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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
55/119

第五十話  RX-0ユニコーン

グラたん「第五十話です!」


※前回までのあらすじ※

メンタ「さぁ、ゲームを始めましょう」

てゐ「デスゲームだけどな」

メンタ「次回、世紀末救世主伝説」

てゐ「いや、これあらすじだからな?」


レリミア「道真様! 彼女たちが!」

道真「俺に任せろ! 絶対に、間に合って見せる!」


枢「ぐふっ……ま、まさか、お前が――」

シン「ごめん。……さよなら、枢」


てゐ「すげぇ、何一つあってねぇ」

メンタ「さあそろそろ本遍いきましょうか」


 メンタは道具箱の中から音楽プレイヤーを取り出し、東京で人を喰うあのオープニングをループ再生で流し始めた。


「それじゃー、やりますですかね」


 何処から取り出したのか仮面ホッケーマスクを被り、両手を大きく広げて空を仰いだ。


「気合い注入~」


 両手に握られているのは工具用のペンチでは無く、自作した鉄製のペンチの音が鳴り響く。通常のペンチと違いメンタの力と手に合うように作っているため常人では使えないほどグリップが固い。


「あーっと、道真っつたか? 今のメンタはかなりぶっ飛んでるから先に聞いて置くぞ? どうやって博麗大結界を突破したんだ?」

「言うと思ったか!」


 靴を脱がしペンチを足の親指に当て、捩じり切る。

 ブチン、という耳を塞ぎたくなるような音が鳴り響き、道真はスライムのように絶叫した。


「ぴぎぃぃぃぃいいいいい!!」

「道真様ァァァ!!」


 メンタはゲタゲタゲタと狂い笑い、道真の背後に回った。


「知ってますか? この世の不利益は全て当人の力不足なんでやがりますですございましょうですよ。あっとそういえば半妖なんでしたね。じゃあそこらへんにいる人間の死体とか食わせておきゃいくらでもパッチン出来ますよね。何を? 決まってるじゃないですかー、指。あ、勿論のこと手ェやったら足ィやりますからね? それとも爪と肉の間に鉄串さして爪剥いで皮やってからパッチンされたいですか? それでも良いですよ。むしろそうしましょう!」


 鉄串を刺し、


「ひぎぃぃぃ!!」


 爪を剥ぎ、


「ぎへぇえぇえええ!!」


 ピーラーで皮を剥いで、


「痛い痛い痛い痛い!!」

「ゆーびきーりげんまーん、嘘ついたら――」


 指を捩じり切った。


「ぷっちんですぞ?」

「ぎゃぁぁぁあああああああ!!」


 一方でてゐは椅子に括りつけられている彼女に眼を向け、怪しい手の動きを見せつけながら迫った。


「じゃあ私はこっちの嬢ちゃんで一杯やるかな」

「ひっ!?」

「あ、ちなみに私はペロペロ担当なんでよろ」

「いぃぃやぁぁぁぁあああああ!!」


 ただし『私が』では無く『私は』だ。ペロペロをするのは八意製薬の失敗作『新春・触手君零号』。永琳は医学者ではなく天才科学者だ。時にはよく分からないものを作り出してはてゐに与えて実験させているマッドな節がある。

 さて、その『新春・触手君零号』は動けない彼女の肉体に絡みついて足、太もも、臀部、腰、胸、手、腕、首と凌辱の限りを尽くしていく。

 余談だがこれも夏コミの無償配布DVDに編集される予定だ。


「あ、がぁぁ……」


 一方で道真は簀巻きにされて手錠までされ、メンタの拷問を受け続けていた。


「苦しいですか? 苦しいですよね。くるしいですよねぇ!だったら1000から7を引いてください。痛みが紛れますよー」

「ひっ……1000ひ、引く、7は、993、985……」


 その間もメンタは指切りをして愉悦に浸っていく。


「ひぎぃ! きゅ、きゅきゅきゅうひゃく……」


 ある程度すると残っている二人の存在を思い出して立ち上がって其方に駆け寄った。


「あ、そうでした。えーっと、そうこれこれです!」


 ポーチの中から取り出したのは何かのビン詰めだ。勿論、中には黒くてカサカサして足がいっぱいある長い物体が入っている。


「みっちざっねさん! このアバズレとこのビッチ、どっちにコレぶっこんで良いですかぁ? あ、これ? これはトビズオオムカデって言いまして、大きいのだと確か20cmか30cmくらいになるんですよねー、DES!」


