第百一話 妖夢さんの身体を好き放題できるってこと
メンタ「ふんぐるいふんぐるい」
グラたん「何呼び出そうとしてるんですか!」
宴の馬鹿騒ぎはまだ続いているが、幽々子も流石に疲れが出てきたのか欠伸した。
「ふぁぁ……そろそろ眠くなってきましたね」
「そうですねー……くぅ」
「早っ!」
寝息の規則正しい音を聞けば狸寝入りであることくらい分かった。妖夢もうとうとしており、もう間も無く寝落ちしようとしていた。
「あーこれ完全に潰れてますね。……ところで妖夢さん、ちょっとだけ付き合って貰っても良いですか?」
「はい?」
部屋の四隅に人払いの結界の札を投げて貼り、わざわざ能力を使って妖夢を眠りに落とす。
メンタはコップの水を一口飲んでから告げた。
「これで良しっと――じゃ、本題です。出てきてください」
彼も自分が呼ばれていることくらい分かっていたので呼びかけに応じ、眠っている妖夢に憑依して横になったまま口を開いた。
「わざわざ高度な人払いまでするなんて余程重要な話かい?」
「イエス! 実際、桃太郎さんって男性ですよね?」
「そうだけど?」
メンタの要領を得ない問いに桃太郎は首を傾げる。
その様子を見てメンタはニヤリと笑った。
「つまり憑依中は妖夢さんの身体を好き放題できるってことですよね!? 生前が男性であれば女性の身体を好き放題できる状況は薄い本にも匹敵するシチュエーション! 『ヘッヘッヘ、この嬢ちゃんは貧相な身体付きだぜ。仕方ねぇ、この俺が揉んでボンッキュッボンッな体型にしてやるかぁ!』と下衆な笑みを浮かべながら色々したんですよね! そうでなくても欲望の一つや二つくらいは思う存分解消しているはずです! もしくは妖夢さんと偽って幽々子さんの部屋に行って『今日は一緒に寝てくれませんか?』とか言って思う存分あの贅肉の塊を弄んだんですよね!? さあ、感想を聞きましょうか! どうだったんですか? ブラと下着の色くらいは確認したはずです!」
「いや、出てこれたのはさっきだし、そんな感情は昔ならいざ知らず、今は抱いたりしないよ。ふぁぁ、眠たくなってきた」
呆れた口調で返され、再び寝ようとしたのでメンタは慌てて待ったをかけた。
「待ってください。ちょっとした疑問が二つあるだけです。一つはスルトさんと何か関係がありますか? 特に血縁関係です」
その言葉に桃太郎は思わず目を開いて起き上がり、少し不思議そうな顔でメンタを見つめた。
「……はて、いつ話したっけ?」
「戦闘中ですよ。うっかり思考が滑ってました」
あの時かな、と思い当たる節はあった。
しかしこれを他人に言って良いものか、と悩んだが
今まで聴いてくれる人もいなかったため、愚痴混じりに聞いて貰おうと決意する。
「……あ~……うー……まぁ、君になら良いか。私はね、龍の子なんだ」
「龍ですか?」
「そう、龍。ほら、おとぎ話でも桃から生まれたってあっただろう? 実際は『桃を抱えて流れて来た』が正しいけどね。尤も、川の上流からおばあさんが洗濯に来るのを見計らって揺りかごを流す母親の神経は疑うけどね」
桃太郎は実の母親も父親も知らない。お爺さんとお婆さんが親だと思って育てば当然だろう。
そのことを知ったのは桃太郎が旅立つ前の前夜、お爺さんが語ってくれたからだ。
「つまり、桃太郎さんはスルトさんの子ってことで良いんですか?」
隠し子が事実ならスルトは既にこの世におらず、その存在も五千年くらいは消滅くらいはしていただろう。
桃太郎もそれは否定した。
「いいや、違う。スルトは私の子孫だ」
メンタが知っている通りであれば、邪神スルトは最近神格となった存在だ。桃太郎の説明は矛盾することになる。
「……えっと、普通、神降ろしって大昔の神様たちを降ろす術のはずだとおもうんですけど」
「それは古い定義だね。でも間違ってない。違いは、スルトは現代の神様だということだね。ちなみに最新の神様は魔神プレアデスだ」
二人は知る由もないが、実のところスルトは現在から約三千年に存在が確認されているため、神格としての年齢は三千歳を超えることになる。
