視線が集まる中で幽々子は右手をイナバに向けた。


「眠りなさい……『絶対終焉の(スター・バースト・)札十六枚(ストリーム)』!!」

「ぐはぁぁぁっ!!」


 決着が付き、霊夢は注いだ酒をグイっと呷った。


「……ま、何となく予想は付いていたわ」

「さあ! イナバさんは上半身下着に! パチュリーは一張羅になってください!」


 イナバとパチュリーが止むなく脱ぐ。


「そして!」

「追撃は!?」


 諏訪子と神奈子が異常なテンションでスルトを見た。


「無論、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 現在下着でない者は妖夢、イナバ、魔理沙、早苗、パルだ。


「見られずに済むと思ったのに!」

「ゲス野郎!」


 妖夢と魔理沙は特に怒り、メンタは愉悦のままに幽々子に最後を促した。


「そしてラストは――!?」


 幽々子は不敵に笑い、ゆっくりと立ち上がって宣言した。


「女性は全員このままお風呂に行きましょう」

『ですよねー』


 幽々子ならばそうするだろうと幾人かは予想しており、その幾人かは床に手を付いて落ち込んだ。


「あっ、ちなみにスルトは私と二人っきりで入りましょうね?」


 幽々子がスルトを両手でホールドし、早苗がいきり立って包丁を手にした。


「スルトさんとは私が入ります!! パルも加勢してください!」


 早苗が振り返るとパルは早苗の手を抑えて包丁をテーブルに置き、衣服を手に早苗を俵担ぎにして持ち上げた。


「はいはい、先に行こうねー」

「パル! ちょっと! 待って!」


 メンタたちはまだ気絶している枢と霖之助の処分について決めあぐねていた。


「この人たちはどうしますか?」

「簀巻きにして外に転がして置けばいいだろ」

「枢は簀巻きで家の中に」

「いや両人ともそこらに転がして置けばいいだろ。気絶してるし」


 じゃあスキマに放り込んで置くかといういつもの結論になり、二人を簀巻きにしてスキマに放り込む。


「先に行ってるわよー」


 霊夢が寝間着を取り出して先に退出し、咲夜もそれに乗じて自身等の衣服を両手に持った。


「ではお嬢様も参りましょう」

「その前に――咲夜も全部脱ぎなさい!」


 レミリアが爛々と輝く眼で咲夜を見つめ、『本気だ』と直感した咲夜はすぐに踵を返した。


「さ、先に行ってます!」

「待てぇぇ!!」

「待てー!」


 その後に続いてフランも咲夜の後を追いかけ、


「相変わらず騒がしいわね」

「平和ですね」


 パチュリーや永琳たちも退出していく。

 ちなみにその後で幽々子は妖夢に連れていかれ、スルトは守矢神社の風呂を使うことになる。



~余談~


 それはメンタの言葉がきっかけだった。


「そういえばスルトさんって何処で寝るんですか?」 


 スルトとしてはその答えは決まっていた。


「無論、自宅だ。流石に余が紅魔館で寝泊まりするわけにはいかないだろう」


 実に紳士的かつ男性的には間違ってない解答をスルトは告げた。

 視線を向けると、風呂で咲夜をもみくちゃにして満足したレミリアは真面目な顔で頷いた。


「あら、別に構わないわよ」


 予想外の言葉にメンタたちは一斉に視線を向けた。


『何ィっ!?』

「どうせスルトから手を出してくるわけでもないし」


 が、次の一言で()()()()()()()()()ということが露見する。


『何っ!?』


 バタン! と扉が開かれて幽々子と早苗が飛び込んでくる。


「是非止まりましょう! 一緒に寝ましょう!」

「男女ともに寝ず、です! 絶対にダメです!」


 続いて妖夢とパルも急いで駆けつけてくる。


「早苗さんの言う通りです!」

「うんうん!」


 が、居間で会話を聞いていた馬鹿二柱は肯定する。


「ま、確かにスルトが奥手なのは知ってるのだ~」

「一緒に寝た所で、な?」

「何言ってるんですか!?」


 早苗が切れ、その後でスルトが泊るか否かで弾幕合戦が起こったらしい。

  


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