 今回メンタが用意したのは全長75cmと幻想級の大きさのムカデだ。


「げ、げぇー、はがぁー」


 ただし道真は痛みでそれどころではなく聞いてはいなかった。

 ムカデの瓶を彼女たちの眼前に突きつけると彼女たちは首を振ってもがく。


「や、ヤダ! 嫌ぁ!」

「やめて! キモイ!」


 生々しい声を聞いてメンタは満足そうに道真に振り返った。


「ねぇ、聞いてますかねー」

「げひぃー、はふぃー」


 が、もうメンタはそんなことどうでもよく自己解釈をし出した。


「マジですか!? 両方イっちゃいますか! ここで取り出すのは~ガムてぇぇぷぅぅです!」


 ムカデを穴にねじ込み素早くガムテープで頭部を巻き付けて閉じ込める。そうすると後方に行き場を無くしたムカデは必然的に前へと進むしかない。


「嫌! 無理! 無理無理無理! そんなの無理!」

「やだ! ヒッ! あ、あがが入って入れ入ってるぅうううううう!!?」

「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


 メンタはたまらず手を叩いて大喜びして跳ねる。そして次の問いを枢にしようと振り返る。


「では! 次の質問です! そうですねぇ、回答権は枢さん! っていないですねー。じゃあてゐで良いですよ、ハイ」

「なんだー?」


 が、こっちもこっちでやることをやっているためメンタは割と理性を取り戻して道真に問う。


「あ、お取込み中みたいですね。じゃあ道真さぁん」

「……ァイ?」


 呼ばれた道真は顔を上げて口をパクパクとして誰かに助けを求めていた。


「このハーレムの二人の内ぃ、どっちから殺してほしいですか? ちゃんと選べたら助けてあげても良いですよ。安心してください、オレはつまらない嘘はつきませんよ」


 メンタはとても良いゲス顔で告げ、てゐも驚いて振り返った。


「露骨に殺害予告しやがった!? いやでも確か漫画だと『どっちも選べない。僕をやれば良いだろう』ってなるはず……」


 てゐが告げると二人の顔に希望が見え、先んじて彼女は答えた。


「それなら先にソラフィーを助けてあげて! 私はどうなっても――」

「そらふぃー?」


 意識が朦朧としている道真が言葉にするとメンタは喜び勇んで鋏と金槌を振り上げた。


「ハァイ! いらっしゃいませェェェ!! 挽肉一名サマ入りまァァァァァァす!!」

「ひぎゃぁぁああああああ!!」


 誰もが放送を自粛しなければならないと思うほどに惨殺され、永琳のせいでスプラッタな死体現場に良く連れていかれるてゐはドSな面を見せてニヤニヤしていた。


「おおう、ゲスいゲスい」


 彼女の悲鳴を聞いて道真は意識を取り戻す。


「ソラフィー……ソラフィー!?」

「あ……ああ……ソラフィー……ごめんねぇ」


 そんな二人の悲鳴はどうても良いメンタは清々しい表情と共に仮面を外して天を仰いだ。


「ああ! このっ高揚感! もうゴールして良いですかね? いやまだダメですよお楽しみはこれからなんですから!」


 が、道真も薄れていた意識の中からメンタの言葉を思い出して叫んだ。


「ハッ、待てよ。確かさっきそこの赤毛は『ちゃんと選べたら助けてくれる』って言ってた。そうだ、俺はちゃんと答えたんだ! 助けやがれ!」


 メンタはイエス! と頷いた。


「そう、これからです! なのでぇぇぇ――」


 貫通ボディーブロー。通称、人類止めましたパンチで道真の腹部を貫いた。


「ごるぱっ!」

「やっぱりこれですね!」

「道真様ァァ! 赤毛ぇぇ! この嘘つき!!」


 彼女は叫び、メンタは頬を紅く染めてうっとりとした表情で両手を天高く掲げて叫んだ。


「えっ? 嘘ついてないデスヨ。だって――こぉぉぉんなに楽しいぃぃんですからァァァァァァアアアアアア!! ちなみに一人死んじゃったので残ってるムカデは取り出してもう片方の耳からブッこみますね」