一方でプレアデスは最近神格に登らされた存在であり、神界に名前を連ねる神としては1600年振りと言われていた。
「あっ、そうなんですね」
「でも邪神として降ろすのなら巫女でも出来るけど、勇者として降ろすのは血族の――それも先祖返りした者で無いと出来ない」
他の勇者とか過去の英雄ならまだしも、勇者アストは勇者かつ龍神としてもの側面もあるため特別コストが重い。
ふと、メンタは依姫が纏っていたことを思い出す。
「あれ? でも依姫姉は纏えますよ?」
「……例外もあるってことだよ」
依姫の場合は女神アルテミスを通じて知り合った神様も多く、スルトのことも最新の神様として聞いていたため纏うことが出来ていた。
尤も聞いただけであり、正式な契約をしていないため力を発揮できるのはごく一部だけだ。
「……はい。じゃあ二つ目です。なんで妖夢さんの半霊をしているんですか?」
「当然といえば当然の疑問だね。……桃太郎の童話は知っているんだよね?」
「はい」
「じゃあそのエンディング後から話そうか。あの童話自体なんら間違ったことは書いてないからね」
「幻想郷にも鬼はいますからねー」
「そうだね」
桃太郎は近くに置いてあった酒瓶を手に持ち、一気に呷る。嫌なことを話す時も酒が混じれば多少は気持ちが軽くなるものだ。
「鬼ヶ島の鬼を退治して宝物を持ち帰った桃太郎は村や里、町に宝物を戻し、犬、猿、雉は山へ帰り、桃太郎はお爺さんとお婆さんと一緒に暮らしていました」
鬼は倒され、村や里にも平和が訪れる。
桃太郎が退治したという噂はすぐに広まり、幕府の耳にも届いた。
「平和な一時の最中、桃太郎宛てに鎌倉幕府の重鎮である西行寺が屋敷へ来るようにお達しが来ました。内容は勿論鬼を退治した褒美と話を聞かせて貰いたいということです。桃太郎も断る理由は無く、お爺さんとお婆さんを連れて西行寺家を訪れます」
当時、村程度の規模しか知らなかった桃太郎は都というものにさぞ驚いた。お爺さんとお婆さんも腰を抜かし、役人が笑っていたのは記憶に残っている。
「華やかな都。初めて訪れる屋敷。桃太郎は緊張した趣きで西行寺家を訪れました」
庶民であった桃太郎たちは精一杯良い着物を着ての来訪だったが、やはり木綿の着物と絹の着物では格差があった。
他の大名や当主であれば貧しい者を家に上げるなどしなかっただろう。
「西行寺の当主はそんな桃太郎たちを快く受け入れ、宴を開いて桃太郎の武勇伝を肴に聞き入ります。そして西行寺家の自分の娘を嫁にしないか、と縁談まで持ち掛けます」
当時の西行家の当主、幽々子の父はどちらかと言えば武人であり、桃太郎の力量を見るべく庭で一騎討ちを挑んだほどだ。
無論、桃太郎に負けはしたがそれも一興と笑い飛ばす辺り、豪胆かつ気さくな人物だったと言えよう。
「そこへ現れるは世にも美しい娘。西行寺幽々子。桃太郎も、幽々子も一目見てお互いに惹かれ合い、間もなく縁談は調いました」
その間に桃太郎は西行家で相応の衣装に着替えさせられたり、彼方此方の家や幕府に呼ばれて説明したりと大忙しな毎日を送っていた。
「その日から桃太郎たちは西行寺家に住まうことになり、桃太郎は幽々子と共に一段と幸せな日々を過ごします。都に出ても冷やかしを受け、やがては幕府に仕える武士として士官する予定でした」
その日もつつがなく終わり、明日が来るはずだった。
「ある日の晩。夜空に満月が浮かんでいる夜の事。桃太郎は風流を楽しもうと屋敷の廊下を歩き、月見を楽しみます。ーー歩いていると、ふと鼻に血の香りがしました。桃太郎は驚きますが、その臭いが強くなる方へ進みます。刀に手をかけ、鬼が出ても退治出来るように構えます」
この頃にはまだ妖怪もおり、夜の町には出没することもあった。それを退治するために陰陽師も居たが、桃太郎は当時の剣士としては最強とも言って良い強さを誇っていた。
「しかしその臭いがするのはお爺さんとお婆さんが寝ている所。桃太郎は震えながらそっと扉を開けていきます。……そこには血濡れたお爺さんとお婆さんが横たわっておりました」