 ニッコリ、と容赦のない手つきでもう一匹を挿入されて彼女は狂気した。


「い、い、ァァァァァガアアアアアアアアア!!」


 もはや女子とは思えないような悲鳴と喜色の声にメンタはようやく精神を安定させた。


「てゐー、そっちはどうですかねー」

「今やってるー。というかお前正気だろ?」


 てゐも薄々感付いていたため、念を持って聞くとメンタは酷い棒読みで答えた。


「オレは正気に戻っターです」

「テンプレ乙」

「それで道真の方はどうですか?」


 その道真は赤毛の悪魔に精神をこれでもかと壊されて幼児退行していた。


「おうち、おうち帰りたい。ぱぱーままーどこー」


 チッ、と他人事のようにメンタは舌打ちして右手を伸ばした。


「あーあ、壊れちまったですよ。仕方ありません、能力発動!」

「初めからそうすれば早かったよな?」


 てゐの至極尤もな意見を肯定してくれる人はいない。



 道真の脳内にある記憶の大半はアレのため、必要ない部分は意図的に消去して必要ありそうな部分だけを見ていた。


「ふむ、これが博麗大結界か。妖怪風情がこんなもの作りやがって。オイ、クソ兎共! さっさとこれ解け!」


 それは一人の横暴な少女と月従う兎たちの映像だ。


「ハッ!」

「遅ぇよ! んなもん1秒で解け!」

「ハッ!」

「ポテチまだか! 月コーラ持って来い!」

「ハハッ!」


 ――うっぜぇ……姫うっぜぇ……。

 そんな彼らの愚痴が聞こえてきそうなくらい、彼らの表情は苛立っていた。

 少女に人望がありそうには見えないし何時反乱が起きてもおかしく無いような状況にも関わらず兎たちは反抗せず頭を下げて従順な振りを続けている。

 その様子が数年間続き、兎たちは何かの装置を弄って目の前にある結界を破ろうとしていた。


「こ、これで――」


 結界の一部が綻び、博麗の見習い巫女であるメンタにはそれが博麗大結界の一部であることが理解出来た。


「やった! やったぞ!」

「これでやっと!」


 が、喜びもつかの間で努力の末に貰えたのは鞭だった。


「遅い! 五年とかテメエ等クズか! ああクズだったな! ボケ! 生ゴミ!」


 ――殺っていいですか、隊長?

 ――我慢しろ! 全ては依姫様がお戻りになるまでの我慢だ!

 ――殺させてください! もう我慢の限界です!

 ――耐えろ! 耐えてあのお方にお会いするんだろ!

 兎たちの憤怒を一匹の兎が必死に押しとどめて銃や剣を降ろさせる。


「グズグズしてんじゃねぇよクソ兎共! さっさと機材片付けろボゲが!」

「ハッ!」


 その一匹――兎隊長の額にも相当数の青筋が立っていた。


 偉そうな彼女は背後を振り返り、道真たちに作った綻びを指差した。


「終わったぞ」

「はい。では後のことはお任せ下さい」

「くれぐれも内密にやれよ。決してお前が月の民の協力者であることをばらしてはならんぞ」

「勿論です」

「頼むぞ。何としてでも依姫を見つけるのだ」

「はい」 


 彼女が恰好を付けるのは外聞のためか、今更感はあるが彼女は恰好を付けて道真たちを促した。

 道真たちが幻想郷に侵入したのを見届けて彼女は舌打ちした。


「ちっ、妖怪風情が汚らわしい」

「仕方ありません。それほどまでに()()()()――」


 兎隊長がそういうと彼女は一層キレた。


「あんなクズを様づけしてんじゃねー!」


 辺りが一瞬だけ殺気に包まれ、兎隊長が手で小さく制して抑える。


「……ハッ。では――()()()()、アレを封印しておける重要な素材ですので」


「そーさ! それで良いんだよ! ったく、クズで戦闘以外使えない妹の分際で私の手を煩わせやがって……帰るぞ! ゲーム機忘れんなよ!」

「ハッ!」


 兎たちは舌打ちしたいのを必死に堪えてゲーム機を片付け始めた。



 あまりにも不可解なモノを見せられてメンタは内心で首を傾げると同時に偉そうな彼女への嫌悪を顔に出していた。


「どうだった?」


 てゐが聞くとメンタは今の心情をそのままぶつけた。


「今すぐ月に向かって魔貫光殺砲を撃ってやりましょう! ええそうしましょう! もう道真とかどうでも良いですから月に攻め込んであんにゃろうをぶっ殺しましょう! てゐもそう思いますよね!!」

「待て待て何があった?」


 今しがた見た光景の事情を説明し、てゐは思ったより淡泊に答えた。


「お前も似たようなもんだろ? 現にさっきまで虐殺してたわけだし」

「いえいえオレのはあくまでデスゲームという過酷な環境と想像を絶するトラウマを押さえつけるための衝動的な行動であり、あの別のベクトルでクズな女には腹立ちました! せめて耳もがないと気が済みません!」

「……それ、私の前で言うか……。とは言っても豊姫のBBAは元からあんなんだしな……」


 元月の民であるてゐからすれば彼女は良く知っている人物だ。


「知っているんですか?」


 メンタが問うとてゐは自身の身分を明かした。


「知ってるも何も私も元は月の民だからな」

「死んでくれますか?いえ疑問形は失礼ですね。死ね!」


 なるほど、と頷いててゐの耳に向かってペンチを振りかざす。もぎ取るつもりで振るった腕を受け止めて、てゐは反論する。


「お、落ち着け! 私や師匠だってアレに仕えるのが面倒で幻想郷に来たんだ」


 メンタはまだ納得していないが言葉は続けた。


「ほぅ、ちなみにアレの戦闘力ってどれくらいですか?」

「真面目な数値、5だ」

「真面目にゴミですね。では月破壊作戦も楽に終わりそうですね」

「ところがギッチョン。月面には屈強な兎兵士たちがいる。人間のお前や妖怪がいけば熱々のレーザービームで溶けて終わりだ」 


 メンタは少し沈黙し、問う。


「ちなみにそれは何年前の話ですか?」

「千年前くらいだ」

「今は?」

「師匠のデータだと戦闘は依姫様が全部単独で行っていたらしい。依姫様は強かったからなー」


 それはそうだろう、とメンタは頷く。パルに憑依していたとは言え、依姫と実際に戦闘してあっさり敗北しているメンタからすれば、依姫の敵になれる者は数少ないだろうと考える。


「ま、確かにあれだけ強ければそうですよね」


 そんなメンタの言葉にてゐは首を傾げた。


「ん? メンタは会ったことあるのか?」

「会うも何も――っと、聞かれる前にこっちを処分しましょうか。死に方は何が良いですか?」


 メンタは言いかけると同時に依姫との約束があることを思い出して口を噤み、先に彼女たちの処分をするように促した。

 てゐもそれとなく感付いて今は問うのを止めて女生徒の背後に回り込んだ。


「ケツにストローぶっこんで内部から破裂して死にたい」


 酷い棒読みをされて彼女は必死に首を横に振って否定するが視線で打ち合わせられるメンタとてゐに懇願は通じない。


「本気ですか? 痛いではすみませんよ?」

「ご褒美!」

「分かりました。では道真さんはどうですか? ○○潰されてから死にたいんですね分かってますから安心して逝ってください。抵抗されるの面倒なんで先に能力使って制御しますね」