今でさえ思い出せる悪魔の一夜。
「『誰か! 誰かいないか!』 桃太郎は必死に叫びますが返事はありません。まさかと思いながら屋敷を走り周り扉を開けて回ります」
どこもかしこも血と死の匂いが漂う。
「ーー皆、死んでいました」
自分以外誰一人として生きていない館。桃太郎の心は荒み、へし折れそうになっていた。
それでも幽々子だけ遺体が見つからず、もしかしたらと思って館を駆ける。
「桃太郎は涙しながらも幽々子を探します。しかし彼女はすぐに見つかりました。中庭の淵に座っており、夜だというのにフラリ、フラリと中庭の中央へ赴く幽々子の姿を見た桃太郎はそっと後を追いかけていきます」
彼女を襲う輩が居れば一刀で斬り伏せるつもりで刀に手をかけて幽々子を追う。
だが何処からも妖魔の気配は無く、嫌な予感が全身を駆け巡る。
「庭にある一本の桜の木。西行桜と呼ばれる西行寺家の名物の木の根元で止まり、幽々子は美しく微笑みながら桜を見上げます」
「『ああ――』」
「『今日も素敵な月です。桃太郎もそう思いますよね』と」
寝ていた幽々子が口だけ開いてクスリと小さく笑う。
桃太郎は呆れつつも半眼を幽々子へと向けた。
「……幽々子、聞き耳かい?」
「くー、おやすみなさい」
「やれやれ……」
チラリとメンタを一瞥してから、桃太郎は再び酒を勢いよく飲んで滑舌良く話し出した。
「その手には血濡れた短刀が握られており――桃太郎はその時に全てを理解してしまった。彼女が皆を殺したのだと」
桃太郎の目にした幽々子には幾重もの死の影が渦巻いていた。まるで呪いのように、人を蝕む病魔のように幽々子の周囲を取り囲んでいたのだ。
「何も不満は無かった。何も不自由なことは無かった。幽々子は誠に私を愛してくれていた」
幸せだった日々は唐突に終わりを告げた。
「『死を求める能力』……幽々子に発現してしまっていた能力だ。その性で幽々子は屋敷の皆を殺し、終いにはその短刀を持って私を殺そうとした」
不気味な笑みを浮かべながら短刀を手に駆け寄ってくる幽々子。
「桃太郎は狼狽え、その胸で短刀を受け止めます。そして――その手に刀を取り、幽々子を刺し殺しました」
そこで桃太郎の生涯は終わりを告げる。
「そして数百年の時を経て、桃太郎は妖夢の半霊として復活して現在に至るというわけだ」
「重ッ!! 重いですよ!」
「それが事実だからしょうがない。はふぁ……ごめん、話したら眠くなってきたみたいだ。愚痴は明日妖夢が聞くから――」
大きな欠伸をすると妖夢の身体は仰向けに倒れ、寝息が聞こえて来る。メンタとしてはもっと聞きたい気持ちがあったが、当人が寝てしまっては聞くに聞けない。
「ええええ……こんなモヤモヤを残して寝ちゃいますか……」
「フフフ」
その様子が可笑しかったのか幽々子は思わず微笑してしまった。メンタもそれに気付いて隣に顔を向けた。
「そういえば幽々子さんも、さっきからずっと聞いてましたよね」
「ごめんなさいね。自分の事だからつい……」
「まぁ、聞きたいことは聞けましたのでオッケーです。オレもそろそろ眠いですし人払いの結界を外したら寝ましょうか」
貼った術符を取り除こうと立ち上がり、幽々子は意外そうに薄目を開けた。
「あら、色々聞かないの? 例えば何故私が霊体で存在しているの、とか」
「いえ、遠慮しておきます」
それを語り出したら幽々子は西行妖を掘り起こしに行くでしょうし、とメンタは危惧して言わなかった。
幽々子にしてみれば興味の対象外なのだろう程度にしか思わなかった。
「ふーん、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさいです」
酒も多分に入っていることもあって二人とも眠りに落ちるのは早かった。
外では未だ宴が続いている。
――幽々子――
私は罪深く、業も深い女。
かつて愛した人をこの手で殺し、身内一族すら亡き者にした魔女。
夢に出てくる記憶は何時だって残酷。