 能力を発動して動きを止め、手套で首を切り落とす。

 道真が死亡したのをメンタたちは確認し、外から監視していた霊夢たちもそれを見て完全に死んでいるか確認した後で紫に報告した。


「こっちは終わりましたよ」

「見事なもんだぜ。次はこっちだな!」


 てゐが彼女の頭部の自由を奪っていたガムテを剥がし、耳の中に入っていたムカデを再び瓶に戻して告げた。


「さあ、ゆっくりと深呼吸しろよ? 最後の空気だ」

「あ……ああ……」


 死ぬことが既に確定しており、彼女は詰まりそうな呼吸を繰り返す。


「メンタ、風を溜め込む術符はあるか?」

「偶々偶然にもあるんですよ。ストローと空気弾は準備オッケーですよ!」

「それじゃぁ、やろうか」


 椅子下に穴を開け、そこから真上に向かってストローを差し込む。


「アガァ――――」


 椅子の下に術符を置いて二人は相当の距離を取り、てゐは指を鳴らした。


「あばよ」


 風の術符は指定通りにストローを通って彼女を椅子ごと空中10m付近にまで持ち上げてその身体を爆散させた。

 これだけ距離を取ったのは胴体を爆散した時の骨や血飛沫を浴びないためだ。それでも肉片が僅かに飛んでくるため思ったより威力が強かったとメンタは反省する。


「汚ねぇ花火だぜ」

「まさかそのネタやるためだけにこんなグロイ殺し方するとは、策士ですね」

「お前もな。さて、あいつらの方も終わったみたいだな」


 様子を見ていた枢はグロすぎて気絶したシンを抱えて、枢自身も吐き気を抑えつつ茂みから姿を見せた。


「……こっちは何とかな……」


 その中にレリミアの姿が無いことに気が付いたメンタはニヤリと笑った。


「あれ、レリミアさんはどうしたんですか? 逃げました? 逃げたんならこの死体を操って4足歩行で追いかけて食い殺させましょう。目指せ、某18Rグロゲーム越えのグロさ!」


 それには取り合わずに枢は用件だけ告げた。


「あいつもシンの式神になった。詳しい事は帰ってから話す」


 枢が言い終わると同時くらいに魔法空間内に設定された『生存人数、四人』の条件が満たされて帰還用の魔法陣が足元に出現した。


「わっと!」

「おう、戻って来たみたいだな」


 そうして闘技場に戻って来たメンタたちを見て紫が何とかフィナーレにしようと明るい声で拍手を促した。


「今年の優勝校は東の陰陽師一門となりました。会場の皆様は温かい拍手を送りください!」


 拍手の音がほんの少しだけ聞こえ、他の観客はあんまりな光景に気絶や嘔吐をし、医者ですら顔を青くしていた。


「う、ヴぇえええええええええ!!」

「ガタガタガタガタ」

「ピクピク」

「あいつ、人間なのか・・・!?」

「人がやることじゃねえよ!!」

「鬼や悪魔や妖怪の方がまだかわいく見えるぞ!」

「赤毛怖い赤毛怖い赤毛怖い赤毛怖い赤毛怖い赤毛怖い赤毛怖い!!!」

「……そう、あれは赤毛の悪魔だ!」

「赤毛の悪魔!」

「赤毛の悪魔!」


 時代が時代なら魔女裁判にもなっただろう赤毛コールにメンタは酷く照れて恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 対して枢は『ありえない』とドン引きした。

 一部の観客席――主に落ち着いて戻って来たパルとスルトは不敵に笑って拍手していた。そのパルも霊夢たちや早苗にちゃんと謝り、仲直りをしている。

 余談だがスルトが次元を切り裂いて連れて行った先は神々会議で廃棄予定となっていた惑星の一つだ。そこでお互いに出せるだけの全力をぶつけあい、宇宙から惑星が一つ消えた。


「わー! 凄い! メンタたち優勝したよ!」

「当然の結果だな」


 スルトはグロッキーになっている早苗の背を擦り、早苗は膝の上に横になっている。


「うう……」

「あいつら、帰ったらシバく。絶対に……」


 割とグロ耐性のある諏訪子たちや霊夢たちも若干吐き気を覚えていた。



 会場からは観客が大量に搬送され、表彰式を行う前に死体清掃や今後のための理事長会議が開かれた。陰陽大会は来年もすることになったが優秀な生徒をむざむざ死なせるのは良くないということで次の試合は普通にトーナメント形式にするようだ。

 表彰式になる頃には観客席も寂しくなり、紫もそこまでキッチリやらなくても良いだろうと考えてメンタたちを前にして略式の表彰を行った。


「では表彰を始めます。色々略して、ここに貴方たちの戦績を称えて表彰致します。おめでとうございます。こっちは優勝賞品です」 


 表彰状と包装紙に包まれた謎のモノを渡される。


「色々台無しなのを突っ込んで良いですか?」

「グタグタ感半端ない」


 うんうん、と枢と理事長も頷いた。


「だってフードコートで食事している最中に呼び出されたのよ? 早く戻って食べたいもの」

「良いんですかね、それで……」


 メンタは呆れつつも賞状を筒に仕舞い、優勝賞品の方に眼を向けた。


「ともあれ早速優勝賞品を使ってみましょう!」

「うん」


 包装用紙を開けると中に入っていたのは白い角だ。


「うん?」

「これは……?」


 問いの答えは枢が引き継いだ。


「これは『ユニコーンの角』だ。文字通りユニコーンの額に生えている角なのだが幻想郷にはそもそも生息していなくてな。俺と理事長も手を尽くしたんだが見つからなかったところにこの情報が入ったんだ」


 幻想郷と言っても幻想世界というわけではない。割と近代化が進む中で幻想的なモノは数を減らす傾向にある。幻獣も数を減らしているのだが紫が尽力しているおかげで最近になってようやく数が増えてきている。


「ユニコーンって?」


 シンはそういった幻獣を知らないため、メンタはニヤリと笑って答えた。


「全長18mの人型で白いボディと赤く輝いた目を持ち、動き出すと白いボディに入っている割れ目が開いて全身が赤色に輝き出す通称『白い悪魔』と呼ばれる生物です。また最大速度はマッハ3を超えており、手に持ったビーム兵器と盾型のガトリングビットで何もかもを破壊します。しかも覚醒すると全身が緑色に輝き出して従えていた人を神にするという伝説上の生物です」


 何処からともなく勝利を約束するBGM流れてきて、理事長が咳払いして止めた。


「お前の世界ではそうなのかもしれないが、このユニコーンは馬だ。一匹狩るにしても人間が百人以上は必要になるほどらしい」


 へぇ、とシンは呟いてメンタの方に尋ねた。


「メンタの世界のユニコーンは?」

「人間や妖怪では倒せませんね。せめて死無樹シナンジュとか蕃椎バンシィくらい持って来ないと倒せません」


 余談だがメンタは嘘は言っていない。正しくはあるが間違ってもいないという説明のためシンもメンタが嘘をついているようには見えなかった。


「良く分からんが凄く強いことだけは良く分かった」

「それにしても、これは一体誰が持って来たんですかね?」


 尋ねると、枢は一瞬だけ疑惑の目を紫に向けて視線を戻した。


「さあな。ともかく今すぐにでも取りかかろう。幸い道真が死んだのは確認できているからな」


 次いで、枢はその角を理事長に渡そうと振り返った。


「うむ。四人共ご苦労だったな。さて、まずはシンの方からやろうか」


 理事長に角が渡る手前でメンタが割り込んで奪う。


「っと、その前に一つ聞きたいんですが良いですか?」

「なんだ?」


 ――フラグだ。絶対フラグだ。

 ――何を聞くのか?