『誰か! 誰かいないか!』
桃太郎。私の一番最初の恋人で一番殺したくなかった人。
でもこの能力には逆らえない。
『ああ、今夜も素敵な月です。桃太郎もそう思いますよね?』
血に濡れた過去。変わらない結末。
人は生きているから死ぬ。鬼を相手に無双した桃太郎だって、龍の血を引いていようと人の子。
でも現在の桃太郎は知らない。
私とはもう永遠に交わることのない記憶。
あの日、満開になっていた西行妖の下で私は桃太郎を殺そうとした。
いや、胸に突き刺さった短刀は変わらない。殺してしまったという後悔もある。
でも――。
「グルル…………」
彼だけは絶対に殺してはいけなかった。
「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
死を求める能力。それが私に発現してしまった能力。
正確には『私の』死を求める能力。
お父様もお母様も、御婆様たちも皆で私を殺そうとした。私は生きるために止む無く短刀を手に取った。
その刃は桃太郎を貫き、彼を暴虐の龍へと変化させた。
後で知ったことだけれど龍の血を引く者、先祖返りした者は『致命傷や深い傷を負うと自己生存のために暴走する』という最大の爆弾を抱えている。
桃太郎もそれに漏れず暴走し、その手に生えた鉤爪で最初に私を殺し、八裂きにして食らった。
私の何もかもを食らいつくした桃太郎は都へと飛び立ち、都を壊滅させた。
それを私は西行妖の木の枝から見ていた。
私の肉体の残りは全て西行妖という樹木の妖怪に吸われ、私を妖怪として顕現させた。
私のやることは最初から決まっていた。あの龍を止めなければいけない。私がやらかしたのだから私が決着をつけなくてはいけない。
そうして何度も何度も龍に挑んでは殺される毎日が続いた。しかし龍化は命を削る能力。桃太郎もダメージを蓄積し、やがては動きも鈍り始める。
海を渡り、あらゆる国を滅ぼして、その果てに辿り着いたのが――西行妖の前とはどんな皮肉だろう。
「桃太郎……」
「グアアアアア!!!」
これは私の罰。永遠に受け続ける責め苦。
「死を与えましょう。貴方が何時の日か消え去れるその日まで――」
私が桃太郎に与えられるのは死。その肉体を私の中で永遠に封じ込めることだけ。
西行妖の最も根本となる根を私の生前の姿に真似て、その中に桃太郎を全て封じる。残ったのは霊体だけ。
「幽々子様、後は我らがお守りします」
「ええ、お願いするわ」
周囲にいるのは龍によって滅ぼされ、僅かに生き残った人間たち。その中で最も霊力の強い人間の一族をかき集め、龍を封じるためだけに私に協力してくれる者たち。
彼らは魂魄一族。この先ずっと西行妖を守り続ける守り手。
「彼の霊は貴方たちに預けます」
「ハッ」
桃太郎の霊。今は疲れ果てて動くこともない小さな白い光の塊。
彼らの手に渡るのを見て、私は――私たちは幻想郷へと向かう。
冥界。私たちに相応しい地獄の場所。
紫たちに無理言ってこの場所にして貰ったのも西行妖の秘密を秘匿するため。
何千年、何万年だって良い。私が彼を封じ続けることこそが私の贖罪。
「あ、あの! 初めまして!」
そう思っていた時期が私にもありました。正確には1400年くらい。
「魂魄妖夢と申します! お爺ちゃん共々お世話になります!」
「魂魄妖忌です。よろしく」
「え、ええ……よろしく」
彼ら、魂魄一族も幻想郷に来て、妖夢に桃太郎がくっついていると知ったときは卒倒しかけた。
私はしばらくの間、妖夢をずっと監視した。
でも剣の冴えも、不器用な優しさも、行動の節々を見る度に桃太郎を思い出してしまう。そして解る。
――ああ、生まれ変わりなのね。
っと。妖夢を見ているとそんな予感がした。だから半霊になった桃太郎が取り付いているのだと思う。
そして妖夢の体を乗っ取って偶に桃太郎が顔を覗かせることがある。
「貴方は、幽々子ですね。お爺さんとお婆さんの仇、御覚悟」
刀を向けられて、名前を呼んで貰えて凄く嬉しかった。でも桃太郎が知っているのは『あの日』まで。そこから先は私しか知らない物語。