 枢は非常に嫌な予感がし、理事長は口元に手を当ててどんな質問でも来て良いように身構える。

 メンタは非常に嫌らしい笑みを浮かべて告げた。


「これ、売ったらいくらになりますかねぇ?」


 それには魔理沙たちも驚愕し、呆れ半分驚き半分といった表情だ。


「なっ――!?」

「おまっ!?」

「や、やりやがった……」


 メンタはしてやったり顔で理事長に迫り、脅迫する。


「どうなんですか? ねぇねぇねぇねぇ?」

「ぐっ――何が望みだ? 金か? 体なのか?」


 理事長とて時間が本当に無いためこの際ならばどんな要求でも呑むつもりでメンタに向かった。


「腐腐腐……この角の価値は理事長さんが決めて良いですよ。さぁいくらですか? 自分の命よりも大切な角さんですよ? あ、勿論お金だけじゃダメですよ。何かオマケが欲しいですねー」


 金銭はいくらあっても良いがそれだけでメンタは満足しない。


「くっ、迂闊だったか……」

「ぐぐぐ……」


 ――金以外で私が差し出せるものなんてそれこそ陰陽師か理事席ぐらい――。

 理事長は必死に考えるが答えは出ず、メンタもそこまで鬼では無いため要望を口にした。


「分からないのなら敢えて言いましょう。――夏コミやるための許可ください!」

「――へっ?」


 全員の言葉を代弁するように理事長は素っ頓狂な声を上げた。

 対してメンタは四次元と化しているポーチから『夏休みのしおり』なるプリントを取り出して抗議した。


「夏休みの日程見ましたけれど、夏コミやるためには明らかに少ないんですよ! それに成功したら冬コミとかフェスタとかの企画も色々あるんですよ。でもそれをやるためにはどうしても色々な人の協力とか許可が要りまして、勿論金銭問題もずっと付き纏いますし出版や場所代も結構な額になるんですよ。オレも貯蓄はありますが毎回やるほどのお金は無いんです。なのでそこらへん後で書類にまとめますので総責任者として署名して貰えるのならこの角はあげます。そうこれは等価交換なのですよ。良いですよね? 自分の命と一回の署名、比べても破格だと思いますよね?」


 理事長はメンタの言う事をまずは疑った。

 ――コイツの事だ。何か企みがありそうだが……今は本当に時間がない。頷いておくしかないというのが厳しいところだ。

 だが命が最優先のため理事長は頷いた。


「仕方ない、分かった」

「口約束ですけれどお願いしますね。マジで死活問題なので!!」

「ほっ」


 ――ぜってーそれだけで終わると思えねぇ……。

 魔理沙は半眼でメンタを見つづけ、てゐたちも同様にメンタを白い眼で見ていた。

 角が渡され、理事長は腰を下ろしてすり鉢を溶かし、隣でお湯を沸かした。


「良し、では角の先端を折ってすりおろし、白湯に溶かして――飲む!」

「分かった」


 ユニコーンの角を溶かして出来た白湯は真っ白で獣特有の臭いもしない。シンはそれを何も疑わずに口を付けた。


「――むぐぅ!?」


 効能は一杯飲むだけで良いのだが、その一口目が躊躇われる。シンは口に含むとビグンと全身を跳ねさせ、早苗が心配そうに近寄った。


「ど、どうしたんですか?」


 それよりも早く理事長と枢は頷いてシンに駆け寄った。


「枢!」

「了解!」


 二人掛かりで抑え込んで流し込み、シンは目を見開いて体を跳ねさせる。


「むー! むー! むー!」


 それでも飲ませなければいけない。ゴクリ、という音が鳴り、シンの体が思いっきり跳ねて枢が全身に乗っかって押さえつけた。


「びぐんびぐん!!」


 しばらくするとシンの動きが止まり、光の無い目で虚空を見て口からは小さな嗚咽が漏れていた。


「こ、これは一体――」

「くっ、ヤムチャしやがって」


 メンタもてゐも思わず目を見開いて枢が被さっている状態からカメラを回した。

 理事長は自分の分を作りつつ解説をしていく。


「言ったらシンは絶対に飲まないと思ったので言わなかったんだが、この薬湯は恐ろしく苦い。そこにユニコーンの角を混ぜると無臭になり見た目はただの白湯になる。材料の方は言えないが、飲めば滋養強壮や健康改善になる。そして何よりユニコーンの角には呪法を打ち消す効果があるのだ。これでシンの呪いは解けた」