良い。あれは私だけが知っていれば良い史実。
「出来るものなら」
私は両手を構え、桃太郎と戯れる。
そして、少しして彼ともで出会った。
きっかけは月との大規模な戦いの際に破損した博麗大結界を修復するため、その間、この幻想郷を守護する契約を持ちかけたみたい。
彼は髪も目も衣すら黒く、纏う空気は人の負の感情そのもの。正しく邪神と呼ぶに相応しい人だった。
「ふむ、其方が幽々子か」
邪神スルト。彼は桃太郎の始祖にして子孫。
何でも大事な人を失ったので取り戻すために三千年前にタイムリープしたことがあるらしい。
妖夢が男性であればそっちに恋をしていたと思う。でもあの子は女の子だった。
「ええ、始めまして」
実際、新しい恋をするのにそう時間は掛からなかった。でも既に既婚者な上、浮気はしても不倫はしないらしいので先は長くなりそう。
でもそれでも良い。私はどうせ死ぬことのない霊体で向こうは不老不死の神。報われるのは何時か、の時間で良い。
生き急ぐこともないのだから。
~過去・メンタ~
それは冥界で起こった悲惨な事件でした。
「はぁ……はぁ……」
「これで……」
ふざけも慈悲も無いただただ暗いだけの話です。
ここは冥界。白玉楼からそう遠くない場所にある大きな樹木がある根元。かつては西行妖と呼ばれた――樹の末路です。
妖夢さんが地面に、地面の中にある幽々子さんの生身に突き刺した剣を抜き、左右に振って血を払います。
――事の始まりは幽々子さんが秋を欲したことから始まります。
幽々子さんが西行妖に紅葉を実らせようとして、妖夢さんもそれに付き添い、博麗の巫女である霊夢さんにまた阻止されるはずでした。
しかし妖夢さんは半霊である桃太郎の活躍により霊夢さんを致死に追い込み、西行妖に収束されつつあった秋――妖力――を取り込み、暴走する災厄の龍となりました。肉体に憑依されてしまったため霊体だった幽々子さんは消えてしまいます。
これに対して妖夢さんは霊夢さんを博麗神社に返し、オレたちの助力を経て龍に立ち向かうことになります。
――ですが、龍の力は強大でオレたちでは太刀打ちすることすら出来ません。龍は里という里を襲って回り、人だけでなく妖怪の大多数が死滅していきます。
博麗神社まで撤退したオレたちは龍をどうにかして倒す方法を模索し、一つだけ思いつきました。本来なら取りたくないのですが、今のオレたちに選択する余地はありません。
オレと妖夢さんは急いで西行妖に向かい、龍の唯一の弱点である本体を狙いました。
ですがいくら斬ろうが突こうが傷は癒えてしまいます。そう、幽々子さんが西行妖に願った秋がまだ続いているのです。ならばもう斬るしかないと……全力の斬撃で西行妖を斬り倒し――そして現在。
「幽々子様……ああ……」
妖夢さんの剣は魂魄を分かつ剣。魂魄家が『万が一、幽々子様が暴走した際に打ち取るために』作成した物なので――それを心臓に食らった幽々子様はもう……。
妖夢さんが消えかけている幽々子さんの遺体に縋りつき、泣き出してしまいます。
交信符が鳴り、魔理沙さんから連絡が来ました。
「此方、魔理沙。龍が行動を停止し、徐々に消え始めているぜ」
「……そう、ですか」
「ああ……妖夢は?」
オレは首を横に振るいながら答えます。
「今は……」
「――いや、悪い。後で良いや。メンタ、妖夢はそのままにして救命活動の方を手伝ってくれ」
「はい」
通信を切り、妖夢さんを一瞥してから幻想郷へと戻ります。
――オレの力が全く足りなかったばかりに……。
と、その時のオレは考えていました。
これが手初めだということを知らないで――。
妖夢(桃太郎)「ヘッヘッヘ、この嬢ちゃんは貧相な身体付きだぜ。仕方ねぇ、この俺が揉んでボンッキュッボンッな体型にしてやるかぁ!」
メンタ「はい、録音オッケーです」
――次の日――
メンタ「妖夢さん、昨日は凄かったですね。はい、ボイレコ」
妖夢(本人)「私、何言ってるんですか!?」