 強力な呪いは幻獣の素材と理事長特製の薬湯を混ぜた白湯を飲むことで効果を浄化出来、寿命も伸ばすことが出来る。


「やはりシンには何か呪いがかかっていたのですね」

「ちなみにその呪いってなんだ?」 


 てゐが問うと理事長は一瞬だけ手を止めて、また擦りつつ答えた。


「灼月の呪いだ」


 理事長の言葉に枢は視線を逸らし、スルトも腕を組んだ。


「シンが居たあの城は元々月の民が立てた城で、五年ほど前に幻想郷に落ちて来たんだ。それを一目見ようと私たちは向かい、シンを見つけたんだ。その時のシンはもう既に呪いに掛かっていた」


 それはメンタもシンも知っている通りだが霊夢たちは一切知らないため興味深そうに聞き入った。


「私たちは、シンは何か特殊な儀式の贄に使われたのではないか、と考えている。無論、何の確証もない推測だ。しかし近年は月にも不穏な動きがあるらしいから、もしかしたらシンの呪いと何か関係があるかもしれないと見ている」


 月面と幻想郷の因縁は深い。霊夢たちは揃って口を噤み、眉間に皺を寄せた。

 紫もメンタや霊夢たちの報告と合わせて月の情報を確認しているため表情はやや厳しかった。


「それは分かりましたが、では理事長さんの呪いは何ですか?」


 問うと理事長は軽い口調で答えた。


「私の方は単に肉体の限界だ。大体五百年に一回くらいで肉体が死期を迎えるのだ。そうなると代わりの器を探すか今回みたく幻獣の一部を体に取り入れて生き永らえるしかない」

「では別にユニコーンの角でなくても良かったのですね」

「ああ。しかし幻想郷には本当に幻獣がいないため発見できるのは寿命ギリギリなんてことはよくある」


 と、なれば……と魔理沙は推測を口にした。


「ってことはアレか。陰陽師の道場やってるのは自分のスペアを生産するためか」

「有り体に言えばそうなるが、それは素材が見つからなかったときの最終手段だ。陰陽師を育てているのは単に昔の癖みたいなものだ」

「今回の場合はシンがそれに当てはまるみたいですね」


 理事長は手を止め、白湯が出来上がるのを待つ間に空に昇りかけている赤い月を見上げた。


「言い訳はせんよ。月の民の肉体は寿命が長いからな。本来ならば妖怪や半妖を乗っ取るのが一番良いのだが、陰陽師家業をやっているため中々見つからなくてな」


 それは一見淡泊にも取れるが、メンタたちには陰陽師という足かせがそれを出来ないようにしている苦労が見て取れた。


「そうでしたか……。ところで寿命が近いなら飲んだ方が良いですよ」


 メンタの薄情な言葉に理事長は呻く。


「うぐっ……」


 白湯を手に取り、深く深呼吸して体内の気を整える。


「そういえば味って苦いだけなんですか?」


 ふとしたメンタの疑問に理事長は覚悟を決めた表情で応えた。


「ふっ、良く聞いてくれた。――馬のクソみたいな味がするんだ。無論、実際にそうなのだけどな」

「馬の――」

「クソ――」


 霊夢たちが揃って驚いた隙に理事長は息を止めて白湯を口にした。


「南無三!!」


 誰でも馬のクソのような味のする飲み物を飲めば気絶くらいはするだろう。


「げふっ」


 びぐん、と反応して理事長の閉じた目から一筋の涙が流れた。

 理事長とシンの二人をスルトは抱え、皆を促した。


「では、宿に戻るとしよう」


 ユニコーンの角はまだ数回分使えるため包装用紙に包み、枢は紫に預けた。紫も晴明たちに死なれては困るため承り、彼女たちは帰路へと着いた。



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